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好きでした、婚約破棄を受け入れます  作者: たぬきち25番
第一章 幸せが約束された未来
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6 侯爵家へのお呼ばれ(2)




 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン。


 時計の音が聞こえて、私は時計に目を向けた。


「もう、こんな時間!!」


 エカテリーナの屋敷は王都でも城にとても近い場所にある。一方私の屋敷は、貴族の暮らすエリアの一番外れなので、ここから、私の屋敷までは半刻はかかる。


 お母様から、時計が5つ鳴る前には戻るように言われていたのだった。


「ふふふ。シャルロッテと話をしていると、つい時間が過ぎてしまうわね」


 エカテリーナが、立ち上がるとベルで侍女を呼んで、言った。


「シャルロッテを送る準備をお願いね」


「かしこまりました」


 エカテリーナといると楽しいので、もうお別れだと思うと悲しかった。

 私は、エカテリーナにお礼を伝えることにした。


「今日は、楽しかった!! お洋服もたくさん、ありがとう」


「私も楽しかったわ!! また遊びに来て」


「うん。あ、その時は、エカテリーナに貰ったお洋服を着てきてもいい?」


「着てくれたら嬉しいわ!! ぜひ着てきて!!」


 私は、少しだけほっとした。

 エカテリーナに貰った服なら、私が侯爵家に出入りしてもおかしくはないだろう。

 

(また、変って言われたら悲しいし……エカテリーナから貰ったお洋服を着て来たら、一緒に遊んでくれるかな?)

 

 私は、さっきゲオルグとのことを思い出した。




 それから、すぐに帰る用意が出来たとの連絡があった。

 エカテリーナは、私を馬車の前まで見送ってくれた。


「シャルロッテ、またぜひ、遊びに来てね」


「うん!!」


 パタパタ。


 私が馬車に乗ろうとすると、後ろから足音が聞こえて、私の手に何かが押し付けられた。


「え?」


 振り返ると、息を切らして、顔を真っ赤にしたゲオルグが立っていた。

 ゲオルグに押し付けられている手の中を見ると、押し花のしおりを握らされていた。


「……やる」


「ありがとう」


 私は、しおりを受け取ると、ゲオルグにお礼を言った。


(私が大嫌いなのに……これをくれるの……?)


 私は不思議に思ってゲオルグを見つめていると、ゲオルグが大きく息を吐いた後に、私の顔を正面からじっと見つめた。


「……あと……ごめん」


 そう言って、ゲオルグは片手を差し出して来た。


(え? これって、握手? イヤだったんじゃないの??)


 手を取っていいものか、悪いものか考えていると、ゲオルグが声を上げた。


「やり直し。初めから」


 もしかしたら、ゲオルグは教師に注意されてここにいるのかもしれない。

 自分の意思ではなく、義務感で言っているのかもしれない。

 例えそうだとしても、仲直りできることが嬉しくて、ゲオルグの手を握った。


「うん。よろしくね。ゲオルグ」


「ああ、よろしく、シャルロッテ。次に来た時は、俺も……一緒に遊ぶから」


 ゲオルグが私の手を握ったまま、視線を逸らしながら言った。

 耳まで真っ赤になっている。

 そう言えば、エマとエイドも仲直りをする時はいつも恥ずかしそうだった。


(『ごめんなさい』って言う時は、恥ずかしいのかな? でもそれでも伝えてくれたんだ……)


 私は、笑顔で答えた。


「うん!! 遊ぼう!!」


 ゲオルグが私と繋いでいない方の手で、頭を掻いた。


「それと……俺、シャルロッテのこと……嫌いじゃない」


 『大嫌い』だと言われたが、どうやら嫌われていないようだ。

 私もお友達が出来るのは嬉しいので、嫌われていないと知って、ほっとした。


「そっか!! よかった」


「あ……」


 ゲオルグが何か言いたそうな顔で、私を見ていたが、ゲオルグの両肩にエカテリーナの手が添えられた。


「シャルロッテ。弟を許してくれてありがとう」


 これまで、いろんなエカテリーナの表情を見たが、今の顔は優しくて、とても穏やかで心が暖かくなるような笑顔だった。


「今度は3人で遊ぼうね!」


 私は、自然に笑顔になっていた。


「うん、またね」


「またな!!」


「うん。またね!!」


 馬車から、外を見ると、ゲオルグが手を振りながら少しだけ走って見送ってくれた。

 私はそれが、とっても嬉しかった。


 次に会う時は3人で遊べる。

 何をして遊ぼうかと、私は胸を躍らせたのだった。


 





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