オルビア冒険者ギルド
朝、目が覚めた。
いい天気。日当たりのいい部屋だ。朝日が気持ちいい。
宿は少し高いところを借りてる。広くは無いけど清潔でシャワーも付いてる。
気持ちのいい朝のはずなのに・・・。
私は何故だか泣いていた。
とても悲しい夢を見た気がするよ。
けれど、思い出せない。
忘れてはいけない何かがあったような気がするんだけど・・・。
窓を開けて外を眺める。
海が見える。
海沿いの気持ちいい部屋だ。
夢は思い出せないけれど、また神が出てきたのだけ覚えていた。
「ノルベルトに会え。イブレア村へ行って人間を魔物にしている犯人を捜せ」
なんかそんなことを言っていた。
私はため息をついた。
「言われなくてもやるけどさ・・・」
部屋を出て向かいのレストランへ。
宿は食事付きじゃないんだけど、聞いたら向かいのレストランが朝からやっていると。
「いらっっしゃい。好きな席へどうぞ」
お店のお姉さんは青い髪の綺麗な人だった。少し日に焼けた肌は海が似合う。
奥の席ではオルランドが海を眺めながら優雅に朝食を食べていた。
「おはよう、オルランド」
「おう、サーラ。おはよう」
「アデルモ達は?」
「今朝は見てねえな。というか、そもそも戻ってきてるのかね?」
朝ご飯は、濃いコーヒー。それとパン。
パンはチョココロネだった。私はそれを二つ貰う。
「そういえばオルランド、朝ご飯を食べるなんて珍しいね」
「そうか?パンのいい匂いがしたんでな。どうせ行くところもねえし」
そう言いながら私を見ている。
「じゃあオルランド、ノルベルトさんを探しに行こう?」
「ん?サーラ、お前、割とワーカホリックだな。探すのは構わねえが・・・話はアデルモと一緒に聞きに言ったほうがいいな。ああ見えてアデルモは貴族だ。相手も邪険には出来ないからな」
「そっか・・・」
「いや、アバウトな情報しか持ってねえからな。情報を集めてアポ取っておいた方が話が通りやすい。今日は会う約束を取り付けることにしよう」
「うん」
そんなわけで街へと向かったよ。
オルビアの街は広かった。
人口は30万人程度だとオルランドが教えてくれる。
「大陸にはもっと大きな都市もある。だが、クルタス王国では最大の都市だな。大陸の都市と比べりゃこじんまりとしてるが、活気はいいよな」
中心街には人がたくさんいた。
前世の私は、地方に住んでいたようだ。
とはいえ、東京や大阪に行ったことが無いわけではない。そういう大都会の混雑からすれば、オルビアの混雑は大したことが無いかもしれない。
けど、呼び込みをする露天商、走り抜けていく馬車、雑貨屋、八百屋、魚屋・・・あれは銀行かな?
この世界に生まれてから、初めて見る喧噪だった。
「手を繋いどくか?サーラ」
「う、大丈夫だよ。私は慣れてるから」
そうだよ。こう見えても私は元日本人・・・。
「慣れてるわけがねえだろう?」
「だ、大丈夫。ちゃんと付いてくから」
「そうか。人攫いもいるから気を付けろよ。お前さん、見た目がいいからな」
人攫いなんているんだ・・・。
物騒な・・・。
無秩序な人の波に慣れるのに少しかかったけど、なんとか無事に冒険者ギルドに到着。
カウンターのお姉さんにサンテレナから来たことを告げ、ギルドマスターに取次ぎを頼んだ。あ、オルランドが、ね。
カウンターのお姉さんは、紹介状を持って二階に上がっていった。
しばらくすると、戻ってきて手招きをした。
うん、ギルドの中も人がたくさんいて賑わっていたよ。
離れた階段からじゃ、声が通らなかったんだね。
階段を上り、案内された部屋で待つことしばし。
「待たせたな、オルビアの冒険者ギルドマスター、ベアトリーチェ・ディ・オルビアだ」
そう言って現れたのは、長いグリーンの髪をきっちりと縛り上げ、簡略された騎士の服装みたいな服を着た麗人だった。もちろん女性だ。宝塚みたいな人だよ。
「お初にお目にかかる。オルランドと申します。こちらはサーラ」
ベアトリーチェが私を見下ろし、一瞬、怪訝な表情をしたけれど、すぐにオルランドに目を戻した。
 




