オルビアに着きました
途中の港で一泊して、翌日の夕方、オルビアに着いた。
その日は、宿を確保して休み。夕飯は南の大陸料理の店に。
「おお!ステーキだ!」
運ばれてきたのはスパイスの効いたソースがかかった牛肉ステーキだった。
「サンテレナはシーフード中心だったからな!肉料理の店にしてみたぞ。どうだ?サーラ」
「ありがとう、オルランドさん。お肉大好きだよ」
「うん、そいつは良かった」
ピリッとしたスパイスが食欲をそそるよ。
船に時々魔力を注いでいただけなんだけど、魔力を消費すると何故かお腹が減るんだよね。がっつりお肉で体力回復だよ。
ところで、今夜はジャン達とは別行動。
アデルモ、ジャン、ロレーナは夜の街へ繰り出して行ったよ。
オルビアはクルタス王国第二の都市、と言われてる。
けれど、それは王都が第一都市だから。王都は行政の中心で、王城を中心にして行政機関や教育機関の建物が並んでいる。
お店は何処も老舗で格式が高い。
でも、都市の規模は大きくはない。言ってみれば貴族が暮らす格式の街。
オルビアは、その都市の規模においては王国一なのだ。
港街から続く貿易センター、雑多に並ぶ露天街、裏通りの歓楽街、街の中心に軒を連ねる大商店。都市の華やかさ、活気の良さは王都とは比べ物にならない。
そんなわけで、アデルモ達は羽目を外しに出かけて行ったんだ。
私もついて行こうとしたんだけど・・・。
オルランドに止められたよ。
子供にはまだ早い、とかなんとか・・・。
子供じゃないよ、私は!
でも、まあ、オルランドがステーキを食べに行くと言うから、こうして一緒に来たってわけ。
赤身中心のステーキは、歯ごたえがあって「肉、食ってるぞ」感が半端ないよ。
私、日本のやわらかいお肉も好きだけど、こういうがっつり系も嫌いじゃない。特に生まれ変わってから、肉と言えば赤身なので、慣れたっていうのもある。
オルランドは、グラスで爽やかなビールを飲んでいた。ライムが添えられていて果汁を少し絞ってる。
「いいな、私もビール飲む」
「なあ、サーラ。お前、サンテレナでもエールを飲んでいたが、本当は子供にアルコールは良くないぞ?」
「子供じゃないってば。私、もう14歳だし」
この世界、12歳で仕事を始めるからね。
飲酒にも年齢制限は無いよ。冒険者は年齢に関係なくお酒を飲んでるのが普通。それに、こっちの世界のエールは何故かあんまり酔わないし。
あれ?でもアロンザは普通に酔ってたっけ・・・。
「そうは言ってもなあ・・・お前、見た目は10歳くらいだからなあ・・・」
「10歳って・・・いくらなんでもそこまで幼くないでしょ?そりゃあ、少し背が低いとは思うけどさ」
「いやあ、10歳くらいだぞ。喋り方と言い、その体型といい・・・」
「体型・・・わ、私だって少しは胸もあるんですからね!」
「む、胸って・・・」
オルランドが、すっと目を逸らした。
「な、まったく!いいの!私も飲むの!」
私はさっと手を上げて、大きな声でビールを注文した。
「なんでそんなに酒を飲みたがるかねえ?」
「酒じゃないよ、ビールだよ」
「ビールも酒だろうがよ」
「ともかく、サンテレナはエールしか無かったもん。オルランド、それ、ラガーでしょ?しかもしっかり冷えてる」
「おう。よく見てやがるな。確かにこいつは冷えてる。ところでラガーってのはなんだ?」
「ラガーはね、低温で時間を掛けて発酵させて作るんだよ。味がすっきりしてるでしょ?エールよりも癖が無くて飲みやすい、それがラガー」
「・・・サーラ、なんでそんなに酒に詳しいんだ?」
「う・・・えっと前世の知識?」
「は?前世?」
「いや、なんでもない」
ビールが来た。
ライムが付いてきたので少しグラスの中に果汁を垂らす。
「ふわあ・・・」
爽やかな味が広がるよ。
これはメキシコ系のビールだ。おいしい。
それにしても、低温維持をしなくてはいけないラガーが作れるっていうことは、冷蔵装置がビール工場に設置されているってことだよね。さすが大都市オルビア。万歳、魔法文明。




