第三十二話 ボスラッシュ~VS黒幕5兄弟~
俺は勇者ユシヤ。
さあ次もモンスターを倒して部屋を突破するぞ!
きっともうすぐラスボスの部屋に違いない…。
何故ならラストバトルの前には中ボスと連戦するものだからだ!
【お約束62 ラストバトルが近づいてくるとボスラッシュがある。RPGよりはアクションゲームによく見られる】
「さあ次のモンスターはどいつだ!」
勢いよく扉を開け、次の部屋に足を踏み入れる。
そこにいたのは色違いのマスクをかぶった5人のクロマクだった。
こいつらは…高威力の魔法を使う魔導士のクロマクたち!
何故か戦闘の途中で逃げてしまったが!
そして、ここに来る前に最後に俺が戦ったモンスターでもある。
つまり、こいつらを倒せば次はいよいよラスボス!
「最後はお前たちが相手か…!せんてひっしょ…!」
「待て!」
先制を取られる前にと張りぼての剣を構えるが、俺が一歩踏み出すより先に赤いマスクのクロマクがそう叫んだ。
「待て!俺たちは敵じゃない!」
「そうだ、俺達は“ブラックスター”たちに反旗を翻したのだ」
「やっぱりヒーローはセイギのミカタじゃないとネ~」
「つまり、我等はお前の仲間になりたいということだ」
「昨日の敵は今日の友っしょ~」
カラフルなマスクをかぶった5人のクロマクが口々にそう言う。
な、なんだって…。
ここにきてついに俺に仲間が…!
正直一人旅は心細かった…!
しかもこいつらは魔導士。
俺は魔法が一切使えないから非常に助かる!
これで戦いやすくなる!
普通はモンスターを倒した後に仲間になるものだが、この際気にしないでおこう!
【お約束63 モンスターを倒した後に仲間になることがある】
「正義の心が目覚めたんだな!歓迎する!これから俺たちは仲間だ!」
「ああ!よろしくなユシヤ!」
赤いマスクのクロマクとがしっと固い握手をする。
…本音を言えばもっと早くに仲間になってほしかったものだが。
俺の予想では多分次はラストバトルだぞ。
***
なーんてな。
これが俺達の作戦。
名付けて『仲間になったふりをしてユシヤを背後から襲って殺そう作戦』だ!
チョロすぎるユシヤなら絶対に引っかかってくれると思っていたぞ!
どう考えてももうデスゲームどころかパニックホラーですらない気はするが、ユシヤを殺したもん勝ちだ!
やっぱり俺達黒幕5兄弟は最強だ!
弟たちに目配せしてニヤリと笑い、俺はユシヤと偽りの握手を交わした。
「じゃあ必要になったら呼び出すから二人は酒場で待機していてくれ」
…?
『一体どういうことだ?』と俺が口にするより早く、ブラックソイルとグリーンサイクロンがユシヤの入ってきた入口に向かって早足で歩き出した。
「お、おい!どこに行くんだ!?」
「わ、わからぬ!足が勝手に…!」
「わーん!助けてみんなー!」
慌てて二人を追いかけたが、隣の部屋には二人の姿はなかった。
俺は二人が隣の部屋に入ってすぐにドアを開けた。
なのに二人の姿はもうなかった…。
消えた…?
まさか、俺たちの作戦はユシヤにバレていた…!?
だから先手を打たれてしまったのか!
「畜生!よくもブラックソイルとグリーンサイクロンをやってくれたな!」
***
「は?パーティは4人までだから酒場に行ってもらっただけだぞ」
【お約束64 基本的にパーティは4人まで。あぶれたメンバーは酒場や馬車で待機する】
「やはりアホのレッドフレイムの作戦に乗ったのが間違いだったな」
「『仲間になったふりをしてユシヤを背後から襲って殺そう作戦』はシューリョーってことだなァ!」
な、なんだってー!?
仲間になってくれたと思ったのに、嘘だったのか…!!
くそっ!騙された!
嬉しかったのに!仲間になってくれて嬉しかったのに!!
「俺のことを水の使い手だと思っているようだな。しかし俺は有能だからこんなこともできるのだ!くらえユシヤ!」
「ちょ!それオレたちにもダメージ入るヤツ!」
「イエローサンダーこっちに来い!」
青いマスクのクロマクが手を天井にかざすと同時に、黄色いマスクのクロマクと赤いマスクのクロマクが慌てふためいた様子で叫んでいる。
一体どんな技がくるのかと身構えていると見る見るうちに部屋の気温が下がり、床も壁も天井も凍り付いてしまった。
こいつは水属性だと思っていたが、氷属性でもあったのか!
【お約束65 水属性と氷属性は基本的に別物扱い】
赤いマスクのクロマクと黄色いマスクのクロマクはいつの間にかたき火を作ってちゃっかりあったまっているようだ。
「寒いか、ユシヤ。だがもっともっと下げるぞ!このまま凍えて死んでしまえ!」
くっ!寒い、本当に寒い!
このままじゃ…このままじゃ…
「風邪を引いてしまう!」
風邪になると毎ターンダメージを食らってしまう!
*風邪状態
毎ターン一定量のダメージを受ける状態異常。
何故か戦闘が終わると治る。
基本的に水属性や氷属性よりも風属性のモンスターがよく使ってくる。
多分ダジャレも兼ねている。
「風邪だと?何を生ぬるいことを…!お前はここで凍え死ぬのだ!全力だ!摂氏マイナス273.15度(絶対零度)!!」
「寒い!!」
*ユシヤは 風邪で 100の ダメージ!
「何故死なん!?」
青いマスクのクロマクが何か叫んでいる。
うん?ちゃんと風邪でダメージ受けているぞ?
【お約束66 マイナス何百度でも逆にプラス何百度でも死なない】
「よし、次は俺のターンだな!反撃だ!」
「くっ!」
一歩踏み出した瞬間、そのまま俺は直線状に滑り出してしまった。
しまった!あいつの狙いはこれだったのか!
【お約束67 凍った床に乗ってしまうと凍っていない場所にたどり着くまで延々と滑り続けることになる。滑り止めの靴などは存在しない。ちなみに何故かモンスターは滑らない】
「…なんかずっと滑ってるな…」
「あんな化け物勝てっこないよな!よし、今のうちに逃げよう!」
「サンセー!」
つ、次は俺のターンだ…!
ま、待っていろ、青いマスクのクロマク…っていない!逃げた!また逃げた!
あいつらはメタルクロマクか!?
【お約束68 やたら逃げるモンスターがいる。すぐに逃げるのでなかなか倒せないが、倒すとものすごい経験値が手に入る】
■今回の生還者一覧■
ユシヤ(自称勇者)
第三十二話 完
■おまけ情報■
逃げたレッドフレイムたちは居酒屋にいたブラックソイルとグリーンサイクロンと無事に合流することができたぞ!
グリーンサイクロンはべろべろに酔っぱらっていたぞ!
グリーンサイクロンは未成年に見えるがれっきとした成人男性だぞ!
ちなみにブラックソイルは未成年なのでウーロン茶を飲んでいたぞ!
■おまけ情報2■
黒幕5兄弟は5人で相談し、どうあがいてもあの化け物に勝つことは不可能と結論付け、黒幕を引退したぞ!
今はスーツアクターとしてデパートや遊園地などのヒーローショーで活躍しているぞ!多分黒幕なんかよりもこれが天職だったぞ!
■名前の由来■
ユシヤ(勇者)…勇者
空野剛夏(黒幕:レッドフレイム)…悪の業火
空野紫吹(黒幕:ブルーアクア)…悪のしぶき
空野 颯(黒幕:グリーンサイクロン)…悪の疾風
空野大地(黒幕:ブラックソイル)…悪の大地
空野 雷(黒幕:イエローサンダー)…悪の雷




