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ドラゴン

(サーラ視点)

水龍討伐から1週間。


サンテレナの街。


「夜明けの希望」が水龍を単一パーティーで倒したことは噂になっていた。

同時にパーティーに加入した私のことも噂になっている。

報告ではアデルモとオルランドの連係プレーからのパーティー全員での総攻撃、となっているけれど、現場を見に行った冒険者から、焼き尽くされた痕跡があることが話題にされていた。

アデルモがアイス系魔法士なのは知れ渡っている。

私が火系魔法を使えることは隠してはいない。

表立っては言われないけど、遠巻きにする冒険者がいたり、いなかったり・・・。


「サーラ、お前が良ければ、そろそろサンテレナから移動をしようかと思っているんだが」

オルランドが5杯目か、6杯目のエールを飲み干す。

「私は構わないけど・・・」

変な噂にならないうちに街を出た方がいいかもしんないし。

サンテレナの街に来たのは偶然だし。

「アデルモには一応、旅の目的ってやつがあってな・・」

オルランドが語り出す。普段は寡黙なオルランドだけど、酔うと饒舌になる。

今日はオステリア・ライモンドで昼間から飲んでいた。


え?私?

私は、ちびちびと飲んでるだけだよ。オルランドみたいにがぶ飲みしていたりしないよ。


アデルモは各地に出現する大物ドラゴンを狙って旅をしている。

それは聞いたとおりだったけど、その目的は金ではないらしい。


「お前も知ってるだろうが、オレが駆け出しの頃は平和でな。ドラゴンなんてのは滅多に現れなかったんだ。サーラ、知ってるか?魔物が生まれるわけってのを」

「この世界には魔素があり、魔素は生物の姿かたちを変える作用をする」

子供の頃、父親から聞いた話だ。

つまり、魔素っていうのは放射能みたいなものかな?遺伝子に影響を与えて魔物が生まれてくる?

いや、ちょっと違うか。

ゴブリンは最初からゴブリンだもん。

「まあ、それが普通に信じられている説だな」

「じゃあ、本当は違うの?」

「いや、わからねえんだがな」

わからんのかい?

オルランドは酔ってきてるっぽい。

「だが少なくとも魔素と魔物は関係がある。魔石は魔素の結晶化したものってのは正しいみてえだしな。そして魔石は魔物の体内で結晶化する。魔物が巨大であればあるほど魔石もまた巨大になる。それはこれまで倒してきた経験から言っても正しい」

この20年、大型の変異種の魔物が各地で出現。それに伴い魔物の数が爆発的に増加した。変異種は凶暴で周囲の生物を襲う。それが魔物であれ、普通の生物であれ、家畜であれ、人であっても・・・。

いつしか人々は、恐れを込めて、それをドラゴンと呼ぶようになった。

 

「俺達、夜明けの希望はな、その変異種ドラゴンを追ってこの国にやってきたんだ。アデルモを含めて俺達は、あのドラゴンってやつに家族を殺されたり、村を壊されたりした経験を持つものばかりだ。まあ、この20年、あいつらの被害に全く遭わなかったってやつのほうが珍しいだろうがな」

オルランドは、空になったコップを振ってライモンドに追加を注文する。私は半分ほど残っていた自分のエールにアイスミストをかけなおす。

ぬるくなっていたからね。


「最初のドラゴンはプーラの街に出現したって話を聞いてな。このあたりで冒険者ギルドのある街、すなわち、このサンテレナに拠点を構えたってわけだ」

「それで何かわかったの?」

オルランドがライモンドから受け取ったエールを無言で差し出してきた。私も6回目だから無言でアイスミストをかける。

パーティーメンバーが冷えたエールの虜だよ。

「むしろ謎が増えた。プーラの街では奇病が流行っているらしい。ひょっとすると魔素が濃いせいかもしれん」

「プーラの街って魔素濃いの?」

「ああ。それは確かだな。20年前、最初のドラゴンが出現した場所はプーラの村の北、数キロの場所だ。あそこには定期的にドラゴンが現れる。数ヶ月前、我々も討伐に行ったことがある。その時に魔素濃度も測ったが、通常値の10倍はあったからな」

魔素濃度か。

魔素は目に見えない。無味無臭の気体状のものだ。

現代科学に表すと、空気中に含まれるなんらかの物質なんだろうと思うけど、濃度が測れるとは知らなかった。

それを尋ねるとオルランドは嬉しそうに微笑んで教えてくれた。

「もちろん魔道具なんだがな。これはアデルモと俺の共同研究を応用したものだ」


オルランドの説明によると、魔石は魔素の結晶化した物であるが、それを作り出した魔物の種類により特性が異なっている。

火を起こすのに適した物、水を出すのに適した物、武器に使用するのに適した物・・・そのうち、他の魔石や魔素そのものに反応して光を放つ物があったそうだ。

その魔石を研究することで、魔素濃度を測定できる魔道具を作り出すことに成功した、のだそうだ。


「魔素濃度を測れると便利なの?」

よくぞ聞いてくれた、とオルランドは頷く。

「あったりっめえよ。俺達が追うドラゴンは、魔素が濃いところに出てくるんだからな。今はまだデータが少ねえが、これからいろんな場所で魔素濃度を測っていけば、そのうちある程度の予測が出来るんじゃねえかって思ってるんだ」

「へえ、オルランド、本格的な研究をしてるんだね」

「おうよ。それでだな、魔素濃度が10倍ってのはな、いつドラゴンが現れても不思議じゃねえくらいの濃さなんだよ。そんでもって、普通の人間にとっちゃ、魔力酔いするレベルなんだ」


魔力酔い・・・。

私は体験したことが無い。

話には聞いたことがあるけどね。

魔導具なんかを大量に使ってる場所・・・例えば、魔石でお湯を沸かしている公衆浴場のボイラー、とか。あと、大型船舶で、魔導戦艦なんかだと機関室なんかは魔力酔いし易いって聞くよ。

なるほどね、魔素10倍っていうのは、そういう環境ってわけだ。

そりゃ病気にもなるかもしれないね。


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