表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/81

猫耳のこと

フォクシー村に馬車を置いてきた。

ここからは徒歩。警戒しながら進む。

時間に余裕があればフォクシー村で食事や休憩をしてから仕事をしたかったけれど、水龍が迫っているというのなら仕方がないよね。

「サーラ」

アデルモが振り返る。

「なんですか、アデルモ」

「その・・・なんというか・・・」

口籠るアデルモの代わりにジャンが言い放った。

「サーラ、帽子を取ってくれ。その耳、人の耳よりも敏感なんだろう?」

私はジャンを睨んだ。

「サーラ・・・そんな目で俺を見るな。こんな場面だ。可能なら早く見つけて優位に事を進めたいって思うじゃねえか。なあ、そうだろう?」

ふうっとため息をつく。

わからない話じゃないけれど・・・。なんかこう、何か引っかかる言い方だよねえ。

「わかりました」

私は帽子を取るとマジックバックに収納した。ジャンの言う通り、帽子は無い方が遠くの音も聞き取りやすい。

「ほお・・・」

アデルモが目を細めて私を見ていた。と、いうか、私の猫耳を見ていた。

「な・・・」

「あ、これは失礼・・・」

ふっと目を逸らすアデルモ。くすくすと笑うロレーナ。

「ロレーナまで!」

「ごめんごめん、サーラちゃん。実はさ、アデルモ、獣人の女の子が大好きなのよ」

アデルモが「ロレーナ!」と遮ろうとしたけれど、ロレーナは喋るのをやめない。

「いいじゃないの、アデルモ。サーラちゃんだって取りたくない帽子を取ったんだし。取らせたアデルモも、秘密を一つ言わなきゃフェアじゃないわ」

アデルモはため息まじりに唸った。

「アデルモはね、この国の人間じゃないのよ。海を渡った国から来たの。そこでは、もっと普通に獣人が暮らしているわ。差別もそんなにひどくはない。宿屋の受付とかにもケモノ耳の少女が座っていたりしてね。普通に暮らしているの。アデルモは、そういうのを見るたびに嬉しそうだったわ。こっちの国に来てから、そんな機会も滅多に無くなってしまったから・・・。久しぶりに見たわ、アデルモの、そのにやけた顔」

アデルモは目を逸らしたままだ。

「そうなのですね。アデルモはこの国の人では無かったのですね」

「あら?私もよ?オルランドもそう。ジャンはクルタス王国に来てからメンバーになったけど」

「そうだったんですか。噂ではアデルモは貴族の出だって・・・」

「ええ。貴族よ、ねえ、アデルモ」

楽しそうな感じでロレーナが言う。

「ロレーナ、からかわないでくださいよ」

「ふふ、アデルモはリグリア王国の子爵家六男なのよ。噂と違って、没落貴族では無いわ。ちゃんとサンレモ家は存続してるわよ。ねえ、アデルモ?」

「ロレーナ、家の事はいいじゃないですか。もう10年近く実家には帰っていないのです。貴族としての地位なんて、とうの昔に捨てましたよ。それよりも仕事です。サーラ、何か聞こえませんか?」

私は耳をすます。

音が聞こえる、というよりも気配を感じ取っている、という感覚の方が近いかも。

なんだろ、遠くの方で何か大きなものが動いている気配がする。

「向こうの方・・・大きな魔物の気配がします」

アデルモが少し目を見開く。そして「やはり聞こえるのか」とつぶやいた。


私が指さしたのは村からほぼ真北の方角。たぶん、距離にして1キロくらい。近づいてきているという感じではない。動きも大きくは無い。

「アデルモ、何か嫌な雰囲気を感じるよ」

「嫌な雰囲気?」

「うん。大きな魔物の気配のすぐそばに、いくつもの魔物の気配を感じるような気がするんだ。でも、そっちの動きは・・・何故だか感じない」

「つまり・・・」

「うん、そうかもしれないね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ