魔法のこと
カリアリ商店を出て、街の方へ歩く。
お金はマジックバックへ入れている。
文字通り、魔法のバッグだよ。入っているものの大きさ、重さをゼロにしてくれる。
もちろん、入れられる容量は決まってる。
無制限に入れられるわけじゃないけど、私のマジックバックはお母さんの形見のものだから、かなり品質の高いものだ。
外見は革製のショルダーバッグ。艶やかなブラウンの革に、飾りのベルトと金属のバックルがついている。入れ口は広くないけど、マジックバックだから、自分の手さえ入ればいい。サイズはあんまり関係ないのだ。
基本の収納量と、魔力を注ぐことで緊急的に容量増加出来る能力が付いている。
ゴブリン討伐・・・。
ゴブリンは強い敵ではない。戦闘の出来る冒険者なら、1対1で負けることなんて有り得ない。というか、まともな武器さえ持っている大人なら勝てる。
じゃあ何が問題か。
まずは、姿を現さないこと。
ゴブリンの知能は高くないけれど、さすがに命の危険は知っている。ゴブリンは村で生活していて、村から出る時も集団で行動している。単体で弱いゴブリンといっても、さすがに何体も同時に相手にすると冒険者でも不利になる。ゴブリンは棍棒か、拾ってきた剣を持っているから。
はぐれゴブリンもいるのだけど、やつらは獲物を狙う時以外は身を隠しているので、めったに見つからない。
なので、効率良くゴブリンを仕留めようと思うなら、村から出て集団行動しているところをパーティーを組んだ冒険者が力業で戦闘することになる。
ゴブリンの集団は、少なくて10匹、多くて20匹くらい。集団には初級魔法を使うゴブリンリーダーが1匹混じっていることが多い。
なので、ゴブリン討伐パーティーは推奨5人以上。魔法を使える冒険者をメンバーに入れることが推奨されている。
けど、魔法を使える冒険者は多くは無い。
貴族は魔法を使えるらしいけど、平民で魔法が使えるものは少ない。それも強力な攻撃魔法を使えるような人は、子供の頃から貴族に目を付けられ、お屋敷に引き取られるとかしてしまう。生活魔法みたいなものでも、便利に使われる方法はいくらでもあり、わざわざ危険な冒険者になる必要は無い。
なので、攻撃魔法を使える私は、けっこうレアなんだ。
ちなみに、私がゴブリンをソロで刈って来られる理由は・・・。
はぐれゴブリンに「獲物」だと思われるからだ、と皆には説明している。
私は14歳にしては小柄だし、見た目麗しい美少女だからね。みんな、それで納得するよ。
え?本当はどうなのかって?
集団行動しているゴブリンに、ファイヤーボールを叩き込んでいるよ。
強力なやつを一発、撃ち込んで、慌てて逃げ出すゴブリンは無視して、倒した何匹かから魔石を回収している。
うん。ゴブリン討伐は、30分くらいで終わる楽な仕事だよ。
でも、そんなことは言わないんだ。
だって私は自分の攻撃魔法をギルドに過少申告しているからね。
私は空気を読める冒険者だからね。