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好きでした、婚約破棄を受け入れます  作者: たぬきち25番
第三章 深まる溝と揺らぐ絆

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26 貴族学院入学式(1)



 昨日も着たが、今日からは毎日着ることになる制服に袖を通して、念入りに髪の毛をセットした。私はハンスの婚約者でもあるので、ハンスの評判のためにも貴族令嬢らしい見た目も大切なのだ。


「これでいいかしら?」


「ええ。さすがお嬢様、きっと一番可愛いです!!」


 エマが真剣な顔で言った。


「ふふふ、大袈裟よ。そろそろハンスが、迎えに来てくれるかしら?」


「そうですね」


 私がエントランスに行くと、エイドに「お嬢が世界一!!」と言われ、エイドのマネをしたシャロンに「お姉様が世界一!!」と言われて、お父様とお母様に「シャルが一番可愛いわ」と、みんなに同じようなことを言われた。家族の語彙力が心配になりながらも、私はハンスを待った。


 みんなで、待っているとハンスの馬車が着いた。馬車から降りて来たハンスはとても素敵だった。


(普段も素敵だけど……制服姿は大人っぽくって素敵だわ)


 私がハンスに見とれていると、ハンスが真っ赤な顔で声を上げた。


「おはよう、シャル~~~可愛い~~~!! どうしよう!! シャルを誰にも見せたくない。学院行かない方がいいんじゃ……可愛過ぎる!!」


 ハンスがオロオロしていると、ピエールがやってきて私を見た。


「おはようございます。ほ~~これは、確かに可憐だ。ですが、ハンス様、急がないと遅れますよ」


「そうだった。シャル、行こう」


「ええ。では、みんな、いってきます」


「いってらっしゃーい!!」


 みんなに見送られて、私は馬車に乗り込んだ。馬車に乗ると、私はすぐにハンスに、おでこや頭にキスをされた。


「ハンス、どうしたの??」


 今日はいつもより、ハンスのスキンシップが激しい気がする。


「いや、シャルはこんなに可愛いんだし、どこか遠くに行かないか不安で……」


「大丈夫よ。ハンスだって、素敵なんだから……私だって、不安だよ」


 隣に座って、頭にキスをし続けるハンスを見上げると、ハンスが「あ~~」と言って私を抱きしめた。


「シャル。大好きだよ。愛してるよ」


 私もハンスを見上げて言った。


「ハンス、大好きよ。私だって、愛してるわ」


「シャル~~~~」


 それから、私たちは、抱きしめられたまま学院に向かったのだった。


☆==☆==


 学院に到着すると、エカテリーナが待っていてくれた。


「シャルロッテ~~~!! 入学おめでとう!!」


「エカテリーナ!! ありがとう!!」


 私は、エカテリーナの手を取ると、嬉しくて笑顔になった。エカテリーナは2年前にすでに貴族学院に入学している。これまでエカテリーナとは、1ヵ月に1度。長いと、3ヵ月に1度しか会えなかったが、これからは毎日会えるということだ。


「これは、ランゲ侯爵令嬢様、いつもシャルがお世話になっております」


 私とエカテリーナが再開を喜んでいると、ハンスがエカテリーナに向かって頭を下げた。


「ああ、ホフマン伯爵子息殿、お久しぶりですね」


「ええ」


 エカテリーナとハンスが、あいさつを交わすと、エカテリーナが私の手を引いた。


「シャルロッテ。新入生は、あちらで、学生証を配られるのよ」


「学生証」


 私が首を傾けると、エカテリーナが説明をしてくれた。


「学生証は1年間有効で、これから1年過ごすクラスが書かれているわ」


「張り出されるのではなないのですね」


 ハンスがエカテリーナに尋ねると、エカテリーナが頷いた。


「ええ。学生証の淵が金色だと、Sクラス。銀だと、Aクラス。青だとBクラス。緑だとCクラス。赤だとDクラス。オレンジだとEクラス。白だとFクラスよ。事前のテストですでにクラス分けは決まっているわ」


「ああ、学生証で自分のクラスがわかるシステムなのですね」


 ハンスが顎に手を置きながら言った。エカテリーナが頷きながら説明を続けてくれた。


「そう。Sクラスは学年にたった10人。しかも、他のクラスと校舎も違うから中々会えないのよ。ただ、Sクラス同士だと、学年を越えて仲良くなれるわ」


「エカテリーナのクラスは何?」


 私はエカテリーナに尋ねた。


「私は、Sクラスよ」


「ふふふ。さすがね」


 エカテリーナがSクラスということは、もし、私が他のクラスなら校舎が離れてしまうということだ。


「そうですね。さすがですね」


 ハンスも頷きながら同意した。


「そんなこと言って、ないで学生証をもらいに行きましょう」


「ええ」


 こうして私たちは、学生証をもらいに言った。


「おはようございます。シャルロッテ・ウェーバーと申します」


 私は、少し緊張しながら、学生証をもらいに行った。


「ウェーバーさんは、はいこちらです。Sクラスになります。これが、学院の地図です。地図を見ながら自分のクラスに行って下さい」


「はい」


 学生証と一緒にたくさんの書類の入った封筒も一緒に貰った。


「シャル!! クラスどこだった?」


 ハンスは、手には、何も持っていなかった。


「Sクラスだったわ」


「……え?」


 ハンスの顔が曇った。私は、恐る恐る尋ねた。


「ハンスは?」


「俺は……Bクラス」


 Bクラス。実は、最近ハンスは、乗馬や剣術などの大会が忙しくて、宝石の勉強以外の勉強は、少しだけサボりがちだった。

 一緒に勉強しようと言ったのだが、疲れていると言って、あまり勉強をしていなくて、家庭教師の先生も嘆いていたのだ。

 それでも、Bクラスは上位のクラスだが。


 私たちが沈んでいると、エカテリーナの明るい声が聞こえた。


「シャルロッテ!! Sだったのね。私が案内してあげるわ。では、ホフマン伯爵子息また」


 私はエカテリーナに手を引かれて、ハンスを振り返った。


「ハンス……またね」


「あ、シャル……うん。帰りは一緒に帰ろう」


 ハンスがどこか切なそうに言った。


「ええ」


 私はハンスと別れて、Sクラスに向かったのだった。ハンスは心配そうな顔をしていたが、クラスが別れただけだ。会えなくなくわけじゃない。

 それよりも、Sクラスはきっと勉強が大変だろうと思う。気を引き締めようと思ったのだった。





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