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魔物化した人間(5)

(ジャン視点です)


サンテレナから戻ってみると、プーラの村は騒がしかった。


引き連れてきた冒険者は7人。

魔法士2人、剣士4人、薬師1人だ。

今回のドラゴンは人間である可能性が高い、ということで薬師を連れてきた。犠牲者の治療の役に立ってもらえるかもしれねえし、うまくすれば、魔物化した人間を治せるかもしれねえ、と考えたからだ。

もっとも、考えたのはギルド長で、俺じゃあねえけどな。

薬師というのは、パチモンの医者が多い中で、きちんと薬の知識を持った医者のことだ。

なにせ魔法で怪我や病気が治る世界だからな。医者なんてパチモンに決まってるんだがな。魔法じゃ治らない病気や怪我ってのもあるんだ。そういうものを研究して、人に認められているってのは並大抵のことじゃねえらしい。



ギルドは俺の話をきちんと聞いてくれた。


さすが、アデルモの信用は高いな。

大物狙いの「夜明けの希望」は、実績もあるしな。研究家としてのアデルモとオルランドの名前も通っている。

そんなわけだから、ドラゴン討伐報酬として、一人当たり金貨二枚の依頼として承認された。一人当たり金貨2枚っていうのは標準報酬で、困難度が高いと上乗せされる。今回は事前に出現が予測されているドラゴンであるため、標準額が採用された。


ま、しかたないわな。


冒険者の参加は奮わなかった。

それも仕方ねえ話だ。相手もわからないのに戦えと言われてもな。

しかも、人間相手になるかもしれねえ。

魔物を殺すのに抵抗を感じる冒険者は、まずいねえが、人間を殺すのは嫌だというやつもいるからな。

それでも魔法士が二人も参加してくれたのはありがてえ。


参加してくれたのは、魔法士アロンザ15歳女、魔法士カリーナ19歳女、剣士カルロ24歳男、剣士エマルネーレ32歳男、剣士アンドリア21歳女、剣士マリオ45歳男、薬師ユーリャ28歳女、だ。

女が多いのは、たぶん、俺が声を掛けたからだ。


まあ、その、なんだ。

普通に募集をかけただけじゃ、マリオが参加しただけで、誰も名乗りを上げなかったからだな、ちょっと個人的に知ってるやつに声を掛けたわけだ。

個人的に知ってるやつは、その、女の方が多いっていうか・・・。


どうしても声を掛けるのに偏りがあるのは仕方ねえ。


それはともかく、プーラ村に戻ってみれば、いろいろと事態が進んでいたってわけだ。


とにかくアデルモを探して、連れてきた仲間を紹介していった。

アデルモは全員の顔と名前を覚えると、簡単に質問をした。


「ユーリャ、確か君は大陸の出身だったよね?ならば魔物化した人間のことで知っていることは無いかな?」

首を振るユーリャ。アデルモは続けて質問した。

「じゃあ、生き返った人のことは?死んだ人間が生き返ることはあるかい?」

「生き返り?故郷の伝承ではウピルという名で知られた伝説があるわね。死後に墓場から蘇り人の生き血を啜る話ね」

剣士のマリオが話に割って入った。

「待て待て、ちょっと何を言っている。魔物化した人間なんじゃないのか?死んだ者が生き返る?どういうことだ?」

「ふむ。ジャンがサンテレナに行っている間に、僕達の仲間の一人が、今回と同様の事件の経験者だということがわかったのだ。それによれば、魔物化した人間とは、一度死んだ人間らしいのだ」

「一度死んだ・・・?」

「そうだ。そういう意味では、ユーリャの言うウピルというものが近いのかもしれない」

「おいおい、それは倒せるんだろうな?既に死んでるから殺せない、とか言わないよな?」

「大丈夫だ。それは実証済みだ。ただし、腕を切り落とす程度のダメージではダメだ。おそらく、首を切り落とすか、行動不能になるまでダメージを与えないといけないと思われる」


アデルモが話したことは、にわかには信じられないものだった。


それと、仲間の一人、と言ったが、明らかにサーラのことだった。

これまでにそんな話は聞いたことが無かったからな。


それと、「魔物化した人間」とか「生き返った死体」とか「人間のドラゴン」とかわかりにくいから名前をつけたそうだ。

ウォーキンデッド、と呼ぶそうだ。


その名前もサーラが言い出したらしい。

意味は、歩く死体っていう意味らしいが、何語なんだろうな?少なくとも俺は聞いたこと無いぜ?


アデルモが語ったところによると・・・。


サーラの妹は、5年前に死んだそうだ。

サーラが村を出てから半年は経ってない、と以前に聞いたことがある。


つまり、どういうことだ?


死んでから4年以上も経った死体が生き返ったってことか?


どうやらそうらしい。


サーラの話を聞いた後、アデルモはベニートに頼み込み、村の墓を掘り返してもらったらしい。

村長代理のベニートは、最初は渋ったらしいが、サーラの懇願に折れて3年前に死んだ男の墓を掘り起こすことを許可した。

その墓は、ドラゴン退治に来た冒険者だった男のもので、怪我がもとで村で息を引き取ったものの、身寄りがなく村の墓に葬られていた。

村人と繋がりが無いから文句は出ないだろう、と思ったみたいだな。


そこでベニートを始め村人数人とオルランドが墓を掘り、棺桶を開けた。


その棺桶の中には・・・。


まるで昨日死んだかのような死体が横たわっていたんだと。


まあ、そいつは、肩から腹にざっくりと怪我を負って死んだから、損傷も激しかったのだが、それもそっくりそのままだったそうだ。


アデルモが立てた仮説は、こうだ。


魔素が非常に濃い場所では、死体は腐らない。

野ざらしの死体なら、他の動物や魔物に食い荒らされてもいくのだろうが、棺桶の中に密閉されている場合は腐敗が進まなくなる。

なんらかの条件で、死体に魔素が溜まり体内に魔石が生成されると死体は魔物化し始める。

魔物化した死体が、何らかの条件で目覚めるとウォーキンデッドとなる。


「アデルモ、何らかの条件って、いったいなんだ?」

「わらからないよ。これから研究が必要だ」

「それで、これからどうするつもりだ?」

「ベニートには、村人を説得して貰っている。サーラの話から推測して、ウォーキングデッドになる条件にはいくつかの仮説がある。その条件に合う死体を掘り起こし、魔物化して人を襲う前に火葬にするんだ」


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