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第四話 バトルロワイヤル 前編

 俺は勇者ユシヤ。

 例のごとく、気が付いたらまた知らない場所にいた。

 しかし今回は屋内ではなく、砂浜だった。


「え?ここどこ…?」

「家にいたはずなのになんだこれ…!」

「何これ?何?何?」

「は?スマホ圏外なんだけど」


 俺も含めて14人…今回はいつもより人数が多いな。

 やはり誰もが皆混乱しているようだった。


『お目覚めかな、諸君』


 いつもの声が聞こえる。

 声の方を見ると流木にもたれかかるようにして、例の盾に擬態した魔物がいた。


『この島は君たちのために用意した無人島だ。といってもライフラインは充実しているから安心してくれたまえ』


 らいふらいん…?

 アイテムの名前か?

 ライフという言葉からして回復薬のことだろうか。


『島の中央にはホテルがある。食料も風呂もそこにあるから自由に使ってくれたまえ』


「てめぇ誰だよ!?」

「あたしたちをこんなところに連れてきてなんのつもり!?」


 口々に声を上げる。

 すると盾に擬態した魔物は楽しそうにクックックと笑った。


『ああ、すまない。肝心なことを伝え忘れていたようだな。君たちにはこの島で殺し合いをしてもらう』

「は…?」


 盾に擬態した魔物の言葉に場は一瞬で凍り付いた。


 殺し合い…?

 デスゲームと戦うのではなく、俺たちで殺し合えということか…!?


「ふざけるな!何故俺たちがそんなことをしなきゃいけないんだ!」


 シンとした静寂を切り裂いたのは俺の声だった。

 俺はロプーレのみんなを守ることが使命だ。

 その俺が何故守るべきみんなと殺し合わなければいけないんだ!

 俺の言葉を皮切りに、みんなも“そうだそうだ!”と声を上げる。


『おっと、話は最後まで聞いてくれたまえ。生き残った一人はこの島から脱出する権利をプレゼントしよう。副賞として100億円をつけて、ね』


 ざわ。


 100億円という言葉ににわかにざわつきはじめる。


 えん…?

 100億ゴルドの間違いか?


 100億ゴルド…き、聞いたこともない額だ。

 薬草が10ゴルドで、鉄の剣が100ゴルドだろう?

 も、もしかしたら国すら買えてしまうんじゃないのか…!?


*説明しよう!

 100億ゴルドは日本円にして大体1兆円くらいだぞ!


『どうかね?君たちが今一番欲しいものだろう』

「100億円…?」

「ホントに…?」


 高額な賞金にみんなの目の色が変わる。

 …嘘だろう?

 金で人を殺せると言うのか…?


「待て、騙されるな!あいつの言っていることが真実とは限らないだろう!」

『おっと、信じてもらえないかね?では実際に見せてやろう。これはすべて生き残った一人のものだ』


 そう言うと盾に擬態した魔物から顔が消え、盾が何やら人物が描かれたチケットのような紙切れを映し出す。

 どういう原理だ…?

 そういえば水晶玉に未来を映し出す占い師がいたな。

 あれは盾に擬態した魔物ではなく、どこか別の場所を映し出す魔法の盾なのか?


 って今はそんなことはどうでもいい!


「ボロを出したな!なんだその紙切れは!そんなものを貰ってどうする!?」


 ゴルドは丸い形をした金色の硬貨だ。

 形状も材質も違う。

 騙すならせめて似たものを用意することだな!


「本物だ…!本物の100億円だ…!」

「あれが私の物に…!?」

「あれさえあれば…」


 しかし、みんなはらんらんと目を輝かせながら魔法の盾を食い入るように見つめている。


 これは一体どうしたことだ…?

 何故あんななんの価値もない紙切れをゴルドと信じ込んで…。

 ハッ、幻術魔法か!

 みんなにはあれが100億ゴルドに見えているのだ!

 俺は鍛錬を続けていたから幻術が効かなかったんだ!


「金…金金金金…」

「目を覚ませ!あれは偽物だ!」


 呪文のように金金とブツブツと呟いている無精ひげの男の腕をつかむ。

 しかし男は俺の手を振り払うと座り切った目で俺を睨んだ。


 まずい…!これは覚悟を決めた目だ…!

 軽く攻撃して気絶させるか…?

 ダメだ、そんなことをすればそれをきっかけに殺し合いが始まってしまう!


「その人の言う通りよ!人殺しなんかバカげてるわ!」


 どうするべきか決めあぐねていると、長い黒髪の女が俺の言葉に同意した。

 おお!俺以外にも幻術にかかっていない人がいたのか!


「ちょっとみんな落ち着きましょう。あんな言葉を頭から信じるのは危険だわ。ね?」


 長い黒髪の女が子供に言い聞かせるように、ゆっくりと優しくみんなに声をかける。

 その言葉にみんなも“たしかに…”“どうかしてたみたいだ…”と正気を取り戻していく。


 おお…幻術を治すスキルを持っているのか。

 彼女はヒーラーだろうか。


「君、ありがとう。俺だけではみんなを正気に戻すことはできなかった」

「いえ、こちらこそ。あなたがいてくださって心強かったです」


 そう言うと長い黒髪の女は頬を染め、はにかむように笑った。

 美しい…。まるで聖女のようだ…。


「お怪我はありませんでしたか?」


 そう言って先ほど無精ひげの男に振り払われた俺の手に優しく触れる。

 彼女も怖かっただろうに俺の心配をしてくれるなんて、心まで聖女なのか…!


 なんだか顔が熱くなって、頭もぼうとしてきた気がする。

 いかんいかん、勇者たるもの紳士であらねば。


「俺はユシヤ。君は?」

「私は佐木司。絶対にみんなでこの島から脱出しましょうね!」


 そういうとサキ・ツカサは女神のように微笑んだ。



■プレイヤー一覧■

ユシヤ(自称勇者)

佐木さき つかさ(保育士)

浦生がもう しのぶ(介護士)

日野来馬ひの くるま(土木作業員)

金家かねいえ みやこ(華道家)

保栖ほずみ 十来衣とらい(サービス業)

 文一ふみひと(無職)

藤ノ谷(ふじのや)マイ(女子高生)

近間三冬ちかま みふゆ(会社経営)

鳥羽宮とばみや けい(フリーター)

伊村いむら しょう(トラック運転手)

三越春璃みつこし しゅり(主婦)

海原うみはら たけし(野球選手)

地谷沙琴ちたに さこと(女優)



第四話 完


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