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キャンプの準備

ベニートは親切な若者だった。


プーラ村で流行している病気は、老人だけが罹る病気で、高熱とのどの痛みが続くこと。そして、半年くらい症状が続くと死に至るということ。

 

普通の魔力酔いは、微熱、眩暈、倦怠感、吐き気、という症状だ。

そういう症状を訴える者は、村人の中にも何人もいる。

だから、今回の病気も、魔力酔いが慢性化したんじゃないかって言われている。

でも、病気になった老人達は、魔力酔いはあまりしない体質だったそうだ。


それともう一つ。


「これは噂だがな、荼毘に付そうとしたら、骨と一緒に魔石が見つかったらしいんだ」


こちらの世界では、土葬が一般的で、あまり火葬はしないんだけど、病気で亡くなったってことで火葬にされたらしい。

そうしたら、骨と一緒に小さな魔石が出てきたそうだ。


でも、よく聞いてみると、その病気で亡くなった人って、その一人だけらしいし、魔石も、ひょっとしたら服に入っていたのかもしれないって言ってた。



ベニートと別れて、アデルモとオルランドと合流。

ジャンとロレーナも一緒にいたよ。


「どうだった?」

ジャンがアデルモ達に声を掛けていた。

「以前よりも魔素濃度が高い。かなり異常な濃度を示しているな」


オルランドが渋い顔で魔道具の計測器を見ていた。


計測器の小窓には、濃い紫色が見えた。

小窓から見える色で濃度を見分けているらしい。


説明によると、濃い紫色は、通常値の20倍くらいの濃度らしく、魔力を持たない人なら高確率で魔力酔いを起こすレベルなんだとか。


実際、ジャンは軽度の吐き気を催しているし、オルランドとロレーナも少し眩暈がするって言ってる。

いちおう、この3人は魔法が使えないとはいえ、冒険者なので、魔力酔いには慣れている方なんだって。


「サーラは平気かい?」

アデルモがジャンとロレーナの診察をしながら聞いてきた。

診察といっても、目の充血具合を見てるだけだ。どうやら、魔力酔いをしていると目が充血しやすくなるらしい。


「私はなんともないけど」

オルランドとアデルモが同時に頷く。

「まあ、そうだろうとは思ったけど」

もう、じゃあ聞かないでよ。

「これからどうするの?」

ジャンが立ち上がった。

「この村には宿屋が無いからな。村の外れに広場がある。そこなら野営してもいいってさ。それと肉や野菜は農家が売ってくれる」

「そうか。じゃあ僕とロレーナで農家に食べ物を買いに行こうかな。ジャン達は野営の準備を。野営セットの入ったマジックボックスはわかるよね?馬車の荷箱の中だ」

「おう、わかるよ。馬車も広場に移動しておく」

「うん、頼んだよ」


アデルモとロレーナが近くの農家へ行ってしまい、私はジャンとオルランドと広場へと移動した。


アデルモの馬車から箱を下ろす。

マジックボックス、というのはマジックバッグの箱バージョンだよ。

中身の質量を大幅に軽減する効果がある。


その中から、野営のための道具を取り出していく。


前世でキャンプしたことがあるけど、テントを立てるのは慣れれば数分で出来た。

パイプを繋いで十字に組んで、そこに引っ掛けていくだけで簡単だった。


こっちのテントはめんどくさい。

柱は木製で重いし、布も分厚くて重い。とにかく重い。

柱には加工がしてあって、穴を合わせるように組み立てればいいから難しくは無いのだけど、とにかく重いから力がいる。


うん。ジャンとオルランドが作ってくれたよ。


二人がかりで30分といったところ。


地面にシートを敷き、網を垂らす。

虫対策だ。


でも、こんな立派なテントで寝られるのも、馬車とマジックボックスのお陰だ。

かなり重量があるから、普通に馬車で持ち運ぶのは無理があるし、マジックボックスとはいえ、それなりのサイズがあるから、それを運ぶには馬車がいる。


徒歩の冒険者は、防水布を持ち歩くくらいだね。

それもマジックバッグが無いと、かなり重い。


「ねえ、ジャン、近くに水浴び出来るところないかな?」

「え?サーラ、水浴びしたいのか?昨日、宿でシャワーをしてるだろう?」

「してるけど、夏だし、汗かいたし」

「・・・何処の貴族だよ」


うん、こっちの世界では毎日お風呂に入る習慣は無いよ。


無いけどさあ・・・。


出来るなら水浴びくらいはしたいなあ・・・と。


「向こうに小川があったぞ」

オルランドが教えてくれた。

「ありがと。下見してくるね。暗くなったら水浴びするから」


小川を下見して、服を置く場所とか、体を拭けそうな場所とかを確認しておく。

ついでに頼まれた水汲みもしてテントに戻る。


「はい、水汲んできたよ」


差し出したバケツを覗き込んでジャンが顔をしかめる。


「サーラ、桶の三分の一も入ってねえぞ」

「えー、だって重いもん・・・」

「重いって、お前・・・」

「でも、大丈夫だよ、ジャン。こうやって・・・アクアボール!」


魔法で水を足した。


うん、水なんてね、汲んで来なくてもいくらでも出せるよ。魔法で。


水浴びも、川が無くても出来るのだけどね。

広場が水浸しになるし、水浴び用のタライとかが無いし。


それに、なんかアデルモあたりが覗きに来そうなんだよね。

だから、ちょっと離れた場所で水浴びしたいってわけ。


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