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深紅の魔石

翌日。


今日もいい天気。

暑くなりそうだなあ・・・。


テントから顔だけ出して空を眺めた。

まだ夜が明けたばかり。

昨日の夜は、大変だったから、あまり眠れていないよ。


「こら、サーラ。ぼうっとしてるんじゃねえ。残りの墓堀りがあるだろうがよ?」

 

オルランドに怒られた。


今日は、マリオとオルランドとジャンが墓堀り。

アロンザと私が掘り出された棺桶を焼く。

アデルモとロレーナはベニートと今後の相談。


薬師のユーリャと魔法士のカリーナは、昨日のルチアの遺体を検分してる。

あ、うん。徹夜でやってた。

さすがに、あの状態から復活はしないだろうと思ったけど、元々死体だったはずのものだし・・・。

放置して寝ちゃうわけにもいかなかったし、ベニートは出来るだけ早く焼却してしまいたい、と強く主張したし。



「はーい」

眠たい目を擦りながら、私は小川へ行く。

顔を洗いに、ね。


顔を洗って戻ってきた。

テントの中からマジックバッグを取り出す。


寝不足だし、朝ご飯に何か食べることにする。


みんなは一日二食だからさ。

朝ご飯、食べないんだよね・・・。


クッキーの残りがあったので、それを頂くよ。

それと、コーヒーだ。


ロレーナがコーヒー好きで、毎朝コーヒーを作っているよ。


それというのも・・・。

この世界にはインスタントコーヒーが存在している。ロレーナが持ってきているのもインスタントコーヒーで、瓶に詰められて売っている。


コーヒーをインスタントの粉にするには、急速乾燥させる必要があるらしい。

そうしないと、風味とか香りが飛んでしまって、まずいコーヒーになってしまうから。


ロレーナに聞いた話では、霧状にしたコーヒーを魔道具によって急速加熱して粉にするんだって。

魔道具、すごいな・・・。


ロレーナにコーヒーを分けてもらって、クッキーと一緒に頂いた。


うん。満足。


ユーリャとカリーナのところに行く。

寝る前に約束してたからね。


二人は木箱に収められた遺体を前にして、疲れ切った顔で座っていた。


「おはよう」

ユーリャが大儀そうに顔をあげる。

「ん、サーラか」

カリーナがあくびをしながら立ち上がった。

「検分は終わってるよ。後は任せた。焼却していいよ」

「う、うん」


ゴブリンを焼くのとは違うんだけどな・・・。


昨日の棺桶焼却も気分的には悪かったけど、今日のこれは、ね。

それが魔物だってわかってはいるけど、まるで人間のように動いていたわけで・・・。


カリーナは、悪いけど先に休ませてもらうわ、と言って立ち去って行った。

ユーリャはクマの出来た目で座ったまま。

「許可は貰ってるから。それ、焼いてみて」


まるで落ち葉焚きするくらいの感じで言うけど・・・。


やるよ、やりますけども。


「インフェルノ!」

最小限の範囲でインフェルノを使う。

昨日の夜、ベニートはウォーキンデッドを完全焼却することを主張した。


アデルモは検分することを条件に完全焼却に賛成した。


ま、それを誰がやるかなんて、言われなくてもわかってたけどね。


灼熱魔法は数十秒で木箱と、それに収められていた何かを完全に焼却し尽くした。


「あ、待って」

ユーリャが、焼却された木箱のあった辺りに転がる石のようなものに手を伸ばしたので、私は咄嗟に腕を掴んで止めた。

「ん?」

「ユーリャさん、まだ熱いから!冷えるまで待って」

「あ、そうか」


予想はしていたけれど、そこには握拳大の魔石が落ちていた。

赤、と言っていいかな。

透き通った赤い魔石。ガーネットのような・・・血のように赤い・・・。


「とても美しい魔石ね・・・」

ユーリャがため息まじりにつぶやいた。

「そうですね・・・」

「ルチアって子、綺麗な女の子だったのね。悲しいわね。最後はこんな魔石になってしまうなんて・・・」


魔石は・・・。


魔石は魔物の体内で作られる、魔素の結晶化したもの。

それは魔素の塊であって、生物の魂ではない。


ないんだけど・・・。


その魔石は、そのぐらい、美しい色をしていたよ。


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