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泥ゾンビ

(ノルベルト視点になります)


サーラ様はショックを受けたようでした。

無理もない。

サーラ様の故郷であるイブレア村でのことです。

泥ゾンビが人為的に作られていたこと。

何者かが、それも複数の人間が悪意を持って何かをしている。

得体のしれない目的のために、魔素を悪用している。


そして、まだ尻尾さえ掴めない悪人達は、さらなる殺戮計画を進めているかもしれないのです。


「サーラ様、この度の魔道具、ゾンビを作り出す装置については、高度の魔法技術と多額の研究費、材料費が注ぎ込まれたと思っています。これを破壊、回収できたことは、少なからず彼らにとって打撃となったはずです」


私の言葉はあまり慰めにはならなかったようです。

ベアトリーチェ様は、少し困った顔で私を見ました。


「サーラ、予定ではイブレア村の調査は明日までだった。しかし、ここには壊れた魔道具がある。あれを洞窟内に置きっぱなしには出来ない。既に分解できた部品は回収してきているが、明日からは本格的に分解して回収することになる。オルランドとアデルモには、それをやってもらおうと思う」

「そうだね・・・」

サーラ様は、何を言われているのかわからないご様子でした。

「サーラと私は、周囲の探索だ。敵は近くに潜伏している可能性が高い。洞窟内で作業しているアデルモとオルランドが襲われる危険だってある。警戒しつつやつらの痕跡を探す。あれだけの魔道具だ。簡単に奴らも諦めたりはしないと思う」

「わかった」

「それと・・・もう一つ困った問題がある」

「困った問題?」

「グリフォンの件だ」


グリフォンを目撃したのはベアトリーチェ様だけでした。

ですので、ジャンニ様も私も半信半疑ではありました。


「万が一、あれに襲われたら勝ち目は万に一つもない」

ベアトリーチェ様は昼間も何かに怯えるような仕草をされていました。

何か、恐ろしいものを見たことは確かなのでしょう。


「グリフォンは神話の魔獣だ。天使フラヴィアと共にあったとされている」

そこでベアトリーチェ様はサーラ様の顔をじっと見ました。

「私はこれまで、教会の絵はただの神話、昔話だと思っていた。けれど、実在していた」

ベアトリーチェ様は少し震えているようにも見えました。

「サーラは・・・グリフォンを見ていないのか?」

サーラ様は首を横に振ります。

「ベアちゃん、ごめん。私、覚えてないの。ベアちゃんが死んじゃった、と思った後、あの空き家で目が覚めるまで、何も。グリフォンがいたかどうか、わからない」

「そうか・・・いや、そうだったとしても同じことだな・・・神話ではグリフォンはクルタスを滅びから救ったとされている。蔓延る魔物を撃ち滅ぼした、と。そしてフラヴィアは王族の始祖である、と。グリフォンはフラヴィア亡き後も王族とともにある、と」

「うん、そうだね。ここの教会にも描かれている。クルタスの神話だよ」

「だとすれば、グリフォンは私を襲ったりしないよな?私はサーラを守る騎士だよな?」

私を守る騎士?

「え?いやいや、ベアちゃんは私の友達だよ。というか友達になってほしい」

ベアトリーチェ様は一瞬、ほっとしたような顔になったのを私は見逃しませんでした。


そして、一拍の後、サーラ様に言いました。


「サーラ、お前、王族なんだよな?王女ソアラだよな?」


サーラ様はお答えになりませんでした。


これはベアトリーチェ様と私で話し合った結論でもありました。


イブレア村に隠遁生活をしていた王国騎士団長、コラード・ディ・オルヴィア。

王妃からの密命と、謎の赤子。


クルタス王国の神話と、グリフォンの出現。


サーラ様は、現国王の次女、死んだはずのソアラ王女で間違いない、と。

そうであれば、グリフォンはサーラ様、つまりソアラ王女を守護している魔獣であろう、と。


サーラ様も困った顔をされておりました。

ご本人もご存じないのでしょう。

しかし、私はある意味確信しておりました。

サーラ様は、王女ソアラ様。天使フラヴィアの生まれ変わりであると。


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