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好きでした、婚約破棄を受け入れます  作者: たぬきち25番
第一章 幸せが約束された未来

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1 お茶会デビュー(1)



「シャル、お茶会に行ってみるかい?」


 夕食の時間に、お父様とお母様が嬉しそうに言った。

 私は先日7歳のお誕生日を迎えた。

 7歳になるとお茶会に招かれるようになると聞いていたが、こんなに早くに行けるとは思っておらず、私はとても嬉しくなった。


「お茶会ですか?!」


「ああ、そうだ。シャルロッテと同じ年くらいの子供たちが集まるんだ。お友達ができるかもしれないよ?」


「お友達?! 行きたいです!!」


 私はシャルロッテ・ウェーバー子爵令嬢。

 子爵と言っても、元々は曾祖父が、国に多大な利益をもたらす薬を作った功績が認められて、没落した元貴族の領地を、代わりに納めるために子爵になった新興貴族だ。

 没落した貴族が納めていた領地だけあって、それほど広くなく、荒れ果てた土地も多いのでとても貧しい領なのだ。


 現在、領地の屋敷にはおじい様とおばあ様が暮らしている。

 おじい様は数年前に、爵位を父に譲り、今では父が子爵だが領主は祖父のままなのだ。


「シャルロッテが学校を卒業するまでは、王都に残った方がいいだろう」


 祖父との話し合いによって、私たちは王都にいるのだ。

 中央と領地の繋ぎや、社交の面を考えても、領主の家族の誰かが王都に残ることはよくあることだが、理由はそれだけじゃなかった。


 実は、貴族の教育機関は、王都にしかない。

 しかも、子供専門の医療機関や、学校もない領も多い。

 ちなみに、我が領には、読み書きを教える学校はあるが、子供を専門に見てくれるお医者様はいない。

 それもあって、私たちのように子供が学校を卒業するまでは、王都で暮らす貴族はとても多いのだ。


 現在。私は、お父様と、お母様、私。そして、家の手伝いをしてくれるエマと、家の手伝いと、料理を作ってくれるエイドの5人で王都で暮らしていた。


 ちなみにエマとエイドは兄妹で、エマは14歳。エイドは15歳だ。なんでも小さい時にお父様が引き取って、一緒に暮らすようになったらしい。

 エマもエイドも、私が生まれた時から、側にいてくれるので、兄や姉のように思っている。


 そして、今も5人で、食卓を囲んでいた。


 昔は、エマもエイドも遊んでくれていたが、2人とも忙しいので、一緒に遊んでくれるお友達が出来ることが嬉しかった。


「お嬢も、お茶会に行くような年齢になったんですね~~」


 エイドが腕を組み、頷きながら言った。


「そうですね~~。早いですね~」


 エマも嬉しそうに、目を細めていた。


「ついこの間まで、オムツを替えてあげていたのに……」


「エイド……それ、やめて……」


 エイドは最近、何かあると、こう言って涙ぐむのだ。恥ずかしいのでやめてほしい。

 

「ふふふ。明日、シャルのドレスを作りに行きましょうね♡」


 お母様の言葉に思わず固まった。

 ドレスを作るということは、お金がかかるということだ。

 つい最近、足が大きくなって靴を買ってもらったばかりなのに……。


「ドレス……大丈夫? ごはん食べられる?」


 不安になって尋ねると、お父様が優しく微笑んでくれた。


「シャル。心配しなくても大丈夫だよ。さぁ、明日のためにもうお休み。エマ。頼むよ」


「はい。では、お嬢様、行きましょう」


 私は、エマに促されて、席を立った。


「おやすみなさい、お父様、お母様、エイド」


 私は、お父様とお母様とエイドの元に行って、頬にキスをした。


「おやすみ、シャル」


「おやすみ、いい夢を」


「お嬢!! おやすみなさい」


 私はみんなに見送られて部屋に戻った。

 部屋に戻ると、私は不安になってエマを見上げた。


「大丈夫かしら?」


 するとエマが力強く笑った。


「旦那様が、大丈夫って言うんですから大丈夫ですよ!! 旦那様が、お嬢様に嘘をついたことがありますか?」


 私は、はっとして首を横に振った。


「ない」


「ね? 大丈夫ですよ」


 エマの笑顔を見て、私も笑顔になり、ベットに潜り込んだ。


「うん!! おやすみ、エマ」


「おやすみさない」


 エマが、ベットに入った私の額におやすみのキスをしてくれた。

 ドレスを買ってもらうのは、初めてだ。

 私は、わくわくしながら眠りについたのだった。




☆==☆==



 シャルロッテが眠りについた後、食卓では……。



「お嬢様は、おやすみになりました」


 エマが、パタンと扉を閉めて、椅子に座った。

 ウェーバー子爵夫人が、エマに優しく微笑みかけた。


「エマ、ご苦労様」


 エマはそんな夫人を見て、少し考えた後に口を開いた。


「いえ……。あの、お嬢様が、ドレスのことを心配しておられました」


 すると、エイドが、身を乗り出して、大きな声をあげた。


「あの、旦那様、お嬢のお茶会デビューのためなら、俺の今月のお給金は、なしでもいいですよ!!」


 エマも必死な顔で、子爵と、子爵夫人を見ながら声をあげた。


「私もいりません!!」


 それを見た子爵と、夫人は互いの顔を見合わせた後に、夫人がエマとエイドに優しく微笑みながら言った。


「ありがとう、2人共。こんなに心配してくれるなんて、私たちは幸せ者ね。でもね、エマ、エイド、本当に大丈夫なのよ」


 子爵も夫人の隣で、頷きながら言った。


「大丈夫だよ。2人共、ありがとう。実は、今回のお茶会は、ホフマン伯爵子息の婚約者を決めるお茶会なんだ。それで、参加してくれる令嬢にはホフマン伯爵家御用達の店で、どれでも好きなドレスを一着、頂けることになっているんだ」


 するとエイドが立ち上がって驚いた。


「え~~~!! お嬢。もう、結婚相手を決めてしまうのですか?! まだ7歳なのに!! 早くないですか? お嬢には、恋愛とかして、好きな相手と幸せになってほしいです!!」


 すると夫人が急いて否定した。


「いえいえ、ホフマン伯爵家は、侯爵になるのではないかと噂されるほどの、名門貴族ですもの。

 きっと、家ではお相手にはなれないわ。でもね、婚約者を見つけるためのお茶会なら、ホフマン伯爵子息以外は、全て女の子が参加するの。初めてのお茶会は、女の子だけのお茶会に参加させたかったから、丁度よかったのよ」


「え?」


 唖然とするエイドを無視して、エマが口を開いた。


「なるほど……。ドレスも貰えて、なおかつ、ご令嬢ばかりのお茶会。確かにデビューするには、いいですね」


「でしょ?」


 夫人が笑いながら言った。


「でも、でも、もしですよ? お嬢が選ばれたらどうするんです? お嬢はあんなに可愛くて、素直で、賢くて、可愛いんですよ?!」


 エイドが必死に食い下がる。


「エイド…。可愛い2回言ってるから…。でも、もし選ばれてしまってもいいのですか?

 お嬢様は1人娘ですよ?」


 エマも、もう一度、子爵と夫人を見ながら尋ねた。


「う~~ん。ホフマン伯爵家は、少し特殊でね……。家のような小さな家は、選ばれないと思うんだ。ただ、近いから体裁を整えるために招待状が来ただけで……。だから、選ばれる心配はないと思うんだけど……ん~~~。」


 子爵は、眉を寄せ、腕を組みながら答えた。


「確かに……お隣の領ですしね」


 エイドが、答えた。


「では、お嬢様のお茶会デビューをサポートしますね!!」


 エマが、笑顔で、子爵と夫人を見た。


「うん、頼むね」


「よろしくね、2人共」


「はい」


「はい!!」


 こうして、 ウェーバー子爵家の夜は更けていったのだった。






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