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好きでした、婚約破棄を受け入れます  作者: たぬきち25番
第一章 幸せが約束された未来
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11 ホフマン伯爵家での生活

 



 ハンスの婚約者になった翌日から、私はホフマン伯爵家に通うことになった。ハンスと一緒に勉強をするようになって、もうすぐ半年が経とうとしていた。


 なんと私とハンスは、王族の方を教育したという凄腕の家庭教師の元、基礎教育を受けることになった。

 毎日のように勉強の予定が組まれていたが、つらいとは思わなかった。

 きっと、ハンスと一緒に勉強できたからだろう。


 ハンスはいつでも私に優しくしてるので、私はハンスのためなら勉強もつらくないと思えた。


 教育にかなり力を入れている、ホフマン伯爵家だが、中でも、一番力を入れている教育が、『宝石』に関する教育だったのだ。

 なぜなら、ホフマン伯爵家は、宝石の目利きで財を成した家なのだ。

 だから宝石に関してだけは、毎日必ず伯爵自ら時間を取って、私たちに宝石についてを教えてくれていた。


 つまり、私たちがしっかりと、ホフマン伯爵から宝石に関する知識を継承できるかどうかに、今後のホフマン伯爵領の未来がかかっているのだ。


 そんなわけで、今日も午前の基礎教育が終わると、お昼休憩を挟んだ後に、宝石の勉強が始まった。



 

「さぁ、2人共これがわかるかな? 君たちから向かって右から順番に宝石の名前を書いてごらん」


 ホフマン伯爵が、数日前に教えてくれた宝石をテーブルに並べた。

 私とハンスは並んで座って、石を見たり触ったりした。


(少しだけ青みがかった赤い宝石、これはツヴァイタイトね、そしてこれが、ルージュに見えるけどそれはフェイクで、アインタイトね………そしてこれはガラス玉ね、この綺麗な紅。これは間違えようもないわ、ドライタイトの特徴ね)


 私は右から順番に、宝石の名前を書いていった。

 

「うわ~~全然わかんない」


 隣でハンスが頭を抱えていた。

 ハンスは宝石の微妙な違いがわからないと言って、いつも手触りを優先している。

 私は、逆に手触りだとあまりわからないのだ。


 私が紙を書き終えると、ホフマン伯爵が微笑んだ。

 出会った頃の伯爵より、口調も少しだけ柔らかくなった。さらに最近では『シャルロッテ』と私のことを名前で呼んでくれる。


「おや? シャロッテはもう書けたかな?」


「はい」


「貸してごらん」


「どうぞ」


 私は緊張しながら、伯爵に答えの書いた紙を渡した。いつもこの瞬間は緊張する。


 伯爵はとても厳しいが、それと同じだけ優しい。

 最近では、丁寧に教えてくれる伯爵の期待に答えたいと思っていた。

 そうこうしているうちに、私はいつの間にか、伯爵から受ける宝石の勉強が、一番楽しみな時間になっていたのだ。

 

「ふふふ。さすがだね。全部正解だ。ハンス。もう書かなくていい、正解を口で言ってごらん」


 伯爵の言葉に、ハンスが自信がなさそうに答えた。


「これがドライタイト…? そしてルージュ、アインタイトに、ツヴァイタイトかな?」


 するとホフマン伯爵が大きな溜息をついた。

 

「ルージュは入っていないし、どれも不正解だよ。ハンス。お前はもう一度、やり直しだね」


「え~~~難し過ぎますよ。おじい様」


 ハンスが宝石を見ながら泣きそうな顔をして言った。


「難しくても、学ばなければいけない。これは我が伯爵家の大切な生業だからね」


「わかっていますよ」


 伯爵に諭されて、ハンスは少し、いじけたように言った。


(ハンス大丈夫かな?)


 私が心配していると、ホフマン伯爵が次の石を取り出した。


「では、今日はこの石を学ぼう」


「もう、次の石?!」


 ハンスは新たな石の登場にげんなりしていたが、私はというと、新たな石の登場に心を躍らせたのだった。



☆==☆==


 勉強が終わると、ハンスと2人で庭で、お茶を飲む時間だ。


「はぁ~~。シャルは凄いな~。マナーだって歴史だって、宝石だってすぐに覚えちゃうし」


 ハンスが少しだけ口を尖らせながら言った。


「ハンスだって、ダンスを褒められていたでしょ? 私はステップもまだ覚えられないから羨ましいわ」


 するとハンスが、私に顔を近づけて、にっこりと笑った。


「ごめん、そうだよね。僕とシャル、得意なことと、苦手なことがあって当然だよね。

 2人で少しずつできるようになろうね。」


「うん!! 私、ハンスに相応しい女性になるために頑張るわ」


「ありがとう、シャル。本当に大好きだよ!! 僕の婚約者がシャルでよかった!! ねぇ、シャルこれからも、2人で頑張ろうね!!」


「もちろんよ。それに……私もハンスのこと……大好きだよ」


「シャル~~~~」


 そう言って、ハンスは私を抱きしめた。私はハンスの腕の中で顔を見合わせて笑い合ったのだった。


 ☆==☆==


 お茶の時間が終わり、マナーの勉強を終えて、2人で少しの間かくれんぼをして遊ぶと、私は家に戻ることになった。毎日、勉強の後に私たちは2人で遊ぶ時間があるのだ。


 私もハンスもその時間を楽しみにしていた。

 そして、行きはそうではないが、帰りはハンスが一緒に馬車に乗って、屋敷まで送ってくれるのだ。

 今日ももちろん、ハンスは家まで送ってくれた。馬車の中で、私は念のために明日の予定を確認することにした。


「ハンス。明日はエカテリーナに会いに行ってくるね」


 私が明日エカテリーナの家に遊びに行くことは、数日前から、伯爵とハンスに伝えて許可を貰ってあったのだ。


「そうだったね……明日は、シャルに会えないのか……寂しいな~~。乗馬と剣術の訓練が始まって、シャルと一緒に過ごす時間が減ってるのに……。

 ああ、そうだ!!

 これからは、エカテリーナに伯爵家に来てもらったらどうかな?」


「ええ? そんな、悪いわ……」


 ハンスの提案に私は驚いてしまった。


「僕は、シャルに会えないのは寂しいし、エカテリーナが僕の屋敷に来てくれれば、エカテリーナとお茶の時間だけ、会うのを我慢すればいいしね。いい考えでしょ? 僕からおじい様に伝えるよ」


「ええ、あの、ハンス。エカテリーナにも聞いてみないと……」


「じゃあ、明日聞いてみて。もし、エカテリーナが了承すれば、こちらから侯爵家に文書を送るよ」


「……うん」


 ハンスのキラキラした瞳を見ると、何も言えなくて私は静かに頷いたのだった。



 






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