表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

舞い降りる桜②



いちごside




「え……?その声はまさか……こーくん?」




その言葉に、彼は太陽のように眩しい笑顔を浮かべて言いました。




「うん!そう、俺!住岡航太!」

「ええええ!」




こーくんこと住岡航太くんは、幼稚園からの幼なじみです。

明るくて優しい人気者のこーくんは、口下手な私とも仲良くしてくれて、私の同年代で唯一のお友達。

中学校はひとつ隣の学校になってしまい、しばらく会えていませんでしたが……




すごく、かっこよくなられています!

声変わりもされて一瞬誰か分かりませんでしたが、あの温かい眼差しと声で、すぐにこーくんだと分かりました。

身長も、私より30センチほど高いでしょうか?

私が150センチだから、こーくんは……




「180センチ!?」

「ん?ああ、身長のこと?182あるよ」




ハッ、声に出てしまっていました……




「すみませんっ」

「え?なんで謝るの?」

「あ……えっと……」

「まっとりあえず、その敬語(話し方)久しぶりだ!」

「あ……確かにそうですね」




この話し方は確か、私が幼稚園生の時に身についたものです。

当時、祖父母がご近所さんと話す時に敬語を使われていて、それを真似して……




『おおきなだいこん、ありがとうございますっ』




と言ってみたら、皆さんがすごい!と言って褒めて下さったので……

まだ幼かった私はそれがとても嬉しくて、気づけばずっと、敬語で話すようになっていたのです。

所々話し方がおかしいのは分かっていますが、癖というものは一度ついたら直すのが難しく……

今となってはもう、諦めてしまいました。




私としてはこれが普通なのですが、やはり、世間的には変に見られたりするのでしょうか……?

余計にお友達作りは難航しそうです。




私が黙っていると、こーくんは私の顔を覗き込んできました。




「困った顔して、どうしたの?高校生活不安かもだけど、俺もいるし!大丈夫だよ!」

「っこーくん……」




相変わらずの優しさに涙が出そうになっていると、ここから5メートルほど先の校門から、こーくんの名前を呼ぶ声が聞こえました。




「おーい、航太〜」

「おっ、大河!」




大河……さん?

どなたでしょう……って、こちらに向かって来られています!

私、知らない方は……っ




逃げ場がない私があたふたしていると、こーくんが私の前にサッと、立って下さいました。




!こーくん……っ




こーくんはそれが普通のように、お友達の方と会話を続けます。




「お互い入学おめでとう」

「ああ、おめでとう。それで……その子は?」




こーくんが私の前に立って下さっても、私が見えないわけではなく。

お友達の方は、こーくんの後ろから顔を覗かせる私を、じーっと見つめてきました。




「ああ、この子は……」

「か、片倉、いちごと、申します……っ」

「!」




きっと私が黙っていれば、こーくんが私のことを説明して下さったと思います。

しかし、それではいけません。

自分の力でお友達を作るためには、甘えてなんていられないですから!

……やっぱり少し、いいえだいぶ、勇気がいりますが……っ




自分の口で答えた私に、こーくんも驚かれているようで。

こーくん、ありがとうございます。

でも私、一人で頑張ってみます!




お友達の方は、パチリと瞬きをしてから仰りました。




「へぇ、いちごってゆーんだ。名前かわいいね」

「!あ、ありがとう、ございます……っ」

「ははっ、声ちっさ」




うっ……

痛いところをつかれてしまいました……




これも改善しなければ……と思っていると、お友達の方も自己紹介をして下さいました。




「俺は千堂大河。航太とは中学校で部活が一緒だったんだ」

「部活、ですか……?」




何の部活でしょう?とこーくんに目で訴えると。




「ああ、バスケ部だよ」

「バスケットボールですか!?あの、ボールを自由自在に扱って、ゴールへ入れるスポーツですよねっ。こーくんすごいですっ!」

「そんな大袈裟な、普通だよ」

「いいえ、私は極度の運動音痴なもので、スポーツが出来る方がとても輝いて見えるのですっ」




確かにこーくんは、小学校の時も足が速いことで運動会の時は頼りにされていました。

そんなこーくんがバスケットボールをする姿、機会があればいつか拝見させていただきたいですっ。




「あの……ええと、スリーポイントシュート?などもなさるのですか!?」

「うん」

「わっ、すごいです!尊敬です!」

「そんなに言われると照れるなぁ」




高校では体育の授業を今まで以上に頑張って、私もこーくんみたいにバスケットボールが出来るようになるでしょうか?




……って、ハッ!

大河さんもいらっしゃることを忘れてしまっていました!

ずっと2人だけでお話していたので、仲間はずれにされたと思われたでしょうか?




私が恐る恐る大河さんの顔色を窺うと、大河さんは驚かれたような顔で私を見ていました。




どうされたのでしょう……?




「仲良いやつの前では、そんなに可愛く笑うんだな」

「え……え!?かかかかわい……!?」




そんなこと、おばあちゃんやおじいちゃん、ご近所さん以外で初めて言われました!

嬉しいけれど、恥ずかしくてそれどころではありません……っ




顔を赤くして動揺する私を見て、こーくんは真面目なお顔で千堂くんに注意?をされました。




「大河、そんなにいちごのことからかわないで」

「わーかってるよ。そんなことよりさ」

「ちょっ、そんなことよりって……」

「時間、結構ヤバくない?」

「あっ、そうです!このままだと遅れてしまいますね!お二人共行きましょう!」




あまり良くない雰囲気になりかけてしまっていましたが、時間が無いことで助かりました。

遅れてしまいそうになって良かったかも……なんて、いけませんね。




「あっ、うん」

「……」

「……ん、なに?そんなにじーっと見てきて」

「航太お前、意外と分かりやすいな。今まで分かりにくいと思ってたけど、そういうことか」

「なっ、こういうの隠したくても隠せないんだよ〜、仕方ないだろ〜?」




急ぎ足で向かう私の後ろで、お二人がそんな会話をされていたことに、私は気が付きませんでした。







入学式は何事もなく、無事に終えることが出来ました。

保護者席にいらしていたおばあちゃんとおじいちゃんには、少しながらいい姿を見せれたのではと思います。

しかし、私は今、とある問題に直面しています。

私たち新入生は今、入学式が行われた体育館から各教室へ戻り、自由時間となっています。

もう家に帰るなり教室でお友達と話すなり校舎を回るなり、大抵のことが許されているのですが、教室に残られている方が多いようです。

そして私は3組になったので、1年3組の教室に戻ってきたのですが……

お話出来る方がいません!

こーくんや千堂くんは2組で別のクラスになってしまいましたし……

クラスの方々も先程入学したのは私と同じはずなのに、もう既に仲良しグループが出来ており、その方たちと会話を楽しまれています。

それなのに私は何をしているのでしょう……?

体を小さくして机をじーっと見つめて……中学校の時と何も変わりありません。

高校では、あの頃のようにはなりたくないと思っているのに……っ




やっぱり勇気が出なくて、もうお友達は諦めて帰ろうかとバッグを持ち席を立ち上がった時。

教室の出入口から、聞き覚えのある声が私を呼んだのです。




「いちご〜!今から一緒に学校回らない?」

「こーくん!?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ