ロペス村
ベルとシャルが野宿をしつつ、東へ東へ歩いていると森が開けて、遠くに柵や家が見えてきた。
「あれは、ロペス村だな」
「あぁ、森から1番近い村ですか。どんな村なんですか?」
「特徴はそうだなぁ、ウルフ系の魔物を従える一族が多く住んでいる。村と言ってもウルフ達の狩った魔物肉の料理が人気でほぼ町みたいなもんだよ。レストラン、行ってみるか?」
「レストラン…行ってみたい!」
「お金は足りなかったら出すから。」
シャルは本当に面倒見がいいらしい。
「足りそうなものしか食べないようにするけど、ありがとう。」
ロペス村は関税は税金は銀貨1枚。通常と同じくらいの金額である。
流石に不法侵入はしたくないので不可視のローブは機能を停止してから入場する。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様です!シャルさん!一応身分証を拝見しますね!」
「あぁ、えっと、はい。」
シャルは戸惑いながら身分証、冒険者のカードを出して門番に見せる。
「シャルさん、ありがとうございます!こちらお返し致しますね、それと、こちらのお嬢さんは??」
「男です…」
「あ…それは失礼致しました。」
何故こんなにも間違えられるのか。
「記憶喪失のようだ。身分証も魔物から逃げていた時に落として無くしてしまったらしい。しばらく一緒にいたが、変な人ではないから安心してくれ。ベル、関税を」
「はい。ベルーナと申します。よろしくお願いします。」
そう言ってベルは金貨を出して門番に渡す。
するとおつりで銀貨が9枚返される。
ベルはお釣りをアイテムボックスにしまう。
「シャルさんと同じ無属性持ちですか!いいなぁ、僕も無属性欲しかったです…」
門番は人懐こい笑みを浮かべる。
門番がこんなに人懐こくて大丈夫なのだろうか。と思ったが、
同時に、すぐ隣には血のような赤い飛沫の跡のついた門と凛々しい狼が大人しく座っていたためいざとなったら狼が何とかするのか…と悟った。
「ありがとうございます…?」
「それでは。失礼します。」
そう言って敬礼し、次の人へ回った。
「シャル、お知り合いですか?」
「いやー、知らない人。」
「え、知らない人?」
「何かまた隠してます??」
「いや、ほんとに知らない人だけど、多分噂で知ってるんだと思うよ」
「噂?」
「僕最年少でC級だからね。どこかで顔でも見られたんじゃないかな。まぁ、最年少記録ももう塗りつぶされそうだけど」
そう言ってシャルはベルをちらりと見る。
「そんな相手がいるんですね」
「いや、ベルだけど」
「え??でも、僕ブラッディベア、あんな綺麗に切れませんでしたよ?」
「水属性持ってないからだろ」
「…あぁ、そういうことでしたか…でも、そんなふうに思ってくれていると嬉しいですね。」
シャルは案外人気者なのかもしれない。
道を歩くと人がちらちらとこちらを見ているのが分かる。
(なんかめっちゃ見られてません?)
(うん…なんかそんな気がする。)
(いつもこんな感じですか?)
(いやー、いつもは、ここまでじゃないと思うよ?)
(もしかして僕が隣にいるからでしょうか)
(俺いつも1人だったからありえなくはないけど)
いつも1人だったんだ…
(いま失礼なこと考えただろ。違うからな。本来の力がひとりじゃないと出せないだけだ。ベルといる時は例外だが。)
言い訳…?
(言い訳じゃないぞ)
なんでバレてるんだ
(目で何となくわかるぞ…可哀想なものを見る目で見ないでくれ。辛いから)
(まぁ、日属性を見せるのは危ないらしいですしね)
(ベルも月属性を使うのは信頼出来る人だけのときだぞ。)
(うん。そうする。)
レストランに着いて、ベルは扉を開く。チリンチリンと鐘が鳴り、店員さんがいらっしゃいませと声をかけてくる。
ベル達は窓の近くの席に着くと、メニュー表を狼が背中に乗せて持ってくる。
「おお、これはすごい…!」
「ありがとう」
メニュー表には狼がとってきたうさぎや猪でつくられたラビットステーキや、ボアの串焼きなど肉系メニューと、町の孤児院で栽培されているサラダメニューなど、地域に特化したメニューばかりだった。
ベルは選べなかったので、日替わりメニューAを注文した。BやCは値段は安いが、ボリューム感はAが多いようだったため、お腹のすき具合を考えた結果である。Aは少し高かったが高いと言っても銀貨1枚程度である。まだ素材も売ってなければ金貨はまだ9枚残っているのでそのくらいは構わないのである。
ご飯は狼が台車を運んでやってきた。
くろいツヤツヤした狼は尾を振り、まるで犬のようである。
頼んだ日替わりセットAはお米に豚系魔物のステーキが乗り、ソースがとろとろとかかっている。
シャルはラビットステーキを注文していて、ベリーソースのかかったそれを金髪碧眼のシャルが食べると、そこだけまるで絵画のように見えるのである。
我ながら美しいものに目がないとおもいながら、ふいと窓の外に目を向ける。
外に見える村の人は狼に首輪を付けて歩き回っている。
一緒にご飯を食べたり遊んだりしていて、確かに狼系魔物を従える人が多く住んでいるようだ。
子供たちでさえ、狼の手綱を握っているように見える。
「すごいね。」
「ああ、これも、適性がないと難しいからな。」
「適性は遺伝する…のでしょうか。」
「遺伝…。あぁ、親から子に受け継ぐことか。そうだな。大体はそれだろう。ただ、両親が持っていると確実だが、片親しか持っていないと受け継ぐのは難しいだろうな。」
「そうなんですね」
(つまり私たちみたいに中でも適性になりにくい月、日、無属性を持っている人は両親が持っている確率が高いわけだ。まぁ、突発的に子供が持つことももちろんある。祝福を受けたりな。特にスキルや魔法以外の体術系は練習を重ねることでできるようになる。)
(あぁ、なるほど。)
(ベルは祝福持ちか?)
(うん。イディリシス様の。)
(まぁ、そうだろうね。つまり、ベルはそれ以外の属性を親族からうけついだ形になるわけだ。)
(シャルは祝福?)
(…いや、俺は親からだね。)
(そうなんだ。すごいね)
(ああ、母はすごいと思う。)
しかし美味しすぎて箸が止まらない。
「美味しいね」
「ああ。気に入ってくれて良かったよ」
「うん!」
お肉とお米にソースが絡む。
さっぱりしたソースだから、油っぽくなくて良い。
ロペス村の発展はこのサービスと食事あってこそだと思った。
特に狼が運んでくるという発想はなかなかないし、良く躾られていると思った。
代金を払い、外へ出ると次は身分証を作りに行こうといわれ、シャルについて行く。
「身分証はここか」
そう言ってシャルは大きな建物の扉を開く。
中には制服を着た人が何人か座って受付作業をしている。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご要件でしょうか。」
職員さんにそう話しかけられ、
「身分証を作りに来ました」
と説明する。
「承知しました。それではこちらに。」
そう言ってベルとシャルを椅子に案内する。
「身分証はこちらの紙に記入されたことが反映されます。保証人はシャル様でよろしかったでしょうか。」
「はい。」
この人もシャルのことを知っているようだ。結構人気なのか?
「ベル。名前と、年齢と、性別、属性、スキルを書いていればいい。あとは俺がサインするから。」
(全部書く必要は無い。属性は特に。狙われるぞ。)
「わかった。ありがとう」
「男…?」
「男です…。」
よく間違われるがみんなどういうふうに見えているんだ…、?
「無属性と火属性…ふたつ使えると。」
「はい…。」
「珍しいですね…」
「そう、ですかね?」
「鑑定眼…」
「え、えっと…?」
(だめでした?鑑定…)
(いや、ギリ大丈夫だ。珍しいからスカウトはあるだろうね…圧倒的に他のスキルより大丈夫だから…。)
(スカウトですか??)
(あぁ、鑑定できる人は少ないから特に商業分野では重宝される。)
「嘘はついていないようですね…」
(もしかして嘘ついたらバレるんですか?これ)
(バレる。でも全部書けとは言われてないから大丈夫)
(ずるい人ですねシャルは。)
(皆そうしてるさ。)
「犯罪歴も無いようですし、シャル様が証人ということで問題ないでしょう。こちら、証明書です。無くさないように気をつけてください。」
「ありがとうございます」
身分証の発行には銀貨2枚がかかった。今のところ銀貨4枚を使っている。
「この村は冒険者ギルドはないから、もう少し大きい町に行かないとね。ちょっと先に町があるからそこへ行こうか。僕もそこで主に活動してるし。」
「そうなんだ。じゃあそこにいこうか。」
(…。そういえば、今思ったんだけど、転移出来ないの?)
(ベルが行くのが初めての場所なら無理だろうな。俺だけなら行けるけど、ベルを連れて行けない。膨大な魔力が必要だから。)
(なるほど。そういうことか。じゃ、仕方ないね)
ベルはシャルの横をとことこと歩く。
村から出る時も身分証が必要なようで、作ったばかりの身分証を見せてそとへ出る。
身分証のおかげでお金がかからなかった。
門を出ると馬車があり、銀貨3枚で街までとの事だったので、馬車に乗ろうとする。
「おふたりかい?合計銀貨6枚だけど可愛らしいお嬢ちゃんに免じて銀貨4枚でどうだい?」
「…僕、男です…!!!!」
シャルは横で肩を震わせて笑っている。笑うな。
シャルだって最初間違えたくせに。
「ふっふふふふっ間違われすぎててふふっ」
結局お詫びに銀貨4枚で乗せてもらいました。
残り金貨9枚




