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講義(1)

うん、講義が始まるとは想像していなかった・・・。


「ご存知の通り、魔素とは大気中に含まれる成分の一つであります。これを魔物が吸収し、体内で作り出す物、それが魔石であります」

うん。知ってる。

「魔石は、様々な特性を示し、その特性に合わせて作られますところの魔道具に力を与え、様々な生活道具をはじめ、橋の上げ下げ、船の動力、武器などにも使われております」

ノルベルトが見渡す。全員が頷くと、安心したように続きを話し始めた。

「魔石が生み出す力、これは高濃度の魔素による高エネルギー反応であります。つまり魔石とは究極的に圧縮されたエネルギー物質であります」

「エネルギー物質?」

ベアトリーチェがつぶやいた。

「ええ。指先ほどの魔石に蓄えられている魔素は通常大気中の濃度に換算すると街一つ分以上になると計算されています。そして、一般的には、魔石には特性があるとされておりますが、魔素には特性はありません。すなわち、魔石にも特性はございません」

「は?」

オルランドが思わず声を出した。

ベアトリーチェがオルランドを制して質問する。

「だが、魔石鑑定で特性を調べるではないか?そして特性に合った魔道具の核として売られていくであろう?」

「その通りでございます。ですが、それは魔石の圧縮濃度の差、エネルギー放出の効率の差だということが研究で明らかにされております」

「なんと・・・」

オルランドがため息をついた。アデルモも驚いた顔をしながらも頷いている。

ノルベルトは満足げに頷くとアデルモに視線を合わせた。

「では、魔物は魔素から魔石をどのようにして生成しているのでしょうか?」

アデルモは唐突に問われて、ほんの少し目を見開いたけれど、すぐにいつもの顔に戻った。

「それは考えたことも無かった・・・」

ノルベルトは再び満足げに頷く。

「それが普通の返答です。魔物は魔石を生成する。当たり前のことです。魔物は魔素を吸収し、それを蓄積する。そして結晶化して体内に魔石が出来上がっていく。そう思われております。そしてある意味で、間違ってもおりません。しかしながら、ここに重大な見落としがあります」

「見落とし?」

そう言ったのはベアトリーチェだったけど、そこにいた全員が同じことを思っていた。

「魔素から魔石が出来る過程を見た者は一人もいないのです」


ノルベルトの講義は続く。

「魔物が体内で魔石を作る過程、これを人工的に行うことが出来れば、冒険者に危険な仕事をさせる必要も無く、ゴブリンなどの厄介な魔物を生かさず殺さずで共存するなどということをする必要も無く!」

確かに。いくら魔石を礎にした魔法文明とはいえ、その魔石が魔物頼みというのは不安定だし、いつか行き詰る。

「そしてクルタス王国では知られておりませんが、人工魔石は既に開発されています」

アデルモが「まさか」とつぶやいた。

「まだ実験段階だとは聞いています。実用レベルには程遠いというのが専門家の意見ですが」

「何故だ?魔石の品質が悪いとか?」

ベアトリーチェが腕を組む。

「品質は・・・かなり高いそうですよ。私も実物を見たことはありませんがね。ただ、作成するのに馬鹿みたいに費用が掛かるそうで・・・。魔物から採れた魔石を買う方が現実的だとか・・・」

アデルモが頷く。

「なるほど。コストに難ありというわけですか」

「その通りです」

アデルモは天井を見上げた。

「ノルベルトさん。しかし人工魔石の話が今回のウォーキンデッド・・・失礼、我々はあれをそう呼んでいるのですが・・・この件と一体、どんな関連が・・・?」

「そう、それなのです。何故私が人工魔石の話をしたのか。それはですね、人工魔石の特徴について、なのですよ」

「特徴?」

「ええ。人工魔石はですな・・・赤いのです」


赤い魔石・・・。


私は魔石に詳しくはない。


ゴブリンから出る魔石は、ほぼ黒に近い色をしている。カリアリ商店で見掛けた魔石も、ほとんどが黒だった。魔石と言えば黒、そういう印象はある。


けど、ゴジラから出た魔石は紫だったし、ウォーキンデッド・・・というかルチアから出た魔石はガーネット、深紅だった。

そういうレアな魔石もあるんだな、と思っていたのだけど、違うのだろうか・・・。


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