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揺り篭  作者: 紅茶
13/18

シャル

「そうだ、マスター、話したいことがあって。」

今日は時間もあるし、いいぞ。と、マスターがお茶を用意してくれることになり、ベルとシャルはソファーに座って大人しく待つ。


ベルにはシャルもギルドマスターも行き交う道の人も皆人間に見えた。どうして、ギルドマスターはよく間違えらる性別ではなく人間という文字に反応したのだろうか。


(シャル、なんでギルドマスターは、人間に反応したんですか…?)

(…気のせいじゃないか?)

(いや、気のせいじゃない)

シャルは明らかに誤魔化そうとしているように目を泳がせる。

(…いやぁ、その…、この町、人間ちょっと少ないから、びっくりしたのかなー?)

(え!?どういうこと?ここにいる人たち、人間…じゃないの?僕には人間に見えたんだけど)

(えーと…エルフが多い…かな?)

(エルフ?って、何?)

(あれ、知らないのか??)

(こめん、覚えてないみたい。)

(エルフっていうのは人間と同じような見た目だが精霊に近い存在だ。純血のエルフは基本的に茶髪翠眼で耳先が尖っている。精霊に近ければ近いほど金髪翠眼になる。もちろん最近は混血化で黒髪、赤髪だったり、黒眼、碧眼とかも増えてるな。でもここら辺はかなり人間の住む街から離れてるから、もしかしたらここで冒険者登録する人は初めてだったのかもな?)

シャルは早口でそう言った。


街の人たちは耳がとがっていただろうか?いや、尖っていた覚えは無い。あの人たちがエルフでないなら、全員混血ということか?ありえない。そんなことは考えられないじゃないか。むしろ人間の住む街に近くないと混血なんて生まれない。嘘をついている。僕に。


(…。じゃあ、シャルもエルフなの?)

(…、俺も混血のエルフだぞ。髪も黒だし、耳も、ほら。尖ってないだろ?)

そう言ってシャルは髪をかきあげて笑ったが、いつもは髪にかかって見えないその耳はベルには尖って見えた。シャルの言っている自身の特徴に反して、ベルには髪も金色、眼は碧色に見える。それに…よく見ると緑がかった色、青緑。浅葱色のような…。翠眼…。

(…)


ベルは戸惑いを隠せていなかった。

無言になって戸惑っているベルをみて、シャルはまさか…と目を見開き、左腕に嵌めてある腕輪をみて、訝しげな表情になる。


「マスター、俺、髪、何色にみえます?」

「ん?()()()()黒色に見えるぞ。」

「…。ベル、俺の目の色は何色?」

「…え」

「まさか。シャル、こいつ見えてるのか?」


「いいから、マスター。ベル、何色に見える?」

「あ、浅葱色…」

「へぇ…」

「ほう…俺には金色に見えるんだがな。」

「…」

「ベル、髪の色は?」

「…金髪」

「耳は?」

「と、とがってます。」

僕は今、見た目を隠していることを、知ってしまっている状態なのでは…。これは…まずい気がする。


「大丈夫。大丈夫…。」

ベル、というよりは、その言葉はシャル自身に言っているように聞こえる。

「え、」

「ベルは俺の味方でしょ?」

シャルはにこりと笑い、ベルが渡した紺色のネックレスをわざとっぽく見せるが、その翡翠の瞳は全く笑っていない。

「…まぁ、そうだね?僕はシャルに嫌われたくないよ」

せっかく初めてできた友人なのに。



「それなら別にいいんだ。他言無用だよ。」

「わざわざ隠していることを誰かに話す趣味はない。」

「そう、良かった。」

そう言ってシャルは微笑む。だけどシャルはその言葉を信じられていないようだ。翡翠の瞳は一層暗く濃くなり、感情を抑えようと必死なのが伝わってくる。


「俺は見た目を隠しているわけだ。ああ、純血は少なくなったな。純血と結ばれる事は人間や混血、他種族にとって凄く嬉しいことらしい。何せ、精霊に愛されているからね。それに僕はエルフの中でもかなり愛されている。尚且つ珍しい日属性も無属性も使えて。そんな俺を他人はどう思うと思う?」

精霊が何か…よく分からないが…、シャルは戦闘に長けていて、優秀で、麗しい見目である。そのような人…じゃなくて、エルフを躍起になって戦争兵器や愛人として上の人間が欲しがるということは理解できた。

シャルは暴走寸前だった。自分が隠してきたことをあっさりと見破られて焦っていた。ベルのことを信じたいのに信じられない自分に苛立ちを感じていた。

「…。欲しがられる。」

「正解。やっぱりベルは賢いね。金を得るために周りの奴らは俺をよく分からない外国の奴隷商にでも売るだろうね。それか違法の奴隷商。そりゃぁ、俺はそこら辺の貴族が買えないくらいには高値で売れるだろうね?俺は見てわかる通りエルフの中でも抜きん出て、こんなに魅力的なんだから。」

そう言って顔を近づけるシャルはまるでベルを脅しているようだった。ベルが逃げないようにか、ベル側のソファーの背もたれを掴み、悪魔のような低い声を出すシャルはまるで誰かを、他人を、憎んでいるように思えた。いつもにこにこしているシャルの美麗な顔が歪んで、恐ろしく見えた。美形は、怒ると恐ろしい。

シャルは既に自我を忘れていた。自分の秘密を知られたからには、いつもしていたように脅して…脅して。シャルは周りが見えなくなっていた。ベルがベルであることも忘れていた。焦って焦って仕方がなかった。自分が過去にされたことを思い出して苛立って、シャルは反対側の手で秘密を知った誰か(ベル)の頭を掴もうとした。


「シャル、やめなさい。ベルは関係ないでしょう。」

ギルドマスターの一喝でシャルははたと我に返る。

「…、ぁ、すみません、マスター。ベル…、ベル、ごめん。ほんとに…ごめん。話してるうちに気が動転して…それで、」

シャルは大粒の涙を流しながらそういった。


「すまないなベル。許してやってくれ。昔を思い出したんだろう。ベルは人間だが、シャルはベルを結構信用しているようなんだ。そばにいてやって欲しい。頼む。味方でいてあげてくれ。」

そう言ってギルドマスターは頭を下げる。


ああ、そういう事か。

ベルは理解した。シャルは人間をそこまで信用していないし寧ろ嫌いなのかもしれないと。

しかしシャルは今までそんなに素振りは一切見せてこなかった。人間を信用していないのに、どうしてこんなに僕を助けようとしてくれるのか分からなかった。シャルはいい人間がいるということを期待しているのかもしれない。

人間はシャルを売ろうとした、もしかしたら売られていたのかもしれない。だからそれを知っているギルドマスターは僕が人間であることに驚いたんだ。シャルが嫌いな人間なのに、と。

それなのにマスターとシャルは僕を信用してくれているらしい。それはなんて嬉しいことだろうか。



「はい。マスター、シャルは僕が二度とは会えないかもしれない程、魔法適性の相性がいい相手ですから。……。シャル、別に僕は怒ってないです。そんなに泣かないでください。」

「ベル、すまない、ほんとに、俺、」

「いいんですよ。大丈夫です。シャルはシャル。別に純血だろうが混血だろうがエルフだろうが人間だろうが、僕にとってはどうでもいいよ。僕はシャルの嫌いな人間だけど、シャルは僕を選んでくれているんですよね?だからシャル、僕の相棒として一緒に冒険してくれますか?」

「それは、」

「パーティー申請します。シャルのパーティーに入れてください。そしたら僕はシャルを傷一つつけられないくらい完璧に守ってみせますよ?」

ベルはシャルの手を握ってさっきシャルにされたように空色のネックレスを見せつけながらそう言った。


「うん、ベル、僕の相棒になって。」

いつも気丈に振舞っているが、今は子供のように弱気になったシャルにベルはかしこまって言った。

「承知しました。シャル」

そういうとシャルはいつもより弱々しく、濡れた金色のまつ毛を閉じ、ふわりと笑った。


ーーーー



「ちょっとは落ち着いたか?」

「はい、すみません。」

シャルはギルドマスターが沸かしたお湯で作ったお茶をのんでふぅと息を吐く。

「しかし、それほど鑑定眼が強いとは。鑑定眼を持っている人すら少ないのに…。というか、他にも、うむ…、知られたら大変だ。まぁ、それはさておき、これが申請書だ。書き方は分かるな。」

「はい。」


そこにはパーティー申請書と書かれた紙がおかれていた。

メンバー名の直筆サインとそれぞれの指紋が必要なようだ。

シャルはそれにサラサラとその用紙に名前を書き、指に朱肉を付けて指紋を押した。はい、とベルにその紙を渡して、ここに名前と指紋を頼むねと言う。

ベルは言われたように書いていく。

「パーティー名はどうするの?」

「どうしようか?」

「うーん、、僕たちは太陽と月のような関係だから、昼と夜の間をとって夕方、黄昏、とか?」

「黄昏、いいね。かっこいい」

シャルはふふと笑って言った。



「よし、それでいいぞ。あとは処理しておく。それと、なんか話したいことがあるって言ってなかったか?」

「あぁ、そうなんです、マスター、」

かしこまるシャルにギルドマスターはぴくりと眉を動かす。

「何があった?」


「あ、いや、最初は俺の不注意だったんですよ…。俺、森で一人で鍛錬してたんですけど、姿を変える魔道具の魔力が無くなってるの気づいて。よく見てればよかったんですけど。他の人に気づかれて。急いで森の奥に、魔道具に魔力を貯めながら走ってたんです。そしたら、隠れられそうな洞穴を見つけたので入ったんです。そこが、ダンジョンの入口でした。」


「ダンジョン?ここら辺に森の中にダンジョンがある話は聞いたことがないんだが、どこで鍛錬してたんだ?」


「未開の森です。鍛錬してる時は深くは入ってなかったんです。浅い所でしてて…。」

シャルは情けないというように目を伏せる。


『マーリンの生物ノート』著:マーリン


[エルフ]

精霊が惹かれ、精霊に惹かれる種族。

高い戦闘能力と美しい見た目を持つ。

初代のエルフはハイエルフと人間から生まれた。


主人が精霊の加護を得るために奴隷化されるケースがある。

奴隷化されたエルフは兵器や愛妾などに使われる場合が多い。


(通常)

茶髪 翠眼 短い耳が尖っている。


(精霊の加護を多く受けている場合)

金髪 翠眼 短い耳が尖っている。


(混血)

他種族の特性が強く出る。

耳は尖っている。

エルフと言えないほど弱く、子供の時は力や感情が不安定で奴隷になりやすい。








ーーーーーーーーーー

まだまだこの話は後でも良かったような気はするのですが、書いてしまったのでお納めください。

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