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魔法生活

そして水龍の件だ。

「フォクシー村の水龍討伐、行くだろ?」

「どうしようっかなー。その距離だと日帰りってわけにはいかないでしょう?」

「まあ、片道1日、討伐に1日、で最低三日だな」

「報酬次第かな」

俺としては、是非ともサーラに来て欲しい。

いざという時に、火力の大きい魔法士が一人いるのは、すごく心強い。それに・・・街にサーラを置いて行って、その間に何処かの馬の骨みたいなやつがサーラにちょっかいを出すかもしれねえ。

サーラは、黙っていれば可憐な美少女魔法士だからな。

今だって、店の中の男どもが、こっちをチラチラ見てるのがわかる。

サーラは、そんな男どもに尻尾を振ってついて行くようなやつじゃないけど、もしもってこともある。

俺の目の届く範囲に置いておきたい。

報酬の件は、アデルモに相談するか・・・。



日が暮れて、私はオステリア・ライモンドを後にする。

エールを二杯と、チキンとパスタ。満腹だ。


今日もいい一日だった。


なんか、昼寝をしていた時に、おかしな夢を見た気もするけど・・・。


ま、いいか。


ところで、サンテレナの街には公衆浴場があるよ。

夢で見る二ホンという国では、毎晩、自分の家でお風呂に入っていたけれど、こっちの世界では、さすがにそういうわけにはいかない。

でも、公衆浴場はわりとある。

普通の雇われ職人クラスの人達も普通に通える公衆浴場だよ。大体、週に2、3回くらい行くっていうのが普通かな。

冒険者は、魔物討伐で汚れることも多いし、仕事に出た日は公衆浴場で体を洗うのが普通っていう人も多いかな。

大体、日暮れ前に行って、その後、夕飯とかってパターンだね。


でも、私は・・・。


猫耳がついてるし、尻尾もあるから・・・。

公衆浴場に行くわけにはいかない。


普段から、長いスカートで尻尾を隠しているし、布の帽子で耳も隠してる。

冒険者ギルドの登録をした時、それからゴブリン討伐の時にジャンに付けられて耳を見られた時、その二回しか見られていないと思う。

ギルドの何人か、それとジャン、アデルモも知ってるらしい。

獣人、というだけで差別される国だから、わざわざ見せびらかす必要は無い。


なんでも、公衆浴場では、素っ裸になるわけではないみたいだけどね。

湯浴み着っていうのがあるらしく、薄手のバスローブみたいなのを着てるのが普通だってことらしい。

とはいえ・・・やっぱり尻尾バレしそうで怖いよね。


そういうわけで、私が今夜泊るのはシャワールーム付きの宿屋です。


サンテレナの街で唯一、各部屋にシャワーが付いている宿屋だよ。

部屋は広くないのだけどね。


冒険者には女性もいる。

多くは無いけど、結構いる。

というのも、魔法が使えるからだ。魔法が使えるということは、戦闘において男女差を埋めることにもなる。マジックバッグは筋力に頼らなくても回収したものを運べるし、絶対的な差はかなり小さくなると言ってもいい。

ここは、そんな女性の冒険者のための宿だ。

 

私はここの常連なので、宿泊料を払うとキーを受け取る。

私は、キーの番号も見ないで階段に向かう。

3階の一番奥の部屋。私の、いつもの、部屋。

鍵を開け、ベッドにマジックバッグを置くと、着ているものをパッパッと脱ぐ。


黒の布の帽子。

うん、これはまだ洗わなくて大丈夫。

黒のワンピース。長めのスカートは、どうしても裾を擦るから汚れてしまう。まだ目立たないけど・・・仕方ない、洗うか。

下着類は洗濯だね。


洗濯は魔道具を使う。


マジックバッグから大きなタライのようなものを取り出す。

それに洗濯物を入れてシャワールームへ入る。

タライに水を入れて、優しく手洗いするよ。


え?何が魔導具なのかって?


このタライは、汚れが浮かび上がるように出来ているんだ。

つまり、洗剤要らずのタライってことだね。


え?

それだけだよ。

 

自動で洗濯?ボタン一つで乾燥まで?


いや、なにその魔法。便利すぎる!

二ホンの夢では、そういう洗濯機を見たことあるけど・・・。

まあ、こっちの世界では洗剤要らずのタライくらいだねえ・・・。


洗い終わったら、軽く絞ってハンガーで吊るす。ポタポタと水が滴ってる。

「エアシュート!」

突風魔法で水を切る。

これをハンガーから落とさずに出来るようになるのに、どれくらいの練習をしただろう。

懐かしいな。まだお父さんもお母さんも生きていた頃。

洗濯の手伝いに魔法を使い始めた頃・・・。お母さんは、洗濯物をエアシュートで乾かすのが得意だった・・・。


エアシュートで、水は切れるけど、完全に乾くわけじゃない。

ヒートブロアーっていう魔法で温風を当てることも出来るけど、この季節、部屋の中に干しておけば、明日の朝までには乾くでしょ。


さて、洗濯も終わったからシャワーを浴びましょう。


え?


洗濯は裸でするものだよ。


どうせ誰も見てないのだし。

季節は夏だし、問題ないよ。


シャワーを出す。

ちなみにシャワーからは水しか出ない。


でも、大丈夫。


このシャワーは、シャワールーム内の天井近くにある石桶に貯めてある水を、そこから金属の筒を通して開け閉めできるシャワーヘッドに繋がっている。なので、石桶の中に小さなファイヤーボールを沈めれば適度な熱さのお湯になる。


魔法が使えない人には、ロビーで魔道具の湯沸かし石を売ってるよ。

けど、ここに泊まるのはほとんど冒険者だから。

女性冒険者で魔法が使えないなんて、かなりのレアケースだから、誰も買わないよ。


「ファイヤーボール!」

ピンポン玉サイズのファイヤーボール。

数分でお湯が沸く。

その間に、髪をブラッシング。

シャワーの前にブラッシング?って思うかもしれないけど、ここは異世界。シャンプーもトリートメントも無いのだ。ブラッシングして大まかな汚れを落としておくんだ。


タイミングを見計らって、シャワーを出すよ。

うん。いい感じ。


お湯の量が限られているので、ざっと頭からお湯をかける。

まずは、髪の毛から洗う。お湯だけで洗っていくよ。ブラッシングしてあるから、さっとお湯が髪を撫でていく。

手で髪を梳きながら洗い上げる。私の髪は腰まであるので、手早く・・・。

それから顔を洗う。お湯の残りが少ないので、手桶にお湯を貯めるよ。


お湯が無くなったので、石桶に水を入れる。

「アクアボール!」

魔法で水を出すよ。


うん、この宿屋、シャワールームに配管は通ってない。

最初の水はサービスで汲んでおいてくれるけど、その後は自分で用意するしかないよ。主に魔法だね。

一応、呼べば水を持ってきてくれるサービスはあるけど、水を出す魔法は基礎だからね。女性冒険者で水を出せないなんてことは・・・。


ファイヤーボールを沈めて、お湯が沸くのを待つ間に顔を洗う。

手桶からお湯を掬い、やさしく洗っていく。ゴシゴシすると肌が痛むから。石鹸なしなので、気を付けてそっと流していく。


さて、お湯が沸いたから、次は体を洗う・・・んだけど、私は背な毛があるから・・・。

大体、背中の真ん中あたりから尻尾にかけて虎猫柄の毛が生えているのです。それはちょうどお尻の上までくらい。

髪の毛を洗うのと同じ感じかな。

ブラッシング、お湯洗い。

それから全身を流して完了。


うん、石鹸は使わない。

保湿剤も手に入らないし、必要以上に皮脂を落とすと肌荒れするから・・・。


さて。

柔らかタオルの出番。


これだけは大金をはたいて買った。

すっごく肌触りがよくて、水をすぐに吸ってくれる柔らかバスタオル。

テリー織りになっている。つまり、タオル地。これが普通には売ってなくて・・・。貴族しか使っていない高級品なんだよ。

すっと水を吸ってくれて、肌触りがいい。擦るようにしなくてもいいから肌や神にもいいんだよ。


タオルもハンガーにかけ、私はベッドに腰掛ける。

外は、もう暗い。

窓から眺める街には、所々に魔道具による街灯が灯されている。

うん、この街は、夜も営業している店があるよ。とはいえ、遅くても9時か10時には終わるけどね。


髪が乾くまで、ぼうっと街を眺めて過ごした。


気が付くと、うとうとしていた。

明日は・・・どうして過ごそうか・・・。


水龍討伐・・・。

往復3日間。

途中のテント泊がなあ・・・。シャワー無しになるんだよねえ。報酬よりも、むしろそっちのが気になったり・・・。

それに、どうしても長い間、一緒にいることになる、他の冒険者たちに、私が獣人だってバレやすくなる。

冒険者は、普通の人達よりも差別は少ないけど・・・。

あんまり知られたくもないからね。


うーん、やっぱり報酬次第かなあ・・・。


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