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ファイヤーボール

林を抜けた。


林を抜けた先は原野だった。

原野の中に、細い道が続いている。すぐ先に丘が見える。

「あの丘だ!急ぐぞ!」

アデルモが走り始めた。私達も急ぐ。


----------------------------------------------------


丘を登り、大岩の上に立つ。

景色が開ける・・・。


「なんだあれは・・・」

最初に大岩の上に立ったアデルモが通ってきた方を見下ろして唸った。

私達も大岩から下を見下ろす。

「馬鹿でかいぞ・・・」

「あんなやつ初めて見たわ」

「倒せるのかよ、あれ・・・」


林の中を移動してくる巨大な魔物。

そいつは、林の木よりも背が高かった。


今まで、自分たちの背丈よりも高い木や草に囲まれて見ることが出来なかった、敵の姿。

巨大な敵の姿。


ギルドの建物よりも大きい。

 

あれは・・・まるで・・・。


「ゴジラ・・・」

思わず私がつぶやく。

「え?なんだって?」

アデルモが聞き返してきた。

「なんでもないです」

まるでゴジラだ、と思った。ゴジラがなんなのか、私は思い出せなかったけど、口をついて出てきたんだよ。

異常なほど太い後ろ足で二足歩行をしている。動きは遅い。前足は短い。前足っていうか腕っぽい。


「あれは・・・トカゲ・・・じゃないな」

オルランドがつぶやく。


全身は真っ黒。鱗で覆われている。地面を引きずる長くて太い尻尾。


尻尾を引き摺るなんて生物の構造としてどうなの?と思う。

そもそも、あんな遅い動きで捕食出来るのかな?

あ、でも、マンティコアは圧倒してたみたいだね。

そっか、敵の巣に突っ込んでいって、全部倒すっていう戦闘方法なのか・・・。


とにかく、動きの遅さに油断してはいけない。

周囲の敵を一掃する、特殊攻撃があると思ったほうがいいかもしれない。




アデルモが呆然と水龍を見下ろしている。

 

思い出したよ。

前世の記憶に、似た怪獣が出てくる映画を見た記憶がある。

似てはいるけど、別物だけどね。

頭は映画の中のゴジラよりも小さい。体は魚のような黒い鱗に覆われている。背中には変な背びれは無いよ。

ゴジラは・・・なんで生まれたんだっけ・・・?


オルランドが呟く。

「とにかく、対処方法を考えよう。動きは遅いようだ。あの姿ではジャンプ力もあまりないだろう。だが、力は強そうだ」

私は右手を上げた。

「どうした、サーラ」

「あれ、絶対に火を噴くと思います」

「・・・何故そう思う?」

「・・・えと、なんとなく」

「根拠は無しか?」

「ごめんなさい、忘れてください」

「サーラ、何か隠しているのか?思い当たることがあるのなら言って欲しい」

「えと・・・隠しているわけではないんだけど・・・以前、似た怪獣を見たことがあって・・・」

「怪獣?」

「あ、モンスター?とにかく、それは原爆実験で変貌した巨大怪獣で、口から熱線を出す能力があって、戦車や鉄塔を溶かしたり・・・」

「原爆?熱線?戦車?」

オルランドが目をパチクリしながら聞き返してきた。


うん、そうだよね。

意味わからんよね・・・。


アデルモが躊躇いがちに尋ねてきた。

「ちなみに、その怪獣とかいう奴は、どうやって倒されたんだ?」

「たしか、オキシジェン・デストロイヤーとかいう秘密兵器で・・・」

「なんだ、それは・・・?」


たぶん、ただのドライアイスです。


「忘れてください。ただ似てるだけだと思います。ゴジラは身長50メートルでしたけど、あれはせいぜい10メートルですし・・・あれは水龍、ゴジラでは無いです」

「そ、そうか・・・」

アデルモが困ったような顔をしていたけど、気を取り直した。

「とにかく、見ていても埒があかない。今はこちらの方が高い場所にいて攻撃には有利だ。幸い、動きは遅いようだし、陽動作戦としても攻撃し牽制するということでどうだ?」

オルランドが頷く。

「遠距離攻撃になるな。ジャンと俺には出番はないが・・・。水龍の攻撃パターンも知っておきたい」

「そうだな。ロレーナ、弓は届くか?」

ため息をつくロレーナ。水龍までは目測で300メートル。

「届くことは届くけど・・・的も大きいし・・・でも、矢では通らないわね、あれは。魔導具の矢なら効果はあるかもしれないけれど」

ロレーナの弓矢は連射性を重視した小型のものだ。

伝説上の弓矢では射程距離1キロなんていうのもあったらしいけど、ロレーナのような小型の弓では実際の所、せいぜい100メートルというところだろう。300メートルは45度の弓なりに撃った場合に届く距離、という感じだ。重めの矢じりが重力で突き刺さるイメージだ。


うん、普通の矢じゃ無理かもね。


「アデルモ、フリージングアローはどうだ?」

オルランドが尋ねる。

「やってみるか・・・」

「サーラ。アデルモがフリージングアローを撃った後、追撃は可能か?」

「ファイヤーボールでいい?」

「届くのか?」

「届くように撃てばいいんでしょ?」

「・・・おう」

オルランドが頭を掻いている。


オルランド、頭かゆいの?


「一応、聞いておくが、サーラ。お前、さっきのファイヤーボールが最大威力だよな?」

オルランドさん・・・。

「えと・・・最大ではないです・・・」

アデルモが振り向いた。

「何?最大じゃない?ジャン、サーラの最大級魔法はどの程度なんだ?」

「え?それは・・・俺も知らねえ・・・」

全員の目がこちらを向いたよ。

「あ、えと・・・私も知らないっていうか・・・やったことが無い」

アデルモがため息をつく。

「じゃあ・・・こうしよう。今から、僕がフリージングアローで攻撃をする。水龍に到達した後、反応を見てサーラが可能な威力で最大級のファイヤーボールを撃ってくれ。もちろん長期戦を考えて、今、撃てる最大ということでいい。ジャン、オルランドは待機、ロレーナは魔道具の矢でスタンバイ、いいか?」


全員が同意したのを確認して、アデルモがフリージングアローを発動。

全長2メートルほどの氷の槍を生成。

先端が二股に別れ、柄の部分は捩じったような造形になっている。


どっかで見たことがある・・・ロンギヌス・・・?


右手で構え、全力で投げる。そして、魔法で加速させる。


ヒュオっと風を切り、氷のロンギヌスの槍が飛んでいく。

それはグングン加速する。

目標まで300メートル。


水龍が飛んでくる槍に気付く。

けれど、動きは遅い。回避は出来ない。水龍は体を捻るので精一杯。


ザシュっといった感じで氷の槍が刺さった。

左腕の付け根辺り。体長10メートルに対して2メートルの槍だ。


大型犬にボウガンの矢が刺さっているくらいのサイズ感だ。


「サーラ、ファイヤーボール!」

オルランドが叫ぶ。

「はい!ファイヤーボール!」

魔力を込める。いつもより多めに・・・。あ、でも、使い果たさない程度・・・。


両手を前に突き出し、目を閉じて魔力をコントロール・・・。


「おい、サーラ?」

オルランドの声がしたけど、集中は切らさない。

魔力を両腕の先から放出するイメージだよ。

「え、あ・・・サーラ・・・」

ジャンまで、うるさいな。集中してるんだから・・・。

「おま、おいおい・・・」

ロレーナまで・・・。


こんなもんかな?

「いっけえ!」

私は目を開けてファイヤーボールを撃ち出した。


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