プロローグ(1)
世界観の説明です。
昔懐かしいファンタジーには、こういう導入部があったので作成しています。
ですから読み飛ばしても本編に影響いたしません。いずれ本編で説明されていきます。
本編序盤はのんびり異世界ものです。
とりあえず説明はいいよ、という方は次へ飛んでください。
その世界には魔法があった。
魔法とは魔力を制御し、魔素を利用して事象を起こす技術である。
万物全ては魔素を含み、空気中にも魔素は広く分布していた。
人類社会は魔法技術により発展し、魔素の凝縮体である魔石をエネルギーとして多種の魔導具を発明した。
そして人類は魔道具を利用して文明を享受した。
一方で己の肉体に魔力を持ち、魔法を使える者もいた。彼らを魔法使いと呼び、その中でも戦闘をはじめ各種の有益な能力を持ち、体系的に学んだものを魔法士と呼んだ。
同時に自然界においても魔力を持つ生物が存在し、それらを人類は「魔物」と呼んで恐れると同時に、しかし魔物は体内に魔石を生成するため、人類はそれらを狩った。
時代は下り、魔法文明が発達する頃になると、魔石不足は深刻化していた。
魔石は魔物から採れる鉱物であり、すなわち乱獲による魔物の減少を招いた。魔素は世界中あらゆる場所に存在していたが、原理的に魔導具は空気中の魔素を利用しては発動しなかった。
魔石は魔素の単純な凝縮体では無く、魔力と交じり合って極度に凝縮されたエネルギー物質であった。
当初、人類は川などの自然界で魔石を入手することもあったため、自然界にも魔石は存在するのではないかと考えた。
だが、魔石研究が進むと、それは直ちに否定されることになる。
魔石は魔法士の魔力程度では凝縮出来ないほどの魔素が含まれており、魔力は生きとし生けるものの体内でしか観測されなかった。
魔石は生命活動に伴い発生するものだったのだ。
また魔石はエネルギー体であり、その一つの特徴としてエネルギーの自然放出をしている。最も単純な魔導具は、この自然放出エネルギーを利用することからも、古くから知られた事実の一つである。
そのエネルギー半減期は数年から十数年であり、地球における石炭のように古代の生物の化石から発見される可能性は理論的に有り得なかった。
このことは魔石研究の推進に拍車をかけた。
すなわち、安定的に魔石を供給するための研究である。
だが後に、魔石研究は魔物よりも恐ろしい存在を生み出すことになる。
魔族、である。
この世界は、魔族とその長である魔王によって支配され、人類の滅亡、ひいては世界の滅亡を招く未来が確定している世界である。
魔族の出現は、魔石研究の行きつく先にあった。
二つの前提が、それを示していた。
1,魔石は魔物の体内で生成される。
2,人間は魔力で魔石を生成できなかった。
彼らは人類の亜種であると同時に魔物であった。それは意図して人工的に生み出されたものではなかったが、人類にとってある貴重な特色を兼ね備えていた。
彼らは、魔石を体内で生成し、そしてそれを継続的に取り出すことが出来たのだ。
魔族は当初、人類の家畜や奴隷として増えていった。
だが、彼らは人類同様の知能を持ち、人類よりも力が強かった。
数十年の後、魔族は奴隷解放を求めて人類に戦いを挑むこととなる。
これが世界の終わりの始まりのあらましである。
この物語は、魔石研究の時代、未来に起きる悲劇を回避するために活動した、一人の少女と、その仲間たちの物語である。