会敵
慌てて剣を抜くジャン。
オルランドもグレートソードを構える。
けど・・・。
「ジャン!オルランド!どいてください!木を薙ぎ倒しながら進んで来てます!危険です!」
すぐにメキメキという木が倒れるような音が聞こえてきた。
「サーラ!敵の位置がわかるか!?」
オルランドが叫んだ。
「はい!前方2時の方向、巨大です!ギルドの建物ぐらいあります!距離、150メートル!ゆっくりと接近中!」
「ギルドの建物?!おいおい・・・3階だぞ、あれは・・・」
オルランドが唸る。ジャンとロレーナがアデルモを見た。アデルモは瞬間、固まっていたが、私に振り返る。
「進行速度は変わらないか?」
「はい。木が邪魔で動きが遮られているみたい。たぶん、前足で押し倒しながら進んでいるようです」
アデルモは頷く。
「敵はこちらに気付いているんだな?」
「はい。まっすぐこちらへ進路を向けています」
「では、これからフォクシー村とは反対方向へ進む!我々の任務は時間稼ぎだ!行くぞ!」
「おう!」
オルランドが答え、私も「はい!」と返事をする。
ジャンはオルランドに鉈を渡し、自分はマジックバッグから予備の鉈を取り出す。
フォクシー村は南、私達の真後ろ。敵は二時方向、北東方向。
なので、西の方向、少し北寄りへ進む・・・とはいえ、そんなに都合よく道は無い。
フォクシー村北側は林になっていて、大型の魔物にとっては行動しにくいフィールドになっている。
私達は、その林の中にいる。フォクシー村を出て、しばらくは獣道を通って移動したため、進路は北西方向だった。そのため、沼は北東方向にある。
敵は沼から林に入り、私達を追っているようだ。
「ジャン、オルランド!」
アデルモが先頭の二人に声を掛けた。
「100メートルほど戻ろう。獣道があった辺りだ」
「「おう!」」
私達は急いで移動を開始する。
フォクシー村から歩いてきた獣道は、北西方向へ続いていて、水龍と思われる魔物がいる沼へは続いていなかった。
そのため、途中から道を外れて藪に道を作りながら進んできた。
獣道まで戻れば、行動しやすくなる。
陽動作戦なので、物音は気にしない。
・・・けど・・・。
「オルランド、先に行ってください!私、一番後ろで」
「だが、追いつかれたら・・・」
「後ろじゃないと、敵の気配が感じ取れません!」
「う、うむ。そうか・・・」
オルランドが先行。
10メートルくらいの距離をおいて追いかける。
うん、これならわかる。
まだ距離はある。100メートルくらいかな。
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獣道まで戻り、進路を北西に。
敵の動きは、確実にこちらを捉えている、と思う。
進路を変えた私達に向かって進んできている。
敵までの距離は少し開いたようだ。
一時は気を薙ぎ倒す音が聞こえたけれど、今はそれほどではない。
けど、確実に何かがいる気配はしている。
林の中が騒がしいのだ。
鳥や獣たちが慌てて逃げ出している。
敵の動きをアデルモに伝える。
「このまま林の先まで移動する。幸い、移動速度は速く無いようだ。早足で行くぞ。林の先に丘がある。丘の上に大岩があるようだ。そこで一度、迎え撃つ!」