表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きでした、婚約破棄を受け入れます  作者: たぬきち25番
第一章 幸せが約束された未来
11/79

10 初恋の人との出会い(2)




「凄い……本当にキレイ……」


 ハンスに連れて来られた場所は、大きな噴水の隣につるバラのアーチがあり、様々な種類のバラが咲き乱れる美しい場所だった。


 噴水の水が常に七色に反射していると思ったら、この噴水は町の広場にあるような、ただの石ではなく、見たこともない石が使われていた。


「気に入った?」


「はい」


 ハンスが嬉しそうに笑うと、「僕たち結婚するんだから、普段の言葉でいいよ」と言った。

 優しい瞳で見つめらるのたとても嬉しいと思って、私も笑顔で答えた。


「うん、じゃあ、ハンス。よろしくね」


「ああ、そっちの方がシャルに近づけたみたいで嬉しいな。実は、僕、お茶会でシャルを見た時から、ずっと君の事を考えてたんだ」


「お茶会?」


 どういうことだろうか?

 私は、お茶会ではハンスに会っていないはずだが……。


「本当は君をお茶会で見つけた時にすぐ、君のところに行きたかったんだけど、動けなくて……声をかけなかったことを、後悔したんだ」


 そういえば、エカテリーナがずっと、『あいさつがしたいけど、囲まれれて近づけないわね……』と言っていたが、ハンスのことだったのだろうか?

 もしかして、私はあの時、のんきにお茶を楽しんでいる場合ではなかったのだろうか?

 私は、急いでハンスに謝罪した。


「ごめんなさい、ハンス。私の方こそあいさつに行くべきだったのに」


「いや、僕は君たちが、楽しそうにお茶会を楽しんでくれたことが嬉しかったんだ。

 お菓子を食べて、楽しそうに話をしていたシャルはとても可愛かったから」


 可愛い……。

 両親や、エマやエイドは、よく私のことを可愛いと言ってくれる。

 それはとても、嬉しいが、ハンスに言われると、なんだか頬が熱くなってきて自分でも戸惑ってしまった。


「ハンス……そんな風に言ってくれて、ありがとう」


「ふふふ、あの後、すぐにおじい様が『ホフマン伯爵家に相応しい娘を見つけた』って、おっしゃっていたから、もうシャルには会えないかと思っていたんだ」


 つまり、ホフマン伯爵が家に来た時、ハンスは私が相手だと知らなかったということだ。

 ということは、私がもし、あの時、マッローネダイアの原石を選ばなければ、ハンスとは会っていなかったということだろうか?


 私が考えていると、ハンスが嬉しそうに笑った。


「だから、シャルが来てくれた時、夢かと思った!! また、君に会えて嬉しい。しかも僕のお嫁さんになってくれるなんて!! ねぇ。あの時言えなかったことを言ってもいいかな? シャルが着ていた、深い紫水晶のようなドレス、良く似合ってて素敵だったよ」


 顔が熱いと思ったが、熱いのは顔だけじゃなかった。

 身体中の体温が上がって、心臓の音が大きく聞こえる。それだけじゃなく、普段は聞こえない耳の中まで脈を打つ音が聞こえる。


 ハンスと繋いだ手が、とても恥ずかしいのに嬉しくて……。

 初めての感情に戸惑いながら答えた。


「……ありがとう」


 それから、私たちはハンスに案内されて、庭を見て回った。伯爵家の庭はとても広くて、今日だけでは、回れそうになったので、また今度見ることにした。


 ハンスと手を繋いで、お父様たちのサロンに戻った。

 すると、心配そうな顔のお父様と、エイドの顔が見えた。

 そんな中、ホフマン伯爵が私たちを見て真剣な顔をした。


「2人ともどうかな? 婚約してもいいだろうか?」


 すると、ハンスが私を見て頷いたので、私も頷き返した。


「おじい様、僕はシャルと婚約したいです!!」


 私も、ホフマン伯爵を見て言った。


「私も、ハンスと婚約したいです」


 その瞬間、お父様はなんとも言えない顔をしたが、ホフマン伯爵は、嬉しそうに笑った。


「はっはっは!! そうか、ウェーバー嬢がお相手なら、我がホフマン伯爵家も安泰だな」


 そう言った後に、父の前に書類と羽ペンを差し出した。


「よろしいでしょうかな? ウェーバー子爵殿」


 お父様は、私を見て、真剣な顔をした。


「シャル。本当にいいんだね」


「はい」


 私はお父様をじっと見つめた。視線がぶつかって、数秒。

 お父様がフワリと笑って「そうか」と言った後に、ホフマン伯爵と、ハンスの方を見て頭を下げた。


「娘をどうぞ、よろしくお願い致します」


 すると伯爵が力強く言った。


「ホフマン伯爵家の誇りにかけて、ウェーバー嬢の幸多い未来に尽力致します」


 ハンスも真っすぐにお父様に向かった言った。


「必ず、シャルを幸せにします」


 お父様は、少し笑うと迷わず、婚約誓約書にサインした。 

 こうして、私はハンスの婚約者になったのだった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ