第三章 B組!どこ行く!?禁断の書庫へ登堂入室!
「前は今回火災が発生した池典高校です。どうやら全校生徒・教職員1560名が消防隊到着前に全員グラウンドへ避難できたとのことです!学校側の災害避難能力の意識は相当なものだと見られます!」記者が二条校長にマイクを向けた。
「こんにちは、二条校長。御校では普段からどのような避難訓練をされて、今回のような模範的な災害避難を実現できたのでしょうか?」
「ウッ…ウウ…ウウウウウ……」彼は顔を歪めて、「防災訓練がついに役立った」という表情を装いながら(←放火犯は彼です。念のため言っておきますが、これは懲役ものです)、懐紙で顔を覆い泣いているふりをしていた。その横にいつの間にか夜生花が現れ、まるで通訳をしているかのようだった。二条校長の嗚咽が収まった隙を見て、彼女は完全に無造作な口調でカメラに向かって言った。
「彼が言うには、幼い頃に火事で全てを失ったらしい」
「ウウウウウ!ウウウウウウウウ!」
二条校長は懐紙に顔をうずめた。周囲の生徒たちが彼を支え、その場から離れた。
「彼が言うには、今までの訓練が今日ようやく報われた、感無量だ!以上」夜生花は棒読みで朗読した。
「ちょ、ちょっと待てよ!あいつの演技、嘘っぱぎすぎじゃねーかよ!」
ともかく、初日は終わった。B組の教室は入学式初日に焼け落ちた。上層部へ再建資金を申請中で準備は進めているらしいが……さて、B組はこれからどうすればいいのだろうか……。
「クラスのグループチャットによると……新しい教室は校舎の裏側だとか……」
正義は鞄を背負い校門をくぐった。他の生徒たちが校舎に入り上履きに履き替えるのを横目に、自分だけが裏手へ向かわなければならない現実にため息をついた。
「はあ……俺はやっぱり、普通のスクールライフってのを満喫できねえってことかよ……」
「おーい!こっちこっち!」
二条校長が遠くグラウンドの真ん中で手を振っていた。正義が周囲を見回すと、彼らはサッカー場のセンターサークル(中圏)に一つの小屋を建てていた。正義はその人物を知らないふりをしてうつむき、真っ直ぐに彼らの元へと歩み寄った。
「ドアをちゃんと閉めろ、西門くん」二条校長はガタガタしたプラスチック製の折りたたみ椅子に座り、左手には薄っぺらいノートを持ってパタパタと扇ぎながら、右手でゆったりと支柱にマジックテープで貼り付けられたビニールシートの「ドア」を指さした。そこには子犬のイラストが描かれていた。
正義は彼を見つめ、次に頭上を見上げた。ビニールシートの隙間から透けて見えるグラウンドの景色。そしてこのいわゆる「教室」をぐるりと見渡す――地面に突き刺さった金属ポール数本で、大きな白いビニールシート(防水シート)が張られ、40人ほどが何とか収まる不規則な「テント」が形成されている。地面はむき出しの芝生で、どこかで誰かが落としたと思われるポテトチップスの空き袋が転がっている。彼は顔を覆い、指の間から悲痛な声を絞り出した。
「ドア!? それをドアだと!?飾りにもならねぇだろクソッタレ!」
二条永吉は、まるで正義の絶叫など聞こえていないかのようだった。ただノートを扇ぐ手だけは速くなり、哲学者のごとき深遠な疲労感を浮かべた。
「静かにしろ、西門君。青春は騒がしいものだが、教室には時として静寂が…必要だ。…特にこのような…暑さで人を殺しかねない、『人と自然が調和した特殊な教育環境』においてはな」
彼はどこからかポップアイスを取り出し、しゃぶり始めた。真面目な顔でデタラメを言う。
その瞬間、夜生花がいつの間か「壁」の近くに立っていた。地面から湧き出たかのように。彼女は巻かれた布ガムテープ(布テープ)を持ち、無言で防水シートの補強を始めた。
「見たか、西門君?」
二条が夜生花を指さした。
「これが学校の公共財産を愛護する心というものだ!テープ貼りまで手伝う!これが覚悟というものだ!お前も彼女、なんたらさんによく学べ!」彼の口調はカルト教祖のようだった。
正義は胸にモヤモヤとした怒りが充満し、吐き出すことも飲み込むこともできなかった。振り返ってみると、夜生花を除けば、小屋の中はぽつぽつと二十人にも満たない。軍師こと高橋賢人は小屋の端で、指で突いて開けた穴を覗き、何かを観察しているようだ。隅っこでは蛇妖こと右京恵が膝を抱えて座り込んでいた。彼女の周囲半径1メートルは、冷気をまとったかのような空白地帯だった。
正義がさらに見回すと、甘いもの食べているこの女子は…矢口虎子だっけ?あれ?地面で寝てるこの不良…昨日俺がバイクを奪ったヤツじゃないか!昨日は来てなかったのに…。はたまた一人の男子が、問題を解いている?この環境で勉強か?彼は小沢智、昨日名前聞いたぞ…根性据わってるな…。
どうやら、二条校長の昨日のレッスン1も、全くの無駄ではなかったようだ。少なくともそれぞれがクラスメイトについて少しは知ることができたのだ。
「他の奴らは?」
正義が思わず尋ねた。
「まさか家で教室が再建されるのを待ってるなんてことはないだろうな?今日は二日目だぜ!」
「青春とは、不確定性に満ちたものだ」
二条校長がノートで扇いだ熱風が舞い、たばこに火をつけた。深く一服して煙の輪を吐き出しながら言う。
「人生の境界線を探求しているのかもしれない、あるいは…迷子になったか……」
「てめぇさっきからずっと何ほざいてんだよ!」
正義は彼を振り返って叫んだ。
「何様だよ!哲学者気取りかよ!」
二条は立ち上がり、外に出ようとした。
「てめぇ…最初から目ざわりだったんだよ!」
正義は彼の襟首をつかんだ。
「ケンカ売ってんのか!このクソ野郎!」
二条校長も正義の襟をつかんだ。
「皆さんが元気で本当に良かったです……」
杏田先生がそっと「入口」を押しのけて、まずは上半身だけ、そして全身を「教室」の中へと入れてきた。
「昨日皆さんがどこへ行ったのかとても心配だったんです…みなさん無事で何よりです……」
皆の耳にまず巨大な爆音が届き、次に人々の叫び声が、地面が震動している……
ブオオオオオッッッッ!!!
二条校長は一瞬のうちに杏田先生を引き寄せ、自分の腕の中に抱えた。彼女の頭を片手でガードしつつ、パニックの引き金となった存在がついにその姿を現した!
ビニールシートが破られ、巨大な戦闘仕様バイクが突っ込んでくる!その上に乗っているのは人間か?……いや怪物だ!二つの頭に四本の腕!何なのか全く判別不能!
誰かの声が響いた。
「逃げろーッ!」
しかし、逃げる者などほとんどいなかった。皆、バイクが小屋を突っ切ったり衝突を繰り返すのをただ見つめていた。支柱は粉々に折れ、ビニールシートは原型を留めないほどに引き裂かれ、崩壊寸前の瀬戸際でさまよっていた……。あの殺人マシンは、まるでドン・キホーテよろしく、風車に向かって突撃するかのようなおかしな戦いを繰り広げていた。
「なんの音だ!うるせえな!」
あの不良が腰を上げた。リーゼントを後ろになでつけ、目をこするともう一度よく見た――それって俺のバイクじゃねーか!
燃料タンクの最後の一滴が搾り取られる寸前、バイクは……何もかもを投げうって、元の持ち主めがけ突進を始めた!最後の突撃!
十メートル!
五メートル!!
一メートル!!!
その場に固まった不良は身動きする様子はなく、思考が追い付かないと言おうか、遅すぎたのだ!バイクのタイヤはプリンターのように彼の顔に焦げた跡を刻み、不良は再び、自分のバイクに敗北を喫したのだった……。バイクはガス欠で停止し、その上にいた二人の乗員は破れた米袋のように地面に叩きつけられた。なんとそれは佐藤翔一と鈴木仁だったのか!
……
ドッサーーーン!!
最後の一撃となった一本の藁で砕け散る砂の城のように、風前の灯だった「仮設教室」は断末魔をあげ、全体が崩れ落ちた。千切れたビニールシート、折れた支柱、舞い上がる人工芝の破片や土埃が一塊の濃い雲となった。悲鳴や衝突音、金属が歪む耳障りな音響は、瞬く間に瓦礫の下へと押し込まれていった。
混乱の中、頑なに立ったままだった唯一の区画――夜生花が補強したあの「壁」だ。彼女は杭のようにそこに立ち、ビニールシートでできた簡素な屋根が彼女の肩をかすめ落ちていった。舞い上がった土埃が彼女の周りに立ち込めても、無表情は微動だにせず、まぶたすらほとんど動かさなかった。
一方、あの「分別ある」人々――高橋賢人が自分で開けた「観察用の穴」をグッと大きく引き裂いた瞬間に、小沢智、矢口虎子、右京恵、そして気づいた数人の生徒たちは、倒壊寸前に次々と外へ脱出していた。彼らは倒壊現場の外周に立ち、災害映画さながらの光景を青ざめた顔で見つめている。
土煙が立ち上る。崩れた小屋の下からは荒い息遣い、押し殺した呻き声、そして激しい咳払いが聞こえてくる。
「ゴホッ…ゴホッ…な…なんだよ…マジで…」鈴木仁の嗚咽が響く。
「ああもうダメだ…痛ぇ…ケツが…ケツが割れた気がする…」これは佐藤翔一の声だ。
「プハッ…ペッペッ!」二条校長はビニールシートの山から必死にもがいて上半身をこじ出した。顔は煤だらけ、見るからに高そうなスーツはあちこち穴だらけ、金髪には草の切れ端や泥がべったりと付き、あの薄い本は傍らに散らばっていた。無意識にタバコのケースを探り、押しつぶされていることに気づくと、本物の苦渋に満ちた表情を浮かべ、それを取り出して地面に置き嘆いた。
「最後の一箱が…ああ!」
「杏田先生!大丈夫か!?」
二条は何かを思い出し、狂ったように周囲のがれきをかき分け始めた。彼は咄嗟に杏田先生を守ろうと、彼女を引き寄せ、自分の腕でかばっていたのだ。
「うう…大…大丈夫です…校長先生…」
杏田先生の弱々しい声が彼の体の下から聞こえた。守られていた彼女は驚いたようだが、大事には至っていない様子だ。
二条はほっとしたが、すぐに隣から一陣の殺気を感じた。
「クソ野郎ッ!」
正義の声はかすれ、抑えきれない怒りと生存の震えが混ざっていた。彼は幸運にも秋葉と永吉のそばに倒れており、多少のがれきに埋もれていたが、重傷は負っていないようだった。頭にかぶさったビニールシートをはねのけ、目の色を変えて隣にいる災厄の張本人を睨んだ。「お前さんこの野郎!皆殺しにするところだったじゃねぇか!このクソみたいな場所は一体何なんだよ!?あの役立たずのバイクは…」彼はそのバイクが自分に関係していることに気づき、言葉を濁した。
二条校長は顔の煤をぬぐい、瞬間的な狼狽の後、独特の厚かましく鋭い眼差しを取り戻した。
「青春ってもんだぜ、西門君!驚きとスリルに満ちた思い出作りだ!」
彼は理屈をこねて言い逃れしようとした。
「見ろよ、みんな生きてて元気でさぁ…」
「元気なわけねぇだろ!」
正義は拳を振り上げたい衝動を抑えきれない。
「てめぇ、この…」
「ちょ、ちょっと待てー!……喧嘩してる場合か!見ろよこいつら…こいつが死にそうだっての!」
鈴木仁が泣き声混じりに叫んだ。彼は翔一と一緒に、押しつぶされている不良を引っ張り出そうとしていた。己の愛車に「恩を仇で返された」あのバイク乗りの不良は、自分のバイクに押しつぶされ、後頭部から地面に強打した。顔にはタイヤの跡がくっきりと刻まれ、生死の境をさまよっていた。
二条校長の顔色が一変した。冗談は一掃され、表情は真剣そのものになった。
「動かすなっ!」
彼は低く沈んだ声で命じたと同時に、自ら四つん這いになって不良少年の傍らへ素早く移動した。相手の首筋や呼吸を注意深くチェックしながら、声を張り上げる。
「夜生花!ケータイあるか?校医を呼べ!救急車だ!早く!まだ誰か出てきてない者はいないか?小沢!点呼!脱出できた奴を確認しろ!仁!外に出て賢人に伝えろ!野次馬をどかして救急車の通路を確保させろ!翔一、ボサッとしてるな!早くこい!こいつの体を安定させろ、二次被害を防ぐんだ!」
一連の明確で簡潔、疑念の余地もない指示が口から飛び出した。さっきまで号泣パフォーマンスをしていた校長や、意味不明なことを喋るおバカとは別人のようだった。突然の専門性と責任感に、内外の全員が呆然とした。
「Yo」夜生花の声が土煙を掻き分けた。彼女は瓦礫の端、わずかに持ち上がった「壁」の上にいつの間にか立っていた。手には古い折り畳み式のケータイ電話(本当に持ってるのか?)が。彼女は無表情で番号を押し、位置を告げ、状況を簡潔に説明した(「池典中学、グラウンドセンターサークル、建物崩壊、複数負傷、重傷者一名昏迷、救急要請」)。語調は説明書を読んでいるかのようだった。
名を呼ばれた翔一と仁は無意識に従った。小沢智は外で冷静に人数の確認を始め、高橋賢人は呆然とした生徒たちを指揮しスペースを確保させた。
「こいつ…どうなんだ?二条…校長?」正義もこの急変ぶりに呑まれ、一時的に怒りを抑えて、地べたの不良少年を心配そうに見つめた。
「脳震盪を起こしている確率は極めて高い」
二条は眉をひそめながら、相手の手首に指を当てた。
「相当危険な状態だ、こいつは……」
「夜生花!」
「救急車は9分42秒で到着予定」彼女が電話を切る。
緊迫した時間は更に長く感じられた。校医が簡易担架を携えて真っ先に駆けつけ、二条校長と共に細心の注意を払い不良少年を固定し搬送した。二条の額には細かい汗がにじみ、スーツの破れ目からは擦過傷の痕が覗いた。しかし、傷病者を扱う彼の動きは驚くほど手際が良く、一つ一つの手順が精密だった。
間もなく、救急車のけたたましいサイレンが遠くから聞こえてきた。
「よし!ここはプロに任せろ!」
二条校長は立ち上がり、担架に乗せられた不良少年を見送って、ようやく顔の緊張がわずかに解けた。振り返り、心配でいっぱいの秋葉、怒りと困惑でいっぱいの正義、泥だらけで慌てふためいた翔一と仁、相変わらず無表情の夜生花、そして周りに集まってきた――瓦礫の端で膝を抱えたままの恵を含む――安堵と動揺が入り混じったB組の面々を見渡した。
二条校長は深く息を吸い込んだ。衣服の埃をはらうことはせず、風に乱れる金髪(埃まみれの)を振りかざした。彼の視線は倒壊した「教室」の跡地に複雑に留まり、口元がかすかに自嘲的な笑みを浮かべたかと思うと、覚悟を決めたように背筋をピンと伸ばした。彼は軽く咳払いをし、高くはないがグラウンド全体に届くはっきりした声で言った。
「なあ、B組の奴ら!」
全員が顔を上げた。
「教室は……潰れた。潰れたぞ」
彼は一呼吸置いた。途方もなく不条理で仕方のない事実を述べているようだった。
「Lesson1の終わり方は、少々派手だったな。だからLesson2のテーマは……」
彼の鋭い目が皆を、特に正義と翔一と仁を貫いた。
「『さっさとゴミかき集めやがれ』だ!そして我らB組のこれからの家はなぁ……」二条校長は青空を見上げ、次に遠くそびえる校舎をチラリと見た(そこでは他クラスの生徒が窓にへばりついて見物している)。
「ただの一時避難所さ……」
ニヤリと笑い白い歯を見せた。開き直った豪快さがそこにあふれている。彼の指がピンと伸びて、遥か彼方を指し示した――
「学校図書館――噂の『禁断の書庫』だ!俺すら入れねぇ場所だぜ!」
……
「ようやく目を覚ましましたか……?」
四打の鐘の音が響き渡る場所に立つ、一人の老人の声だ。
「東の国からの少年よ……木村千風」
「オレ……オレのコト……天国に……?」
「然り(しかり)、我は聖ペテロ(聖ペテロ)よ。不幸な少年よ」
「そうじゃないって言ってもくれよ!マンガと違うじゃねーかこのクソッタレ!!!」
滴――――――
執刀医が不良――千風の直線化した心電図を確認する。
「急げ!AED(自動体外式除細動器)を!」
ビリビリビリーン!
「帰らせろよ!てめぇら!」
彼は聖ペテロに向かって叫んだ。すると同時に、手術台の千風がピンと飛び起きた!
「帰らせろよ!クソッタレ共ォ――ーッッッ!!」
医師たちは腰を抜かし、AEDを見ると、どういうわけかどこの馬の骨か知らぬ医師がコンセントに直接差し込んでしまっていたのだ……
ドッカーンッ!
「早く目を覚ませ!少年!」