パーティー加入
そんなわけで、私は「夜明けの希望」に加入することになった。
ジャンが言うには、私はすぐに調子に乗るタイプだから、放っておいたら、すぐに緊張が緩みボロを出す。
大方、前の街で迫害されたのも、気が緩んでデカい魔法でも打ち上げたからだろう、と。
まあ、そうですけど。
オルランドさんが言う通り、圧倒的な火力ではあるけれど、戦闘連携は出来てないし作戦も何もめちゃくちゃだ。それに獣人バレの件もある。フォローは最大限してくれるらしい。報酬も均等割でくれるという。
私は、むしろ少なめでもいいよ、と言ったのだけど、オルランドさんに怖い目で睨まれた。
均等割が「夜明けの希望」のルールなんだとか。
一人一人が自分の役割を果たす、その結果が良くても悪くても一人のせいにはしない。
そのためのルールが均等割。そういうことなんだそうだ。
「さてと、サーラのパーティー加入の件は、それでいいとして、だ。なあ、これどうするよ?え?この焼け焦げ」
体長10メートル以上の魔物の残骸を前にオルランドが言った。
「あの・・・焼き払いましょうか?素材回収出来そうにないなら、焼いちゃうのが手っ取り早いですよね?」
「お、おう。いや、待てよ、サーラ。お前、このサイズの魔物、焼き尽くせるのか?さっきの巨大火球を使った後で?」
「え?出来ますけど・・・インフェルノ、ですけど」
4人が口を開けたまま固まった。
ようやくジャンが、両手で自分の口を閉じて大きくため息をついた。
「サーラさんよ?インフェルノって言ったかい?」
「え、ええ」
「サーラさんよ、今後は人前で、絶対に言うなよ。それは最上級魔法だ。そんなもんが使えるのは生まれながらの生粋の貴族でも一流魔法士だけだ。アデルモだって使えねえ」
え?
ええ~っ?
いやだって、私、お父さんから普通に教わったよ?
魔法の勉強だって、こう、普通に・・・。お父さん・・・は、インフェルノを使うところは見たこと無いけど、詠唱だとか、コントロールの仕方だとか。
ひょっとして、私の魔法の常識、おかしい?
けど、とにかく、出来るんなら見せてくれ、っていうことになり・・・。
私は、4人を下がらせてインフェルノを詠唱する。あ、そっか。詠唱が必要なやつが上級魔法なのかな?ファイヤーボールは無言でも打てるけど、インフェルノは詠唱しないと使えないもんね。
そっか。詠唱知らなきゃ使えないよね。
うん、うん。
水龍の残骸が入る程度の範囲を焼き尽くす。
インフェルノは、灼熱の炎で範囲を焼き尽くす魔法だ。後には何も残らない。
魔石以外はね。
魔石は、インフェルノの灼熱でも溶けたりしない。
不思議。いったい何で出来ているんだろう。
「こんな感じで良かったかな?」
「お、おう・・・」
オルランドが返事をしてくれた。他の3人は呆然としていた。
でも、アデルモなら、覚えられるよね?
「あ、アデルモ・・・。良かったらインフェルノの詠唱を教えますけど・・・」
アデルモが私をチラッと見るけど、すぐに視線を落とした。
「サーラ、何か勘違いしているようだけれど、僕がインフェルノを使えないのは知識の問題では無いからね。というより、根本的なことだが、上級魔法というのは魔法力を大量に消費する。冒険者レベルの魔力では、そもそも足りないのだよ、魔力が、ね」




