守られて育つ子のように
その日、目が覚めるとうつ伏せで寝ていた。
日は既に昇っていて寝すぎたなと思いつつ欠伸をする。
ベルはその後、魔法の練習を意識が途切れかけるまで続ける日々を送っており、その日もかなり疲れていたようだ。筋肉が痛くて痛くて仕方ない。
寝台から降りて遅めの朝ご飯の用意をして
今日はゆっくり座ってできるような、空間魔法の練習でもしようと思った。
アイテムボックスは自然にできるようになったので
やはり物の転移や空間の転移の練習をしたい。
そう思って一昨日のショートホーンラビットの角を使って物の転移から始めることにした。
机の端に角をおき、反対側の机の上に転移させるようなイメージで。
すると角はびゅんと転移するが、机の上ではなく机の下に行ってしまった。
難しい。
正確に転移させるのがすごく難しい。
何度も何度も練習するがとても惜しいところで失敗してしまう。
小さいものなら行けるかなと思い、爪で試してみると、爪はすぐにすることが出来た。
この角のサイズはまだ難しいようだ。
逆にもっと大きいもので練習して慣れようと思い、昨日の鹿の角を使って試してみる。
するとさっきのように鹿の角は机の下に落ちたり少しだけ動いたりしていた。
それを繰り返しやっている内に大分慣れてきたようで
あのうさぎの角のように惜しくなってきたところでうさぎの角に変えてしてみると完璧にすることが出来た。もう一度鹿の角で試してみるとそれもすることが出来た。
そのため今度は距離を離して練習することにして外の切り開いた広い庭に出て練習をする。
そうして完璧に出来ると思った時練習を切りあげてお昼ご飯を食べに部屋に戻った。
ご飯を食べてからは元気が有り余ってきたようで、もう一度あの宝箱の所へ行こうと思い、転移で進むと半分と少しは進んでいるようだったが、たどり着けず、もう一度転移を行った。
自分の転移はまだ難しいようである。
そうして宝箱のあった草原の端へたどり着くと今度はやはり宝箱は出なかった。
そして先日のように壁を伝って歩みをすすめる。
ローブを羽織っているので影に隠れる必要もなくどんどん先へ進んでいく。
すると先日見たものと同じような川が見えてきた。
そこは下流のように水量も多く、岩ではなく砂や小石の多い場所のようだ。
ベルはその川に向かって歩いていると
馬のような長い嘶きが響いた。その方角をみてみると、白いたてがみと青白い体躯をした馬と同様に白い髪をした女が川のほとりにたっているのが見えた。
(鑑定)
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ケルピー
水生の馬
川に魔物を引き摺り込んで捕食する肉食の精霊
番で生活する。
人の姿をすることもある。
体力 603
魔力 98
ーー 462
弱点 木属性 日属性 刀
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女の方もケルピーだ。
人の姿をしていても魔物。
でも人の姿をしているといささか斬るのは抵抗感がある。
そのためローブこそ着ているが、足音は鳴ってしまうし、人間の匂いもあるだろう。そのため近づかないように気をつけながら歩いていると
また嘶いてこちらをじろりと見つめてくる。そしてしゃなりしゃなりと歩いてこちらへ向かってくる。
ベルは気づかれているのかと慌てて後ずさりするとパキりと枝の折れた音がなってしまい、こちらへ向かって馬が走り出す。
やってしまったと思いつつ、ベルは朧月を抜き、馬が近づいてきたところで切りかかる。
しかし刃があまり通らず途中で止まってしまった。
彼は刃を肉から抜いて離れ、催眠効果で寝るのを待とうとする。しかし、馬はスピードこそ遅くなったもののこちらへ走ってくる。そこで木属性の魔力を込めてもう一度弧をえがいて切りかかる。
尚、硬い肉であったがベルはやっとのことで首を落とした。
そしてふともう一人、否もう1頭いることを思い出し、そちらに目をやると、そこに白髪の少女はおらずいつの間にか近くに立っていた。
「ありがとうございます。お陰で助かりました。」
そう言って気配は感じ取られているが、そこまで見えていないようで、手探りでベルに触ろうとしてくる。
ベルはまずいと思ったが既に触れられ、その手はベルから離れなかった。
「離してください…っ」
その女はにやりと笑い、言葉を聞かず川の方へ歩こうとする。
「あの、僕、川苦手なんですけど」
そんな事はない。
人の姿をしたものに切りかかれないだけである。
しかしその女はどんどん進んでいく。
道に生えた草をかき分けかき分け川へ川へと
目の前でおそらく番を殺されておいて、このまま生きて帰れるとも思わない。
それなのににこにこと笑顔を浮かべているから逆に恐怖をよりかきたたせる。
そして川に至ろうとした時本気で食べられる恐怖に苛まれ、そして人型の女の首に木魔法をぶつけた。
するとその女は驚いて手を離す。
そしてベルは目をつぶって思い切りその女を斬った。
目を開けるとそこにはケルピーの皮が落ちていた。
先程倒したケルピーとこのケルピーのアイテムを拾いながら
人型をしていると斬るのに躊躇するが、本当に魔物で、倒さないと生きていけないことをベルは思った。
(精神的に堪える)
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ケルピーの皮ⅹ2
水を通さない皮
水中のダンジョン用の服に重宝される。
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ふうと一息ついて、ベルは再び歩みを進めた。
すると川が海へ至ろうとした所で見えない壁にぶつかった。
そして地鳴りが響き、宝箱が現れる。
(鑑定)
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辺境の宝箱3/4
罠・仕掛け :ホーンラビット(×1)が飛び出してくる
解放条件:人型のケルピーを倒し、川の端へ辿り着く
1度しか現れない
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解放条件に魔物を倒すことが今までと変わって着いていた。
人型ケルピーはもしかしたらあまりいないのかもしれない。
スモールホーンラビットは確か火属性魔法が苦手だったはずだから、ホーンラビットも苦手だろうと思い、すベルは宝箱の正面にファイヤーウォールを出して後ろからそっと開ける。
案の定、兎は正面に向かって飛び出し、丸焼けになって魔石を落として消えた。
宝箱の中には、長靴のようなものが入っていた。
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月虹のブーツ
状態異常:やけどを引き起こす
魔力を込めることで空中を歩くことができる。また、同様に魔力を込めて地面を歩く時音を消し、許可された時や相手以外声も聞くことが出来ない
月属性・日属性のみ使用可能
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つまり、音も姿もこれで魔力さえあれば消すことができるようになったということだ。
素晴らしい。
彼は早速靴を履き替えてみる。元あった靴はアイテムボックスへ直しておいた。
すると宝箱は虹色に淡く光って消えた。
彼は空を歩いてみたいと思い、足を前へ運ぶとふわりとしたものの上にたっているような感覚になる。
すごいすごいと思い、彼は上へのぼっていくと、最後の壁を伝った先に大きめの屋根の尖った建物があることに気づき、彼は不思議に思ってそちらの方へ向かった。
途中で魔物に会うことも無く進んでいるとその建物の前にたどり着いた。白く高いその建物はまるで教会のような出で立ちだった。
しかし蔦が巻き付き、生えていて人の管理はされていないように思われた。あたりまえである。ダンジョンの中なのだからと思い、
「すみませーん」と声をかけるが誰も居ないのか返答はなくそっと扉を開くとそこにはショートホーンラビットとは比べ物にならないほど大きいうさぎが居た。
1本ではなく3本の角が生え、鋭い爪と牙を持つそのうさぎは扉を開いた存在に首を傾げる。
(鑑定)
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ラージホーンラビット
肉食 美味
自慢の角で獲物を串刺しにして捕食する。
単独行動ができるほどには強い。
体力 1013
魔力 356
ーー 236
弱点 火属性魔法
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彼は見つからないだろうと思いつつ警戒して空中へ浮き、転移魔法で後ろ側へ回り込む。
そして炎を刀に宿らせて首後ろから思い切り斬る。
しかし太いうさぎの首はなかなか切れなかった。
兎はその首の痛みに絶叫し、首に刀が刺さったまま暴れ始める。ベルは刀を抜こうとするが、力負けしているのか肉から刀が抜けない。
兎は刀のある方に鋭い爪を伸ばしてくる。
そこで刀を諦めて空中に浮かび、爪を避ける。
兎は体が大きいからかなかなか催眠効果が効いていないようだ。
何とかして刀をとは思ったが、ファイヤーアローを射てみる。
高出力魔法を使うと魔力消費が大きいが、弱い魔法は効かなそうだ。(ただでさえブーツに魔力を込めているのに)
そうして体力を少しずつ削っていくと兎は疲れたのか睡眠状態へ移行した。
やっと眠ったと思い、ベルは硬直した筋肉から刀を思い切り引き抜いて体の前側から刀を振りかざし、首を落とした。
するとその兎からは素材ではなく宝箱が落ちてきた。
中には先程の兎のような赤いガーネットが入っていた。
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宝箱
金やトパーズのあしらわれた宝石箱
高値で取引される。
ガーネット
柘榴のような深紅で大粒。
忠実や絆の意があり、親しい人や目上の人に渡す習慣がある。
貴族の間で高値で取引される。
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この宝箱はガーネットをとっても消えなかったことから、宝箱自体がドロップアイテムなのだと思い、ガーネットを宝箱に入れてアイテムボックスへしまう。奥の方へ行くとやはり教会のようで、天使や神の絵や石膏の像が置いてあった。
像は8体あり、
それぞれ
創造の神(全属性)?
生死の神(日・土属性) イディリシス様
戦いの神(火属性)?
癒しの神(水属性)?
農業の神(木属性)?
商業の神(風属性)?
工業の神(土属性)?
芸術の神(無属性)?
のようである。
生死の神様には手紙や本、転生でサポートしてくれていたようなのでお祈りしておく。
祈りの作法が分からないのでとりあえず手をあわせておく。
(神様、これからも元気に暮らせますように)
きっと神様に祈るのは皆こんなことだろう。切迫していたら違うかもしれないが、記憶を無くす前はこんなだったような気がしている。覚えてないけど。
すると目の前が真っ白になり、ふわふわひらひらと白い衣を身につけた黒髪の美麗な男性が立っていた。
絵画のような造形美に当てられて目が痛くなる。
「こんにちは、神様…ですか?」
「ええ。そうです。記憶を無くす前には会ったことがあるので本当は初めましてではないんですけど、はじめまして。ベルーナさん。」
この人が、イディリシス様。
イディリシス様は切れ長の金色の瞳をより一層細くし血色の良い唇を月のように丸め微笑んだ。
美…。倒れそう。
「暮らしはどうですか?」
「ダンジョンの中だと知って驚いてます。」
「あぁ、人が居ないので丁度いいと思いまして。」
ダンジョンなので人は多いと思っていたが、ここは人が来ないのか。
「あぁ、まだこのダンジョンが見つかっていないのですよ。人の間では。迷い込んだ人は殆ど死んでしまいますから。見つけても戻れた人がいないだけなのですけどね?」
そう言って笑うイディリシス様は少し悪い顔に見えた。
なんて物騒な。
「ふふ、大丈夫ですよ。ベルーナ。貴方には私の加護があるので。滅多に死にませんから。」
ああ、加護、状態異常無効はかなり重宝している。ありがたい。
「どういたしまして」
やっぱり心読めるんですね。知ってました。
「ふふ」
イディリシス様はにこにこと美の圧力をかけてくる。
「あの、ステータスの討伐ボーナスの事なのですが。」
「あぁ、あれは、夢であったと思うのですが、鑑定のレベルを上げる必要があります。今はレベルが上がって2になっているようですね。もっと鑑定していけばレベルが上がるはずです。」
「なるほど。ありがとうございます。」
「いえいえ。貴方の前世に関与しているので、ついつい使おうと思っていなくても使ってしまうようですね。」
えぇ、いつだろう。
「最初のうさぎさんは殆どそれで倒してましたからあねぇ、まぁ、レベルが上がってからのお楽しみです。」
そう言って人差し指を唇にのせる。
仕草まで美しすぎて脳が焼けそうである。
「あぁ、すみません。呼ばれてしまいました。また今度。頑張ってくださいね。」
そう言ってイディリシス様はふわりと消え、先程の像の前でベルは座っていた。
よし、頑張るぞとベルは立ち上がり、更に奥へ進んでいくとあると思っていなかった壁にぶつかり、つい声が出てしまう。
見られていたら神様に笑われていたことだろう。
すると床からまた地鳴りがして
宝箱が現れた。
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辺境の宝箱4/4
罠・仕掛け:状態異常(魅了)
解放条件:教会の奥へたどり着く。
1度しか現れない
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彼は宝箱に近づき、蓋を開ける。
すると中には2つのネックレスが入っていた。
銀色のネックレスには夜の空のような藍色の宝石と昼の空のような水色の宝石がそれぞれ埋め込まれていた。
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月陽のネックレス
銀のチェーンにタンザナイトが埋め込まれているもの
銀のチェーンにアパタイトが埋め込まれているもの
が対になったもの。
共闘時に互いのステータスを向上させる。
魔力を込める事で声に出さずに会話が可能。
使用者に状態異常(混乱)を与える。
使用制限
所有者による許可が必要。
相手による許可が必要。
月または日属性の適性をもつこと。
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やっと4つ集まったようだ。
今まで4つの宝箱から出たものは
日属性か月属性の人にしが使えないものだった。
月と太陽は互いに出会うことは無いが太陽のない時には月があり、月のない時には太陽があるように月と日は対の属性なのだろう。
月や日属性は珍しいと本に書いてあったので、そんな相手を見つけることは無理だろうと思いながらアイテムボックスへしまう。
そうして宝箱も集まった事だしと、外へ出て協会を見上げる。すると上の方に鐘が見えたので登ってみようと思い、空中に浮かんで鐘のある上の方へ飛んでみた。1歩ずつ歩んでいくと鐘にたどり着きそうな時に頭にがんっと何かにぶつかった。
瞬間、ごごごと何故か音が辺りに鳴り響き、先程まで日が出ていたのが暗転し、月夜に変わって鐘の下に宝箱が置いてあることがわかった。ベルは辺りを気にしながら宝箱を鑑定する。
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月下の宝箱
罠・仕掛け 魔物寄せの鐘が鳴る。
解放条件:全ての辺境の宝箱を開ける。寄せられた魔物を全て討伐する。
1度しか現れない
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恐る恐る持っている適性全ての壁を周囲に用意する。
するとゴーンゴーンと鐘が鳴った。ベルは鐘の音が響かないように鐘を触ろうとするがぱちんっと雷のような電撃がおき、触れることが出来なかった。辺りを見渡すと協会に様々な魔物が集まってきている。
その鐘は10回程鳴って止まったが、魔物はかなりの数集まっていた。宝箱は魔物を倒すことで開けられる。
ベルはステータスを確認し、魔力と体力が回復していることを確認して
寂れた協会に群がる魔物たちを迎撃する。
「空間魔法で生きたまま閉じ込めるのをやってみようか。」
いちいち鑑定する暇は無さそうなのだが
ベルは空中へ浮かび、戦いの中新しい魔法の練習を始める。
「捕縛」
すると3体程の魔物がぎゅっと捕まえられる。
「燃焼」
その魔物達は一気に燃えて燃えて消える。
(できた)
しかしまだまだ数が多い。なんなら全部捕まえようと思っていたものの捕まえることが出来なかったのだ。さすがにまだ早いか。
ベルは続けて魔物たちを捕縛しては燃やし、
燃やしては捕縛した。
そして段々と大きい魔物を捕まえたり、一気に20匹捕まえられるようになる。
しかし、ブーツにかかる魔力の消費が大きく、魔力切れ寸前になり、魔法が使えなくなってしまう。
(見誤った)
ベルは急いで地上に降り、先日手に入れた愛刀を出す。
まだまだ数が多そうだ。
どうにかして戦う数をへらさなければ。
ベルは協会の中へ入り混むことで一度に襲ってくる魔物を絞らせる。
扉に向かって走ってくる魔物たちにベルは反撃し、心臓あたりを貫いていく。
貫けなかった魔物たちはみな、昏睡状態へ移行する。
辺りがドロップアイテムでいっぱいになった時、ベルは最後の1匹と対峙する。
その最後の1匹は一際大きい狼であった。その狼は黒いたてがみをうねらせてこちらへ駆け出した。その瞬間ベルは反撃しようとしたが叶わずあまりの速さに守りに転じる。爪と牙の攻撃を受け流すように守っているが、全く狼は眠ろうとしていない。ベルの長い髪をまとめていた髪留めが狼の攻撃で外れてしまい、髪がベル自身の視界を遮る。
(鑑定)
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狼王 リュカオン
体力1000
魔力1230
ーー ーー
特殊効果
状態異常無効
弱点
火
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(状態異常無効…か。弱点が火だけなのも強い。)
魔力が時間で回復するまでは防御しつつダメージを与える必要がありそうである。
しかし速い速すぎる。
ついていけないほどのスピードに疲れが滲み始める。
ベルの髪の黒色が狼の毛色と混ざり、同化し、切る対象を間違えそうになる。
髪留めは既に暴れたリュカオンの足に壊され、使い物にならなくなっている。
爪は金属のように硬く、刀とぶつかり、キンッという音を立てて今にも刃こぼれしてしまいそうだ。
相手の攻撃と同時に今度は受けるのではなく後ろへ攻撃を避ける。
しかし、上手く避けられず、爪が微かにお腹に当たり、鋭い爪で皮膚が引き裂かれる。
「うっっ」
何とか後ろへ後退し、次に攻撃をされる時にリュカオンの後ろへまわりこむ。
そしてそこから脚へ攻撃を行おうとする。
しかしその反応速度はベルを上回っており、後脚を切り付けることは出来たが、切断には至らない。
同じような攻撃で少しづつ脚へダメージを与える。
脚がなければスピードも段違いに落ちるはずだからである。
リュカオンの体力
824/1000
ベルの魔力
59/1076
無属性の高等魔法は他のものより極端に魔力消費が大きい。
適性持ちでも50でギリギリ足りるかどうかと言ったところだろう。
しかしそれでは捕縛はできても火魔法をぶつけることが出来なくなる。
(火魔法で応戦するしかない。)
ただ下級魔法が5つ程度しか魔力が貯まっていない。
(火魔法で囲って燃やし続けるか…?
それなら魔力は20で済む。)
そう思い、
火で動けないところを刀で脚を切り落とす。
狼は火からのダメージを避けようと暴れるが、それに夢中でこちらへ攻撃が当たらない。
これならいけるはずだ。彼は高等魔法で刀に炎を付与し、速度をつけて一気に心臓を貫いた。心臓は炎に侵され、リュカオンはふっと消えた。
勝てた…。
最初の方は空中に居たからこんなに余裕で戦えたけど、ブーツがなかったら無理だったな。と思いつつ、
リュカオンの強さに自分の未熟さを思い知る。
魔法ばかりに頼っていてはいけない。
ベルはドロップアイテムを拾い集め、アイテムボックスに収納した。
月下の宝箱に入っていたのは
深い青色の液体の入った瓶だった。
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月神の薬
不老不死は迷信。
寿命は伸びる。
1滴で致命傷や全ての病を取り除いて回復させる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
月神の薬、イディリシス様の、ということだろう。凄そうなのが出た。
いや、凄いのだろうと思っていたので想像通りの凄いものだった。(語彙力の低下の効果があるのかもしれない。)
ベルはそれをアイテムボックスに仕舞い、神様に感謝する。この5つを見つけさせるために、ここにわざと住まわせたのだとベルはそう理解した。
自分はイディリシス様に守られているのだと、そんな気がした。
そうするとまた月夜が転じてすっかり夕空が広がっていた。
不思議な現象であった。
ベルは教会でドロップアイテムを鑑定しつつひと休みして魔力を回復させてから転移魔法で家へ帰る。
今回は1度で成功した。
素晴らしい。
そう思ってすぐリュカオンに傷つけられた腹部を洗い流そうとお風呂に入り、ゴロゴロと夕食をとったあとでぐっすり眠った。
月下の宝箱解放時 ドロップアイテム
リュカオンの魔石(中)×1
ベビーウルフの皮×110
ベビーウルフの牙×48
ベビーウルフの爪×32
ベビーウルフの魔石(小)×5
ヘルハウンドの牙×59
ヘルハウンドの爪×53
ヘルハウンドの魔石(小)×1
スモールホーンラビットの皮×54
スモールホーンラビットの爪×41
スモールホーンラビットの魔石(小)×3
ルビー(小)×1
計408
その頃。
「まずいな、1階も地上への帰還装置がなかったというのに、2階にも無さそうだ。ボスを倒したのに出てこない。むしろ出てきたのは3階への転移陣。2階までは何とかできたが。3階は今の自分では無理なのでは…。」
ベルーナ・クラーク(男)
19歳
(レベル) 41
(体力) 742(内累計討伐ボーナス 242)
(魔力) 1136(内累計討伐ボーナス 636)
(所持金)
金貨10枚
(スキル)
多言語理解
鑑定眼
修復
イディリシスの加護(状態異常無効・老化停止)
(適性)
月属性 火属性 木属性 無属性
刀 弓
(オート所有者設定済みアイテム 変更不可)
妖刀・朧月
月朔のローブ
月虹のブーツ
月陽のネックレス
月神の薬
序盤から強くなっちゃいましたね。
空を飛ぶのは浪漫があります。
怖いので実際にはやりたくないですが。




