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魔素濃度とドラゴン

向こう岸に人の気配を感じて、私はランプの明かりを消した。


明るいところから暗い方は見えないからね。

それに、裸を見られたくなかったし。


気配を探りながら、私は岩の上に脱ぎ捨ててあった下着を身につけた。

下着姿のまま、岩の上で姿勢を低くして相手の気配を探る。


アデルモ・・・ではないね。

知らない人の気配。

獣や魔物では無い、人の気配がする。


なんだろう。小川に明かりが見えたから様子を見に来た、とか?


それなら声を掛けてきそうなものだけど・・・。

姿勢を低くしながら警戒を続けたけれど、しばらくすると、ふっと気配が消えた。



立ち去った、のかな。

 

最初から最後まで、気配は感じるけれど姿は見えなかった。


こちらから姿が見えなかったのなら、向こうからも見えられてはいないと思うけど・・・。



岩から降りて服を着た。

もう後は寝るだけだから、薄手のシャツとダブダブのスカート。


私、尻尾あるからスカートしか履けないんだ。

ズボンだと、尻尾の所に穴を開けないといけなくなるから。

尻尾を見られるのも恥ずかしいし。


服を着たら、キャンプに戻る。


さっきの気配は気になるけれど、大したことでは無いだろう。

たぶん、灯りを見た誰かが興味半分に身に来ただけだと思う。姿を見られる前にランプを消せたと思うけど・・・。


ドライヤーの魔法が途中だったけど、まあ、だいたい乾いたし。


少しだけ湿り気のある髪を手で梳きながらテントの前に戻ってきた。


「サーラ!す、素敵だね!」

アデルモがガタっと椅子から立ち上がった。

「え?」

「アデルモ!やめなさいってば。サーラちゃんが驚いてるじゃないの」

「ですが、これは本当に素敵ですよ。美しい金髪小さな猫耳、気品のある顔立ち、薄手のスカートから覗くふさふさの尻尾!ああ、モフモフしたい・・・」


ぶるっと、寒気がした。


「やめなさい!ほら、サーラちゃんがひいてるじゃないの。サーラちゃん、こっちにおいで。その変態はオルランドが捕まえてるから、安心して」

「は、はい」

ロレーナが手招きするから、アデルモから一番遠い、ロレーナの隣へ椅子を置いて座る。

「ああ、サーラ。もっと僕に尻尾を見せ・・・」

「揃ったようだから、今日の報告と明日の予定を話しておくぞ!」

オルランドがアデルモを遮って話し始めた。

「俺とアデルモで村の周辺を計測した結果、魔素濃度は異常に高いことが判明した。この値は、数日中にドラゴンが出現する可能性がある」

オルランドが私達4人を見渡した。

オルランドはアデルモの隣、テントの側。アデルモは座ってる。オルランドは立ち上がっている。

食事のために起こした焚火は消され、代わりに魔道具のランプが置かれていた。

私の壊れたランプじゃなくて、綺麗な魔道具のランプだよ。

ジャンはランプの近く。

ロレーナと私は、そのランプの反対側に腰かけている。


広場には私達以外に人はいない。


アデルモが立ち上がった。

「僕らの研究から言えることは、魔素濃度の一番濃い場所、すなわち濃度の中心点付近でドラゴンが発生するみたいなんだ」

オルランドが大きく頷く。

「そして、今回、一番濃度が高い場所が・・・村の中だったんだ」


「なんですって?」

ロレーナが唸り、ジャンが声を上げた。

「つまり、村の中でドラゴンが出現するってことか?」

「そういうことになる」


皆が黙り込んでいた。


私一人、話が良くわからずにいた。

村の中にドラゴンが出現するなら、村人を避難させて、それから戦えばいいんじゃないの?

プーラ村の近辺にこれまで現れたドラゴンは、火龍、土龍だ。

もちろん、火龍はアータルオオトカゲの変異種だったし、土龍は巨大ワームかヒュージモール、つまりモグラの魔物が巨大化したやつだった。

およそ1年に一回くらいのペースでプーラ村は危機にさらされ続け、逃げ出す村人も少なくない。

それだけに、残っている村人はドラゴン慣れしているというか、戦わないまでも非難の仕方は心得たものだったよ。


「ねえ、ギルドに連絡して冒険者を送ってもらえばいいんじゃないの?それで火龍か土龍かわからないけど、村の人達には避難して貰って・・・」


オルランドが渋い顔をして頭を掻く。

困った時に頭を掻く癖があるよね、オルランド。

「サーラ、ドラゴンってのは何か、言ってみろ」

「え?えーと、ドラゴンとは言われているけど、土着の魔物や生物が魔素の影響で突然変異して巨大化したもの・・・だっけ?」

「そうだ。じゃあ村の中にいる生物ってなんだ?」

「えっと、飼い猫、飼い犬、ネズミ・・・それから馬?」

ロレーナがため息をついた。

「違うわ、サーラ。一番多い動物を忘れてるわ」

「え?なに?」

「人間よ」


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