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第八話 クイズ!マグマ・ザ・ダイブ! 前編

 俺は勇者ユシヤ。

 もはや説明不要だが、今回も気が付くと知らない場所にいた。


 今回は何故か椅子に座らされている。

 床はなく、宙ぶらりん状態だ。

 何か器具のようなもので椅子に固定され、立てないようになっているが、右手は自由に動かせるようだ。

 目の前の台にはスイッチのようなものがある。


 円柱状の建物のようで、周りを見渡すと同じように椅子に固定された男女が五人いた。

 建物の中心部は空洞になっており、下を見ても闇が続いているだけだった。

 俺たちが座らされている椅子はスイッチが置かれた台と一体化しており、後ろにも謎の器具が設置されている。

 まるで上下に動かすためにあるような…?


 その謎の器具にはそれぞれ例の魔法の盾がついている。

 どの位置からでも魔法の盾が見えるためにだろう。


 しかしやたらと暑い…。

 もはや暑いを通り越して熱いだ…。


「こ、ここはどこですかな!?」

「い、一体何が…?」

「ちょ、どうなってんだよこれ!」

「え!?何これ!?」

「嘘!動けない…!」


 みんなも気が付いたようだ。


『お目覚めかな、諸君』


 魔法の盾がブンと音を立てて仮面をつけた魔物の姿が映し出される。

 一体今度は何をさせるつもりだ…?

 というか最初に言っていた“デスゲームと戦う”はいつやるんだ!?

 いつまでもデスゲームが出てこないじゃないか!


『今回はクイズ界に名をはせる君たちを招かせていただいたよ』


 クイズカイ…?

 なんだ?街の名前か?

 まいったな、俺の知らない街に俺(勇者)の名が届いていたのか。


『まず1番の席、数々のクイズ大会を総なめし、付いた異名は“クイズ王”!現在はヨーチューブで活動中のキング・オブ・キング!久井豆央!』

「て、照れますなぁ」


 太った男はヒサイ・マメオと言うらしい。

 彼は王様なのか…!無礼な態度をとらないように気を付けないと…!


 それにしても今日の仮面の魔物はいつもとなんだかテンションが違うな。


『次に2番の席、クイズに愛されクイズを愛した男。あの超人気テレビ番組“頭脳キング!”はこの男がいなければ生まれなかった!クイズ作家、南文太!』

「あの、それよりここはどこですか…?」


 メガネをかけた中年の男はミナミ・フミタというらしい。


『3番の席、もはや説明不要!彼の顔を見ない日はない!年間出演本数500本!数多のクイズ番組のレギュラーを持つ男、大成海!』

「あ、もしかしてドッキリ?ちょっと、人が悪いなぁ」


 整った顔立ちの爽やかな男がオオナリ・カイというらしい。


『4番、かの名門ジーニアス大学に首席で入学!その上今年のミスジニ大!才色兼備という言葉は彼女のためにある!海藤詩弥!』

「待って、先に説明してよ…!」


 長い黒髪の女がカイトウ・シヤというらしい。


『5番、女子高生クイズ3連覇!その頭脳はもちろん、他のチームに解答させない驚異のスピード!早押し女王、早尾志夜!』

「え?え?私今日収録なんて聞いてない…」


 髪を頭上でひとつに結った若い女がハヤオ・シヨというらしい。


『で、最後。6番』


 俺の番だ。


『自称勇者の痛い奴。ユシヤだ』


 …俺だけ説明に悪意がないか?

 それに俺は自称勇者ではなく、本物の勇者だ…!


『さて、君たちにはこれからクイズに挑んでもらう。死のクイズに、な』

「!?」


 仮面の魔物の言葉にみんなが言葉を失う。


 そうか、クイズというのは魔物の名前だったのか。

 しかしクイズと戦えと言うのに椅子に縛り付けるとはどういうことだ!

 これでは戦うことができない!

 俺たちをなぶり殺しにするつもりか!

 卑怯者め!


『君たちの座っている椅子はクイズの成否と連動している。クイズに正解すれば上昇、クイズに間違えれば下降する。また、ラウンドごとに一番正答率の悪かった者の椅子も下降する。下降し続けると、マグマにダイブだ』


 マグマ…そうか!この熱さはマグマのものだったのか!


『クイズ!マグマ・ザ・ダイブ!スタートだ!』

「あ、あはは、そういうコンセプトかー」


 オオナリ・カイが肩をすくめて戸惑ったように笑う。

 それに気を悪くしたのか、仮面の魔物は先ほどまでのテンションとはうってかわって低い声でこう言った。


『おや、信じていないのかね?では試しにギリギリまで下降してみようか』


 仮面の男がパチンと指を鳴らすと、俺たちが座っている椅子が猛スピードで下降する。


「キャアアアア!」

「ひいいいい!」


 辺りに悲鳴が響き渡る。

 熱は増していき、視界に真っ赤に煮えたぎるマグマが映る。

 マグマから人間三人分ほどの距離で椅子は急停止し、一瞬の静寂が訪れた。


「い、いや、CG…だよな?」


 オオナリ・カイがそう口にするが、履いていた靴が脱げるとマグマに落ち、ジュッと音を立ててマグマに溶けていった。


 それを皮切りに再び辺りは阿鼻叫喚となる。


「ふざけんなよ!なんだよこれ!事務所通してんのか!?」

「いやあああ!死にたくない!なんで!なんで!?」

「神様!神様!!」

「落ち着くであります!クイズに正解すればいいだけですぞ!我々はクイズの猛者!落ち着いて答えれば大丈夫でありますぞ!」


 阿鼻叫喚を沈めたのはヒサイ・マメオの言葉だった。


 ほう、彼らも猛者なのか。

 クイズがどんな魔物かはわからないが、俺たち六人で協力すればたやすいな!


『やる気になってくれたかね。それではクイズを始めようか』


 仮面の魔物が再び指を鳴らすとゆっくりと椅子が上昇し、先ほどの位置で止まる。


『第一ラウンドは早押しクイズだ!』

「早押しクイズ…!やった!それなら得意!」


 ハヤオシクイズという言葉にハヤオ・シヨの目に希望が宿る。

 ハヤオシクイズ…一体どんな魔物なんだ?

 右手一本で戦えるだろうか…?


『第一問!日本三大庭園といえば、偕楽園、こ』


 ピンポーン!


「兼六園!」


 仮面の魔物が何やら詠唱したかと思えば、ハヤオ・シヨが目の前にあるスイッチのようなものを押し、謎の呪文を唱える。


 …うん?

 一体どういうことだ?


『正解!5番の椅子が上昇します!』

「やった!」


 うん…?うん?

 …そうか!これは魔法バトルか!

 しまった!俺は魔法が使えない!

 足手まといになってしまう…!


『第二問!ピカソの』


 ピンポーン!


「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンディシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソですぞ!」


 ヒサイ・マメオが長い呪文を唱える。

 聞いたこともない呪文だ…!

 さぞかし高威力の魔法に違いない…!


『正解!1番の椅子が上昇します!』

「やりましたぞー!」


 こうしてクイズへの戦いは熾烈を極めた。

 俺を除いて。


『第一ラウンドはこれで終了です。一番正答率の悪かった6番は椅子が下降します!』


 仮面の魔物がそう言うと同時に、ガクンと音を立てて俺の椅子が下降する。

 結構下がるんだな…。

 たしかにどれだけ椅子が下がるかは言っていなかった。

 しかしまだマグマは見えないから余裕はありそうだ。


 それにしても…仮面の魔物、口調が変わっているのは何故だ?



■プレイヤー一覧■

ユシヤ(自称勇者)

久井豆央ひさい まめお(ヨーチューバー)

みなみ 文太ふみた(クイズ作家)

大成おおなり かい(タレント)

海藤詩弥かいとう しや(女子大生)

早尾志夜はやお しよ(女子高生)



第八話 完


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