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プーラ村

二日後、私達はプーラの村にいた。


オルランドとアデルモが改めて魔素濃度を測ってる。


私は、することも無いからぶらぶらと散歩してた。

村はずれの小川のほとり、大きな岩の上に座って綺麗な水の中を泳ぐ小魚を見ていた。

日の光を反射して、時折、キラキラと光る。


「よう、嬢ちゃん。見かけねえ顔だけどどっから来たんだい?」

通りすがりの兄ちゃんに声を掛けられた。


前世では・・・というか死んでないんだっけ・・・地味子だった私は、記憶のある20代前半まででも片手で数えられるくらいしか見知らぬ男に声をかけれたことはない。

でも、育った村を出てからこっち、街を歩けば毎日、声を掛けられている気がする。


「サンテレナだよ」

そっけなく答えておく。

慣れたとは言っても、まだ急に声を掛けられるのは怖い。

「へえ、こんな田舎に何しにきたんだい?ここいらはドラゴンが頻繁に出るからあぶねえぞ?」


けっこうしつこいな。

改めて声を掛けてきた男を見た。

20歳くらい?地元の農民って感じ?鍬を持ってる。だぶだぶのズボンによれた白いシャツ。胸のあたりのボタンは3つくらいあけてる。

顔は・・・まあまあ。悪くは無いかも。

笑顔は爽やかだ。


「心配してくれてありがとう。けど大丈夫だよ。私、こう見えても冒険者だから」

「へえ、冒険者なのか!俺も一度は村を出て冒険者になろうかって思ったことがあるよ。でもダメだった。うちは農家だからな。それも手広くやってる大農家さ。俺は長男だから後を継がなきゃいけねえ」

そこまで言うと、男は私の座っている岩の上に上がってきた。

鍬は岩の下に置いたままだ。

「よう、俺はベニート。君は?」

いや、なんで名乗らなきゃいけないの?と一瞬、思った。

「サーラよ」

でも、この世界、ネットがあるわけでもないし、個人情報なんて保護されてもいない。名前を知られたからって、何が起きるわけでもない。だから名前を聞かれたら答える、それは礼儀だよ。

「サーラか。かわいらしい名前だ」

そういうとベニートは私の隣に勝手に座った。

 

隣に勝手に座るのも、別にそれほどおかしなことではない。

旅に出てから、他人のことも観察するようになったけど、けっこう見知らぬ男女が隣同士に座ったり、擦れ違いざまに声を掛けたりしてるのを見かける。

お互いに笑顔で。

前世は地味子で、田舎の村で友達少なく育った私には新鮮な驚きだったよ。


いやあ、みんなコミュ力たけえ!


私は、普通に男の子が隣に座ると、意味なくドキドキするよ。

とても笑顔で気の利いたことなんか言えやしない。


なーんてね。

私も、少しは慣れたよ。


「あら?可愛いのは名前だけ?」

「もちろん違うさ!君はかわいらしい。美しい金髪、吸い込まれそうなブルーの瞳、サーラ、君は・・・。例えるなら・・・」

「例えるなら?」

「・・・えっと・・・天使みたいだ・・・」

「ふふふ。ありがとう。でも、残念、私は天使じゃないわ。ただの冒険者よ」

「いや、嘘じゃねえって。村の教会にある天使にそっくりだ」


村の教会っていうと、冠婚葬祭の時にあつまる集会場って感じの場所だ。イメージしやすい言い方をすれば、墓地と併設された町内会の公民館?

教会、神、この世界の神はギリシャ神話っぽい神様だ。

一番偉い神様の名前が・・・確か・・・アメデーオ。混沌から世界を創り出したとされている。

それで、天使と言えばフラヴィア。彼女はアメデーオの娘で、白い翼を持つ金髪の少女の姿で描かれることが多い。ちなみにフラヴィアの夫はグリフォンだ。鷲の頭とライオンの体を持つ伝説の魔獣だよ。だからフラヴィアと一緒にグリフォンが描かれていることが多い。グリフォンは世界にはびこった魔物を退治したと伝えられている。


「天使フラヴィアね?でも、とても畏れ多いから、似ているなんて言わないで?」

「お、す、すまん・・・」

頭を掻いて苦笑いになるベニート。

まあ、悪い人では無さそうだよ。この国の男の人は明るい性格の人が多い。ラテン系の性格なんだろうね。

あ、そうだ。

せっかく話をしているなら、プーラ村に流行している病気の事、聞いておこう。


「ねえ、そういえばプーラの村では、奇病が流行っているって聞いたのだけど?」

顔をしかめるベニート。

「どっからそんな話を・・・って、こういう話はどこからでも漏れるもんだよな。ああ、流行ってるぜ、おかしな病気だよ。老人だけが罹るんだ。うちの親父も寝込んでるさ。咳もくしゃみも出ないが、熱だけが異常に上がる。あと、のどの痛みだな。頭痛がひどくて立ち上がれないらしくてさ」

「原因はわかったの?」

「それがさっぱりだ。冒険者たちには、慢性化した魔力酔いなんじゃねえかって言われたがな」

「魔力酔いって、熱が出るの?」

「出るやつもいるみたいだな。俺は幸い、少し生活魔法が使えるんでな。魔力酔いはしないんだ。でも、俺の友達なんかは、3日に1度は魔力酔いで微熱を出してる。働けないほどじゃ無いんだがな」

「でも、高齢者だけは違うってこと?」

「ああ。でも、こうなったのは1年くらい前からだ。それ以前からも、このあたり一帯は魔素が濃くて、度々、魔力酔いになるやつはいたのに。何が起きてるのか・・・」


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