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舞い降りる桜③



いちごside




なんと、そこにはこーくんの姿がありました。

どうやら私を校舎巡りに誘ってくださっているようですが、私は予想外の出来事に驚いて少しの間フリーズしてしまいます。

そしてハッとし、他クラスの教室には入れないため出入口で待ってくださっているこーくんの元へ急ぎます。




「そのお誘いはとても嬉しいのですが、よろしいのですか?こーくんには千堂くんがいらっしゃいますし、私なんかと……」




人気者のこーくんには、きっと千堂くん以外にもたくさんのお友達がいらっしゃるはずです。

それなのに、私と……?

嬉しい半面、こーくんの意図が理解できません。

私が下を向いていると、こーくんは私の顔を覗き込んで仰いました。




「私なんかとか言ったらだめだよ?俺は、いちごがいいと思ったから誘ったんだ。それともいちごは、俺と回るの嫌?」




こーくんは不安そうに首を傾げて尋ねて来られました。

だから私は全力で否定します。




「そっ、そんなわけありません!」

「なら行こうよ!それに俺、いちごにお願いがあってさ」

「?は、はい……」




お願いとは、何なのでしょうか?







校舎は5階建てで、2階にある私たちの教室から上を先に回ることにしました。

図書室にコンピュータルームと、たくさんの教室を見て回り、私たちは4階へとやってきたのですが……

こーくんは何やら、目的の場所があるご様子で。

先程からチラチラと辺りを気にしていらっしゃいます。




「こーくん、何か……」

「あっ、あった!」




思い切って尋ねようとしたその時、こーくんはそう声を上げてある教室を指さしました。

その教室のスライドドアには、「春咲高校平和部」とマジックペンの太いほうで書かれた木の看板がかけてありました。




「春咲高校、平和部……?」




初めて聞く部活動の名前です。

一体この部活動では何をなさっているのでしょう?

そしてこーくんは、どうしてこちらへ……




と不思議に思っていると、こーくんは教室のドアをガラガラっと開けられて。

そして、




「失礼しま〜す!」




と元気よくご挨拶。




「ここここーくん!?勝手に入ってしまわれては……っ」

「来たか」




慌ててこーくんを止めようとした時、中からどなたかの声が聞こえてきました。

初めてお聞きする声です。

人見知りのため、ドアに隠れて少しだけ顔を覗かせると。

そこには、金髪な上ピアスを開けられている先輩らしき方が、ドアから見て真正面の窓に寄りかかっておられました。




もしかして、これが所謂不良というものに当てはまる方でしょうか!?




その鋭い視線はまるで、獲物を見つけた時のライオンの様です。

それなのにこーくんは堂々と教室に入っていかれるので、私はどうすれば良いのか分からず、その場から動けずにいると。

そのライオンさんがこちらに一歩一歩と近づいて来られるのです。




どどどどうしましょう!?

私今、ライオンさんの前で怪我をして動けずにいるウサギさんも同然なのでは……!?




ピンチの私を助けてくれるのは、やはりこーくんで。




「あれ、ちょっと待ってくださいよ魁星先輩!俺のことは無視ですか!?」




こーくんのその声に、ライオンさんはピタッと足を止めて方向転換し、こーくんの元へ。

こーくんは動物に例えると、イヌさん……いえ、身長が高いのでキリンさん?……

って、ハッ!

それではどちらにしろライオさんに食べられてしまいます!

わわわっ、こーくん、逃げてください……っ!




と、ギュッと目を閉じると。




「ああ、いたのか。お前デカいから壁かと……なぁ、前よりデカくなってないか?」

「あの時からだと確かに2センチくらい……って、壁ってなんですか!俺失礼しますって言いましたよね!?」




というお二人の会話が聞こえてきました。

どうやらお二人はお知り合いのようです。

そしてライオンさんも、あまり怖い人では無さそう……?




そう思いながら会話を続けるお二人を見ていると、出ていくタイミングを逃してしまいました。

こーくんには色々とお聞きしたいことがあるので、早く出ていくべきなのですが……

よし、怖がっていては成長できません!

私は、変わるんです!




そう決意し、膝を伸ばして立ち上がります。

そして深く息を吐いて、吸って……!




「こ、こーく……っ」

「あ!そういえばいちご!……って、そこで待っててくれたんだ!ありがとう、そしてごめん!」

「あ……い、いえ、全然大丈夫ですっ」




こーくんが私のことを思い出してくれたのは良かったのですが、私の声は届いていなかったみたいです。

安心反面、残念反面と言いますか……

なんだか、複雑な気持ちです。

って、今はそれよりもライオンさんにご挨拶です!




「あ、あの!」

「……?」

「は、初めまして!私、新一年生の片倉いちごと申します!不束者ですが、よ、よ、よろしくお願い致します……っ!」




結婚のご挨拶のようになってはしまいましたが、大きな声で挨拶が出来た……と、思います!

しかし、返ってきたのは思いもよらぬ反応で。




「……なんだこの騒がしいの」

「!?」




騒がしいと、言われてしまいました……っ

やはり私にお友達作りは向いていません……




そうして凹んでしまった私に気がついたこーくんは、ライオンさんに……




「ちょっと魁星先輩!いちごは人見知りなのに今頑張って挨拶したんですよ!?」




こーくん……




「それを騒がしいだなんて……せっかくここまで連れてきてあげたのに、帰りますよ!?」

「はあ?……チッ」




もしかしなくとも今のは舌打ちでしょうか!?

初めて聞きました……!

どうやら、あまり良いものでは無さそうです……

それと私を連れてきてあげた、とはどういうことでしょう?

まさかライオンさんは、私に用があって……?

とライオンさんの方を見ますと、バチッと目が合ってしまい……

そのままライオンさんはズンズンとこちらへやってこられて。




「なあ」

「ひゃいいい……っ」

「お前、平和部(うち)に入ってくんね?」

「……へ?」




状況が飲み込めない私を見兼ねたライオンさんは、長机で向かい合って座るように、席まで案内して下さいました。

そして、この「春咲高校平和部」についての説明が始まりました。




「あ〜……まず、俺はこの部活の部長をしてる3年の九十九魁星だ。さっきは悪かったな」

「あっ、い、いえ!」




やはり、悪い方ではないようです。

……不機嫌オーラは、漂っていますが……




「……この部活では、春咲町の人やこの学校の生徒から依頼を受けて、それを完了するっていう……まぁ、人助けみたいなことをしてる。そんで人を笑顔にするから、平和部」

「と、とっても素敵な部活動、ですね……!」




うう〜……やはり声が小さくなってしまいます……

と、それよりも、そのような部活動の部長を、九十九先輩が……

人は見かけによらないと言いますが、どうやらそのようです。




九十九先輩は、私の言葉に少し照れくさそうにされましたが、すぐ暗い表情になってしまわれて。




「……そう、なんだが。今、部員が俺一人しかいないんだ。去年は先輩が2人いたんだが、1年が入らなくて……そのまま先輩たちは卒業しちまったから、今年こそ新しい部員を手に入れないと、この部活は今年で終わりになる……」

「そんな……」

「地域のおばちゃんとかさ、俺たちに助けられてるからって、すげぇ良くしてくれんだ。俺は春咲で生まれ育ったのもあって、それがすげぇ嬉しくてさ。だからこの部活が無くなるのは、なんとしてでも防ぎたいんだ」




そんな事情があったなんて……

九十九先輩を怖がっていた数分前の自分が、恥ずかしくなりました。




「聞いてると思うが、航太はこの部活に入ってくれることになってる」

「えっ、そうなんですか?」

「お前……言ってなかったのかよ」

「いやぁ、ここに来てからでいいと思いまして」




そんなお二人のやり取りを見て、とある疑問を抱いていたのを思い出しました。




「あ、あの、お二人はお知り合いなんですか?」

「あ?ああ……って、航太お前これもか……」

「あはは……すいません」




こーくんは後頭部に手を当てながら苦笑い。




こーくんは九十九先輩に大して敬語を使っておられますが、そうでなくとも違和感が無さそうだと思えるほど、お二人は親しい仲のように見受けられます。

気になるお二人の関係は、九十九先輩によってすぐ明かされました。




「航太とは中学で部活が同じだったんだ」

「そうだったんですか!?」




ということは、千堂くんとも……

小さな町だと、こういうことがあるんですね……!




「ああ。だから俺が中学卒業する時に航太と連絡先交換して、数ヶ月前に話をして入ってもらうことになった。でも航太だけだと部員が足りない。他の奴にも声はかけたけど、やっぱり他の部活に入りたいとかバイトがあるとかで無理って断られた。だから航太に誰かいないかって聞いてはいたんだが、まさか本当に連れてきてくれるとはな」

「ごめんねいちご、勝手に……」

「いえっ、全然大丈夫ですよっ」




そう、今日ここに来たことは何も問題はありません。

しかし……




「で、えーと……片倉、だったか。片倉はこの部活に入部すること、どう思う?」

「わ、私、は……」



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