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魔動船

二日後。


私は港にやってきた。


アデルモの船に乗るために。


サンテレナの冒険者ギルドは、今回のウォーキンデッド事件を重く受け止めていた。特に、これが人為的に引き起こされた事件かもしれないことを重視してる。

アデルモは、ギルドの調査依頼を快く引き受けた。

まあ、元々アデルモ達は魔素や龍種の研究も目的の一つだったし。


うん。

これからオルビアに向かうよ。


オルビアに、魔法と魔素に詳しい研究者がいるんだって。

その人の名前はノルベルト・シュトゥットガルド。外国の人らしい。


私、ずっと田舎暮らしで教養はあまりないんだけど、アロンザが言うには、クルタス王国は島国で、諸外国に比べ魔法研究は一歩遅れているんだって。

特に、魔道具研究の分野では技術格差が大きくなっている。

クルタス王国は、龍種の出現頻度が高く、レアな魔石がたくさん採れるけど、その多くは海外に流出してるそうだ。

レアな魔石になればなるほど、それを有効活用するには高度な魔道具技術が必要になるから。


で、そのノルベルトさんは、海外からきた技術者さんで、クルタス王国に魔道具技術を教えるために来てもらったんだってさ。技術格差を少しでも埋めようとしてるわけだね。

ノルベルトさんはそういう技術屋さんの中でも古株らしく、クルタス王国に来ている海外技術屋さんの動向に詳しいんだって。



アデルモの船は、生前の記憶でいうと高級クルーザーくらいの大きさだった。

全長15メートルくらい。


生前、私はいろんな仕事をしてきたらしく、何故か船の知識もあるんだ。

なんかヨットハーバーで仕事をしていたらしい。なんとなくしか覚えていなんだけど。


生前の記憶では、全長15メートルクラスのクルーザーといえば、お金持ちの人達が船の上でパーティーするような高級船だったんだけど、さすがにアデルモの魔導船は質素だった。それに、もちろん木造船だ。帆船ではないから、形こそクルーザーみたいだけど。

船の中は小さく仕切られ、広間が1、ベッドルームが4、トイレとシャワールーム、調理する場所なんかの装備がある。船倉には小規模な貿易も出来そうなくらいのスペースがあったよ。


まあ、この世界、マジックボックスがあるから船倉の容量はチートが可能だけどね。


船に乗り込むのはアデルモ、オルランド、ジャン、ロレーナ、そして私。


アロンザも付いてくるって激しく主張したけど、マリオに止められてた。

でも、諦めたわけじゃなく、陸路でオルビアに行くんだってさ。向こうで私達と合流するってさ。


とはいえ、ベッドルームが一つ足りないね。

「私は広間で寝るよ。ソファー、寝心地良さそうだし」

「ダメですわ。アデルモが危険ですもの。サーラはベッドルームを使ってくださいな。オルランド、あなた、何処ででも寝られるでしょう?」

「は?なんで俺が?そういうロレーナ、お前こそソファーでいいだろう。どうせいつも最後はワインを飲んでそのまま寝ちまうんだからな」

「何を仰るんですの?私は女ですのよ?じゃあ、ジャン、あなたソファーで寝なさいな?」

「まあ・・・俺は別に何処だっていいが・・・」


そう言う流れでジャンは広間のソファーがベッド、ということになった。

さすがに何か悪い気がしたので、ジャンの荷物は私のベッドルームに置いてもらうことにして、私が使っていない時は自由に出入りしてもいいってことにした。

この船のベッドルームは、鍵まで掛かるんだよ。すごいよね。


オルビアまでは二日間の船旅になるよ。

夜は航行しない。

途中の港に入港して、停泊。


だから、別に船で寝なきゃいけないってこともないんだけどね。


そんなことを話しながらアデルモは出航の準備を進めた。


まずは船倉に潜り、機関室の魔石をセット。

魔導機関を準備する。


前にも言ったけど、アデルモの船は足が遅い。

それは魔石が使いこまれたもので出力が低いからだ。


けれど、アデルモの船に限らず、緊急時は魔法士が魔力を注ぐことで速力を上げることが出来る。


プーラ村で、私が壊れたランプに魔力を注いで使ってたのを覚えてるかな?

あれと同じ原理だよ。

魔石の代わりに魔力を注ぐんだ。


今回は、港を出たら私が機関室に入り、魔力を注ぐことになってる。


前回まではアデルモが魔力を注いでいたりもしたらしいけど、海にはシーサーペントを始め大型の魔物も出たりすることがあるから(安全な航路を進めば滅多に出会わないけどね)本来の速力の2割増し程度だったみたい。


「サーラ、そこに3つ色違いの魔石が並んでいるだろう?」

「うん」

機関室の主力魔導機関、その魔力変換装置。そこに3つ、小さな魔石が板に嵌め込まれていた。

「それぞれ注がれた魔力に反応して光る。青が2割、黄色が5割、赤が8割だね」

「8割以上は?」

「それ以上は魔力を注がないで。万が一、赤が点いてしまった時は、即座に魔力を停止して欲しいな。魔導機関の負担が大きいから。最悪、壊れるからね」

「わかったー」


説明を聞いたので、機関室を出てデッキへと上がる。

船の操縦席は屋上だ。そこではオルランドが舵を取っていた。


「オルランド、そのレバーはなあに?」

「ん?これか?サーラ。これはな、スロットルだ」

スロットル・・・って。まるでエンジン推力を調整するレバーみたいな・・・まあ、魔導機関の推力コントロールも似たようなものか・・・。

「魔導機関に流れる魔石エネルギー、もしくは魔法力だが・・・。これは一定なんだ。そこから不要なエネルギを削ぎ落すことで速力を調整するんだ」

「?エネルギーを削ぎ落す?出力って絞れたりしないの?」

「出来ねえな。魔力は一定の力でしか出力出来ねえ。速度を落とすと無駄になるんだが・・・仕方ねえな。それが魔石の力ってやつだからな」


船の見学が終わる頃、港を出て外洋を進んでいる。


「じゃあ、そろそろ機関室で魔力を注いでくるね」

「うん、ありがとう、サーラ」

「おう、よろしくな!」

アデルモとオルランドに見送られて機関室へ。


さっきの機械に魔力を注いでいく。


うん。これ、結構魔力を使うね。


黄色の魔石が点灯したところで、私は注ぐのをやめた。

オルランドからも注意されたんだけど、赤色まで注いでも、船の耐久性を考慮するならば、5割アップまでが無難なんだってさ。


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