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不穏な気配

「イブレア村を見回ってきたが、盗賊を始め、生きた人間は見当たらなかった」

「誰か死んでいたのか?」

ベアちゃんがストレートに質問したよ。

「いや、そういう意味では無い。人は見ていないのだがな・・・」

そう言うと口籠り、ジャンニと目を合わせる。ジャンニが口を開いた。

「誰かに・・・いや何かに見られているって感じがしていた。だが、人影を見たわけではない。最初は、悲劇があった村だからっていう先入観かと思っていたのだが、オルランドも感じるっていうし、気になった」

「うむ。皆に告げるべきかどうか迷ったのだが、言わずに何かあってもまずいと思ってな」

「いい判断だ、オルランド」

ベアちゃんが頷く。

「ありがとうよ、ベア。断じて言っておくが、気のせいなんかじゃねえ。何かがこの村にはいる。そこでだ、夜は交代で見張りをしたほうがいいと思う」


私は先に寝ることになった。


一番最初は、アデルモとベルナルド。

夜も浅いうちは何も起きないだろう、という感じだ。

別に根拠は無いんだけど・・・。


夜の12時からジャンニとベアちゃん。

それで朝の4時から私とオルランド。


一番、何かが起こりそうな時間担当のベアちゃん達。


「いいの?」

小声で聞いたら「ふふん」と得意そうな返事が返ってきた。

「この展開なら、全体何かが起きる!どうせ起こされるのなら最初から起きていたほうがマシだ!」

「たしかに・・・」


教会の2階は簡素なベッドが4つほど置かれていた。


年に一度か二度、旅人がやってきて泊って行くことがある。

記憶ではお父さんを訪ねてくる旅人が何人かいた。私が小さい頃は、もう少し頻繁だったらしいけど、あんまり覚えていない。

そういう旅人の宿泊場所として用意されていたベッド。


うちは村の中では大きな家だったけど、貴族の屋敷って言うわけじゃないから・・・。


一人や二人なら泊れただろうけど、彼らは四人から六人くらいで来ていた。

丁度、今回の私達と同じような人数だね。


一階もベッドは無いけど、横になるスペースくらいはある。


とにかく、明日のためにも休息が必要、ということで、一番奥の、少し離れた場所のベッドを使わせてもらうことにした。

ベアちゃんと順番にシャワールームを使う。


外は雨が激しく降り続いているし、どうせ乾かないだろうから今夜は洗濯は無しだ。


魔法で髪を乾かすと、私はベッドに潜り込んだ。


1階で髪を乾かしていたら、ベルナルドが驚いた顔で覗き込んでいた。

私は、覗かないで!と睨んでおいた。

服は着ていたけど、乙女の身づくろいを覗くなんて!


獣耳を見られたけど・・・。まあ、もういいかな・・・。ベルナルドさんは外国の人で偏見も少ないだろうし。


ジャンニには今夜にもベアちゃんから話しといてもらうことになっている。ジャンニはクルタス王国の人なので・・・。



ベアちゃんは私の隣のベッドに潜り込むと、さっさと寝てしまった。


そのあたり、騎士団生活が板についているというか、寝られるときにすぐに寝られるというのも大切なことなんだろうね。

私も、寝られるかな、と少し心配だったけど、なんだかんだで旅疲れがあったのだろう、横になっているうちにいつの間にか眠ってしまったようだ。



夢の中で、お父さんに会った。


私は家の中にいた。

私が育った家だ。ベッドに座り、南に大きく開いた窓から、外を見ていると、お父さんが歩いてきて、何かを言っていた。

けれど、遠くて何を言っているのかわからない。

私は、聞こえないよ、もう一度言って、と手を振るのだけど、お父さんの声はやっぱり聞こえない。

もどかしくて、私は外へ出ようとするのだけど、私の靴が見当たらないのだ。

早く行きたいのに・・・靴が何処にもないよ・・・。


「サーラ、起きて。サーラ」


目を開けると薄暗い部屋の中、アデルモがいた。

「う、もう時間?」

「ああ、やっと起きましたか。いえ、まだ真夜中です」

「ん-、じゃあ、なんで・・・」

「外の様子がおかしいのです。ベアが全員を起こすように、と」


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