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魔物化した人間(7)

(魔法士アロンザの視点です)


私はアロンザ。アロンザ・ディ・オルビア。


えへ。

貴族だーってこと隠して修行の旅の途中なのです。

なので、旅の間は、ただのアロンザですのよ。

 

うちの家系はオルビアって家名を名乗ってはおりますけど、いつもみんなに面汚しとか、偽オルビア家とか言われてるくらい遠縁のオルビア家です。

オルビアの都市に住んでいたわけでもありません。父はロイーリっていう小さな村の領主ってだけ。

でも、私だって腐ってもオルビア家。魔法士として修業を積んで、立派な魔法騎士になるのが夢なのです。


それで、一緒に旅をしているのがマリオ。

マリオは、かつて私の剣の師匠でした。


私が13歳の時に、修行の旅に出ると言ったところ、両親に大反対をされました。

父曰く「お前が冒険者などになって無事に帰って来られるわけがない」「そもそもお前はそそっかしく、いつも何か足りないのだ」「武勲を立てることなど期待などしとらんから女を磨いて良いところへ嫁ぐことを考えよ」エトセトラ、エトセトラ。


なので、私は家出してやりましたのよ。

 

マリオは、そんな私を心配して付いて来てくれたのです。

冒険者だった、と自分で申しておりましたし、心強い仲間ですわ。


ええ、もちろん父の差し金なのだと知っています。

追いかけてきたマリオは、何故か路銀を持っていましたし・・・。

でも気付かない振りをしていますのよ。



そして今日、出会ってしまいましたわ。


金髪にグリーンの目を持つ美少女に!

真っ黒な帽子に真っ黒なワンピース。魔法使いです、と言わんばかりの格好をしていましたのよ。

私は、この子は何かある、と思っていましたのよ。


そうしたら、上級魔法「インフェルノ」を使っていましたのよ。

私は目を疑いましたわ。

あのような強力な魔法、私だって過去に1度くらいしか見たことがありませんでしたのよ。

ええ、もちろん、サーラの唱えたインフェルノは小さな規模の魔法でしたけれど、それを使えるというだけでも凄いことなのです。


そして、夜に聞いた話。


サーラは、かのオルビア公、先々代の魔法騎士団長コラード様の養女だったなんて!


きっと、オルビア公が引退された時、何かの事情があって将来を期待された娘さんを引き取って育てたのですわ。

優秀な魔法士となる血筋だったとか、生まれながらにして魔法の痕跡があったとか、きっとそういう何かですわ。



興奮冷めやらぬまま、一人、テントに入った私は寝付けませんでした。

まさに、これぞ旅の醍醐味。思いもよらぬ出会い、未知なる冒険。


ええ、決めましたわ。


サーラに付いて行こうと思いますわ。

しばらく一緒に旅をしましょう。ええ、明日、さっそくお誘い致しましょう。


いえ、こういうことは早い方がいいですわ。


今からお誘いに行きましょう!


サーラが起きていらっしゃたら。

少し、お話をいたしましょう。


ええ、そうしましょう。



私はテントを出ました。

確か、サーラは二つある大きなテントの小さい方、パーティメンバーのロレーナっていう女の人と一緒でしたわね。


そろそろと暗い広場を忍び足で・・・。


「おい!」

「ひゃあ!」

急に声を掛けられて、変な声が出てしまいましたわ!

だ、誰ですの?こんな夜更けにレディーを呼び止めるなんて・・・。


「・・・マリオ」

ひげ面のオジサマ顔。まるで配管工のようなズングリ体型の中年剣士。マリオでした。

「アロンザ、どこ行くんだ?」

かつてマリオは私の師でした。旅に出てからは冒険者の先輩です。それが私に敬語を使っていたら周囲の人達からおかしな目で見られます。ですから、随分前からマリオはぞんざいな言葉遣いをしています。

「えっと、サーラとお話しようと思って?」

「馬鹿か、お前は」

暗闇でも何故かわかってしまいましたわ。マリオが残念そうな顔をするのが。

「バカって・・・」

「本当にいつも思い込みが激しくて他人の都合を考えませんな、アロンザは。こんな夜更けに他人のテントを尋ねるもんではありませんぞ」


マリオは私の腕をつかむと私達のテントの方へ引っ張りました。

私は、引っ張られるまま・・・。


ドン!


「え?」

振り向くと、村の方から火の手が上がっていました。


まったくなんの兆候もありませんでした。

村の方角が明るくなっています。あれは魔法の炎、フレイムによる発火です。


「アロンザ!テントから剣を持って来い!襲撃だ!村人を助けに行くぞ!」

「はい!」


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