新生春咲高校平和部、始動!①
いちごside
すぐに入部が出来ないと知り驚きましたが、ついに、春咲高校平和部に正式に入部出来る日がやって来ました。
これまでの二週間、部活体験には10名強の方が来られていましたが、私とこーくんの他にも新入部員さんはいらっしゃるのでしょうか?
楽しみですっ。
そんな思いを胸に、私はこーくんと一緒に放課後、平和部の部室へ向かいました。
部室に着きました。
しかし……
「あの、こーくん、この声……」
「うん……何か言い合ってる感じがするね」
そうなのです。
部室の中から、言い争っているような強い声が聞こえてきたのです。
つまり中には魁星先輩以外の方がいらっしゃるということで……
知らない方の前では緊張しますし、何かお怪我をされていたら大変です。
思い切って中に入ってみましょう。
そして私は、バーン!と部室のドアを開けました。
そして大きな声で、
「だ、大丈夫ですか!?喧嘩はやめてくださいっ!」
と仲裁に入っ、て……
そこで私は、目の前の光景に言葉を忘れてしまいます。
魁星先輩が、私と同じクラスの女の子、梅宮梓さんに胸ぐらを掴まれていたからです。
梅宮さんは髪を左耳の後ろで編み込みをされていて、ピアスも耳に唇に舌とたくさんされていて、オシャレ好きな印象があります。
そして誠に勝手ながら、顎まで下げられている黒マスクがチャームポイントだと、私は思っています。
また梅宮さんは学校に登校して来られるのが週に二、三日ほどで、中々お見かけしないというそんな方ですが……
「!?……!?」
驚きのあまり声が出せないでいると、梅宮さんに
「何見てんだよああ!?」
と言われ睨まれてしまいました。
「すすすすみませ……っ」
「おい、うちの後輩にあたるな」
「はあ〜?ならあたしだって後輩なんだがなぁ!?」
「俺の後輩にこんな礼儀知らずな奴はいない」
その魁星先輩の言葉にまた梅宮さんが反応して、でも胸ぐらを掴むのをやめられたかと思うと、今度は近くにあった椅子を手で持ち上げてしまわれて。
梅宮さん……!?
魁星先輩に当ててしまうつもりなのでしょうか。
それは魁星先輩にとっても、梅宮さんにとっても、私にとっても良くないことです。
だからか自然と、言葉が出ていて。
「け、喧嘩はやめてくださいっ……危ないです!」
私のか細い声は辛うじてお二人に届いたようで、ピタ、と動きが止まるものの。
それはほんの一瞬のことで、また空中にある椅子が動き出してしまって。
「あああの、うううめみやさ……っ」
自分では止められないと完全に怖気付いて諦めてしまった私を見て、こーくんが言ってくださいました。
「ちょーっと梅宮さ〜ん、やめてもらえない?ほら、いちご怖がってるし、泣きそうだし、普通に危ないし」
「っ……航太……」
こう、た……?
名前で呼ばれています。
魁星先輩だけでなく、こーくんは梅宮さんともお知り合いで……?
それに梅宮さん、何故かお顔が赤くなられて……
深まる謎に更に追い打ちをかけるかのように、梅宮さんはこーくんの元へズカズカとやってこられて。
「航太!アタシと付き合って!」
「ごめん」
この間約2秒。
こーくんは、梅宮さんの突然の告白に間髪入れずに返事をされました。
ここここーくん!?
そんなに早く……って、ハッ!
私が恋をしたことが無いから分からないだけで、あれくらいの速さで返事をするのが普通なのでしょうか?
私が考え込んでいると、こーくんが。
「えっと、いちご?何か誤解してそうだけど、この人が異常なんだよ?今までも何回も告白されてるし俺の気持ちに変わりはないからすぐ断っただけで」
「あ、そ、そうなんで……」
「誰、あんた」
今気がついたかのように、私が誰かと尋ねられる梅宮さん。
同じクラスなのに、認知されていなかったようです!?
残念です……というかそれよりも、
し、視線が鋭い……っ
それでも怯えずにきちんと自己紹介をしようとしていると。
「ちょっと梅宮さん、この子は関係ないでしょ。平和部の子だよ。だからそんな怖い顔で彼女を見ないで」
こーくんが珍しく笑顔をなくして真剣な顔で、そう言って下さいました。
梅宮さんはそんなこーくんにとても驚かれたご様子で、でもその後すぐに下を向いて悔しそうな顔をされて。
ギュッと力が入った拳は、震えているように見えました。
かと思えば、顔をバッと上げて私に
「あんた、この部活に入るの?」
「へっ!?あ、は、はい……っ」
「ならアタシも入る。どうせどこの部活にも入らないつもりだったからな。いいだろ?航太を取られたくないからダメなんて言うなよ」
と仰って。
梅宮さんが、この部活に……?
それは……
「とっても、嬉しいですっ!」
「は……はあ?」
「魁星先輩、ついに平和部は4人になりましたよ!やりましたねっ」
「そ、そうだが……いやそうじゃない。俺はこいつの入部を……」
「それに梅宮さんは、こーくんのことがとてもお好きでいらっしゃるのですよねっ」
「!?な、なんでお前が知って……」
一目瞭然ですっ。
平和部に入る決断をされたのは、私にこーくんを取られるかもしれないとお思いだからですよね!
そのような可愛らしいことを思われていることに気がつけば、梅宮さんのことを怖いと思う気持ちは一瞬でどこかへ行ってしまいましたっ。
「ご安心なさって下さい。私はこーくんを独り占めしたりなんてしませんっ。でもこーくんのことは私も大好きですっ」
「はあ!?てめぇ……っ」
「え、いいいちご!?それって……」
「はい!こーくんも梅宮さんも魁星先輩も、おばあちゃんもおじいちゃんも、皆さん大好きですっ」
そして流れる沈黙。
あ……あれ?
私、何か変なことを……
ってまさか、私に好きと言われることが不快で……?
「すすすすみませんっ、不快ですよね、私が大好きとか……」
「い、いやそうじゃない……というかツッコミどころが多い……なぁ航太、あの子が理由だろ。アタシを断り続けるの。アタシが言える立場じゃないのは分かってんだけど、その、同情する」
「俺も今知ったよ、いちごがここまで天然で鈍感だとは……」
「??」
私が原因ではないのなら、お二人はどうしてそんな難しい顔をされているのですか?
そう思い魁星先輩の方をチラッと見てみますが、目が合った途端フイッと顔を逸らされてしまいました。
ほ、ほんとうに、私はどうすれば……っ
ため息をつくこーくんと梅宮さん、この状況を理解出来ていないことに不安になる私。
その様子に呆れたのか、魁星先輩は頭に手をやって苦い顔をされた後、「っお前らは部活をする気がないのか!?」と大きな声で仰って。
そ、そうです!
待ちに待った部活が始まるのですから、時間を無駄にしてはいけません……っ
やっと本来の目的を思い出した私は、こーくんと梅宮さんのため息の理由を尋ねようとしていたことを忘れ、ご依頼箱に向かう気満々になりました。
「んーと、まず梅宮?だったか?お前は入部届け出てないから今日はダメだ」
「ああ!?てめぇもっぺん言って……」
「分かった、分かったから大人しくしてろ。はぁ、こんなはずじゃ……疲れる……」
無事?梅宮さんも一緒に部活動が出来るようになったので、各々バラバラの気持ちを胸に更衣室へ向かいました。