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新聞に出てしまったよ

港町であるサンテレナなら魚の仕入れは出来るし、プーラを始め近隣の村でジャガイモも作られている。材料は揃っていたわけだよ。

ちなみに、ジャガイモも外来種だよ。なんでもバッファローと同じ大陸から輸入されてきたのが始まりなんだって。

そういえば、トマトもそうだね。


生前の知識では、トマトもジャガイモも原産は南米だった、と。

この世界、というか、私の生まれた国は、元の世界のイタリアに近い文化なんだけどね。中世の世界観というよりは、近代の世界観に近いかな。

産業革命の代わりに、魔道具革命で便利になりつつある・・・。


「サーラ!サーラってば」

アロンザが呼んでいた。

「なんですか?」

「エール!エールよ。冷やしてくれるって・・・」

「あ、ああ・・・アイスミスト!」

アロンザとジャンのエールを氷魔法で冷やす。もう随分と慣れたよ。完璧な温度でご提供できますよ。

自分のは少し強めに・・・。

私は香りよりものどごし派なんだ。

「ぷは!おいしい!エールって冷やすとおいしいのね!」

アロンザがエールのコップを掲げるように持ち上げる。

「でしょ?アイスミストで冷やすんだ。アロンザ、アイスミスト使える?」

「も、もちろんですわ!けれど・・・。私がやったら凍らせてしまいますわね。サーラ、この絶妙な温度調整はどうやって覚えたんですの?」

「あ、それは・・・えっと・・・飲み水を冷たくしたくて毎日練習してたから」

「飲み水を冷やしたかった・・・?」

ジャンとアロンザが顔を見合わせていました。

「サーラよ。お前、魔法を便利に使ってるよなあ・・・」

「だって、実際、便利だし」

「ですが、サーラ、普通、そんなに日常的に魔法を使っていたら魔力枯渇で倒れてしまいますわ」

「そうなの?」

「ええ。サーラさんの魔力が桁外れなのは充分知っていますから、何も言いませんけどね。私の魔力では、エールを冷やすのだって5杯程度が限度でしょうね。それ以上すると、夜の湯浴みでお湯が作れなくなったり、いざという時に魔法攻撃が出来なかったり、調子が悪い時だと、翌日の魔力枯渇が早くなったりしてしまいます」

「そうなの?アイスミストは魔力消費の少ない魔法だと思っていたけど・・・」

「そんなことありません。第一、それはれっきとした攻撃魔法ですからね?普通の人は、エールを冷やすのに使おうなんて考えつきませんわ!」

「えー?でも、食料の冷凍にアイスミストを使うって聞いたよ?」

「ええ。可能ですわ。本来のアイスミストの威力ですわね。保存のために冷凍する依頼もありますわね」

「それくらいだとやっぱり魔力も結構使うんでしょう?」

「サーラ、魔法の規模が小さいからといって、魔力消費も比例して小さくなるわけではありませんですのよ?」

「え?!」

「え?って・・・。まさか、サーラは威力によって消費魔力が違うのですか・・・?」

「うん・・・それが普通かと・・・」

「そうだったのですか・・・。これは面白い発見ですわね・・・」


私には、何が面白い発見なのかわからないよ。

魔法の強さが弱ければ、消費魔力も小さい・・・当り前じゃないんだ・・・。


「はい、おまち!フィッシュアンドチップス、そして!ウナギのトマト煮込みだ」

「わあ!おいしそう!いい匂い!」

「旨そうだな!」

「フィッシュフライもおいしそうですわ」

ライモンドがお金を受け取ってカウンターの向こうへ戻っていった。


ウナギのトマト煮込みは、とってもおいしかった。


記憶の中のウナギは、かば焼きのイメージがすごく強い。

でも、玉ねぎが入ったトマト煮込みは、ウナギの旨味がトマトに溶け込んですっごくおいしい。ウナギも柔らかくて幸せなお味がするよ。


「ライモンド!エールおかわりだ!」

「はいよ!」

「あ、私も!」

「じゃあ、私も。サーラ、もう一度冷やしてくれるのよね?」

「え?う、うん。冷やすよ?」

「はいよ!」


ライモンドがエールのお代わりを持ってきてくれた。

「おまちどうさん」

「ありがとう!」


「ところで、サーラ嬢ちゃんよ?」

「うん?」

「お前さん、新聞に出とるぞ?リッチを倒した聖魔術士、とあるが、こりゃ本当かい?お前さん、教会の出身者だったんか?」



新聞を読ませてもらった。


なんか憶測と想像だらけだった・・・。


リッチっていうのは、幽霊の一種。

魔法士が自分に魔法をかけることで、老いた肉体を捨てて霊体となったやつだ。

私の前世の記憶ではそうなってた。アロンザに聞いても、だいたいあってるらしい。


「ルチアさんはリッチだったのですか?」

アロンザがトロンとした目で聞いてきた。


ん、この子、酔ってる?


「リッチじゃないよ。魔物化だよ。死んでから魔物化したんだし」

「そう言えばそうでしたわね」

ジャンが新聞を興味無さそうにライモンドに返した。


「サーラ、お前、なんで聖魔術士とか言われてんだ?」

「それは・・・きっと、ベニートが取材されたんだよ。あの人、私の事を教会の天使に似てるとかなんとか言ってたから・・・」

「教会の天使ねえ・・・あんま教会行ったことねえからわかんねえ」


ジャンは難しい文章は読めないんだ。最低限、冒険者として知っておくべき単語くらいなら大丈夫なんだけど。


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