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かりそめの転生

異世界転生ものには、転生のいきさつという、紋切り型のステレオタイプな導入部であるところのありきたりがあります。

そう、トラックに轢かれて死ぬと神が現れてファンタジー世界へ転生するという部分です。


ここはどういじっても、コショウをきかせるか、バジルを添えるか、あまつさえチョコレートソース掛けにしてみても、所詮はアペタイザーです。


多少、本編の雰囲気とそぐわないところもありますが、前世の記憶にひきずられているということでひとつよろしくお願いいたします。

私の名前はサーラ。苗字は無い。

イブレア村出身、14歳。わけあって村を出て一人旅をしている。

性別は女。


そして前世。日本に暮らしていた。もうけっこういい歳で、おばちゃんと呼ばれる年齢だった。

で、トラックにはねられ・・・てたりしない!生きてるんだよ。


あ、意味わからんよね?意味わからん。

違うんだ、さっき神様がね、声だけで現れて、それで、言うんだよ。


「ちょっと世界を救うために頑張って欲しいかなって思ったので借りてきました。使命を果たしてくれたら元の人生の好きなタイミングに戻してあげるから。それが報酬。頑張ってくれるかな?あ、拒否権は無いけど」


絶句。

死んでもいないのに転生させられた。

それで、唯一無二と思っていた、この、人生が、神の気まぐれだったと。


というか、前世の記憶なんて、ほとんどないんだけど?

ないんだけど、夢の中での自分は、サーラではなくて日本人の女性である自覚があった。

それにしても、神様って、もう少し神々しくて、なんかこう、もっとなんていうか・・・


「お前が聞いている神の声や口調は、お前自身の心の投影に過ぎん。お前にとっての神のイメージを実体化しているに過ぎんよ」



つまり、私の神のイメージって、こういうチャラい感じだったと・・・。

すみません、無神論者の日本人でしたもんね。なんかすみません。


で、私は何すればいいんだ?

って聞いたら、

「いや、だから、聞いてなかったの?使命を果たせって。そしたら、元の人生に戻してあげるから。それも好きなタイミングの過去に戻してあげるからさ。好きなようにやり直せるんだよ?お前の、そのついてない人生をさ」


ついてなかったのか、私。

どんな人生だったんだろうな。

こんなに思い出せないのも、辛くて、いい思い出が全然ないからなのかな。

そんな人生も、やり直しがきくなら・・・


急に心臓を鷲掴みされたような気がした。

何か、忘れてはいけない何か、やり直さなくてはならない理由が。

何故かわからないけれど、そんな気持ちがした。


「まあ、慌てなくても、お前の人生は最大で150年くらいあるからさ、その間に何とかしてくれたらいいから。後、136年もあるからさ。それに世界を救うことだから、まあ気にせんでもわかるよ、そのうち」


そんなこと言われても、何をしたらいいのかわからないというか・・・

人生をやり直すために、別の人生で使命を果たせとか、頭が混乱する。


「じゃあ・・・失敗したらどうなるかだけ教えたげるよ」

ん?失敗したら?

それってつまり、使命とやらを果たせなかったら?


ああ、うん、どうなるんだ?

「簡単なことだよ。元の人生に戻れなくなるんだ。わしは、これまでにも多くのやつらを、この世界に投入してきたんだわな。そいつらは使命を果たせなんだ。そうなるとな、魂は次元の狭間に置き去りになるらしいんだわな。なにせ、元々存在しないはずの魂だもんで。そうなるとなーわしも回収出来んから。元の人生ではポックリ死んでしまうことになる」


うわ、なにそれ、こっわ!なにそれ、怖い・・・いやリアルに怖い。


頼む!どうしたらいいか教えて!お願い、教えて!


「お前、元の人生で残り2年で死ぬ運命だったんじゃ。何故だかわかるか?わからんじゃろ?それと一緒じゃ。わしはこの世界の神じゃ。だが、わからんもんはわからんのじゃ」


つまり・・・どういうこと?

神さえわからん謎を、私が解くってこと?

それ、しかも失敗したら次元の狭間に捨てられるってこと?

「その通りじゃ。理解が早いじゃないか。やれば出来るな。では、よろしく頼むぞ、さらばじゃ」


いや、待て、待てよ、

違うだろ、そんな無茶ぶりされても!


いや、待てよーーーー・・・・・。


と言うところで目が覚めた。

気持ちのいい天気の、原っぱの真ん中だ。

だけど、私の心には土砂降りの雨が降っていた。嵐だ、台風だ、ハリケーンだよ。


私の名前はサーラ。

14歳の女だ。金髪にサファイアブルーの目をしている。

それだけなら容姿に恵まれた美少女、という感じだったんだが・・・耳があるんだ。


あー、あるよな、普通。耳。


ちがくて、

私の耳は猫耳なんだ。


もちろん、人間の耳は無いよ。

だから眼鏡っ子とか期待されても永久に無理だからね。


猫耳は少し小さめかな?

帽子を被ってしまえば隠せるくらい。

だから、今は帽子を被っている。


ハット、と言う感じの黒い帽子だ。


だがもっと問題は尻尾だ。


こっちは存在をこれでもか、というくらいに主張している。

 

もちろん、猫しっぽだな。


黒系の縞柄がついている。

もっと言えば、背中に獣毛が生えている。

尻尾から、背中の真ん中あたりまで。

尻尾と同じような柄になっているな。


つまり、私は獣人だ。

金髪碧眼、猫耳尻尾の少女だ。

前世だったら、めちゃくちゃ萌えただろうな。

しかも魔法使いだし。


あーあかん、急に前世の記憶が戻ってきたせいで本来のサーラの人格が風前の灯火だ。

落ち着け、落ちつんくだサーラ!


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