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第二十九話 ボスラッシュ~VSヒプノ死スト~

 俺は勇者ユシヤ。

 ここを出たら絶対に眼鏡のクロマクを倒すと決意しながら鉄扉を開けた。


 案の定ここも先ほどまでの部屋と同じ構造をしている。

 今入ってきた扉の直線上にある鉄扉の上に設置された魔法の盾は顔半分を隠した仮面をつけている男の姿が映っていた。


 えーと、あいつは…そう!ヒプノ死ストと名乗ったクロマクだ!

 なんだか目の焦点が合っていないようだが大丈夫なのか?

 いや、今は敵の心配をしている場合じゃない!


「ヒプノ死スト!俺は一刻も早くここでデスゲームを倒し、眼鏡のクロマクも倒しに行かねばならないんだ!」

『デスゲームを倒す…?フフ、面白いことをいいますね。これでも貴方は倒せるんですか?』


 ヒプノ死ストがそう言うと同時に、ヒプノ死ストを映し出していた魔法の盾の映像が紐で吊るされたコインに変わった。


 …?

 あれで何をするというんだ…?


『さあこのコインをじっと見つめて…』


 紐で吊るされたコインがゆっくりと左右に揺れ始める。

 一体これがなんなのかわからないまま、揺れるコインを目で追う。


『今から出てくるのは貴方が一番愛しい相手です…。愛しくて、愛しくて、たまらない、あの人が出てきます…』


 愛しい相手…?

 レイヤのことか…?


 まさか、こいつ、レイヤに何か…!!


 そう考えると同時に鉄扉がギイという音を立てて開いた。

 どうか予想が外れてほしいと願ったが、俺の願いもむなしくそこにいたのはレイヤだった。


「ユシヤ…」

「レイヤ…!どうして君がここに!?」


 俺と同じようにさらわれてきたのか

 俺がレイヤを好いていると知られて人質にされたのか

 怪我はしていないか

 酷いことはされなかったか

 そんな考えが頭の中をぐるぐると回る。


 レイヤに向かって一歩踏み出そうとしたが、先に走り出したのはレイヤの方だった。


「ユシヤ!助けに来てくれたのね!」


 レイヤが俺の腕に飛び込んできた。

 その手は小さく震えており、恐ろしい目に合っていたいたことが伝わってきた。


「レイヤ、すまない…。俺のせいで君が恐ろしい目に…」


 申し訳なさに視線を落とし、眉間に皺を寄せる。

 しかしそんな俺にレイヤは優しい言葉をかけてくれた。


「いいのよ、こうして助けに来てくれたから。…もう、離さないで」


 俺を抱きしめるレイヤの手に力がこもる。


 ああ…レイヤ…、なんていじらしいんだ…!


「好きだ!!!!!!」

「え…?」


 …ハッ!

 しまった、つい声に出してしまった…!

 ど、どうしよう。

 気まずい空気が流れている…。

 多分10秒も経っていないとは思うが、永遠のように感じてしまう。

 こ、この空気をなんとかしなければ…!


「い、今のはその、仲間としての…」


 しどろもどろになりながら言葉をつなごうとしたが、レイヤが俺の言葉を遮った。


「嬉しい…。あたしもユシヤのことが好きだったから…」


 !!!!????


 レイヤも、俺のことが好きだったのか!?

 こ、これが両想いってやつなのか…!

 戦いしかなかった俺に、ついに俺に彼女が…!


「君も俺のことを好いていてくれたなんて…!必ず君を幸せにする!好きだレイヤ!」

「あたしも!浮気なんか許さないからね!」


 レイヤを強く抱きしめると、レイヤも俺を抱きしめ返してくれた。


 ああ、なんて幸せなんだ…。

 このまま時が止まってしまえばいいのに…。


 …ん?でも、何か、忘れているような…。




 ***




 フフフ…、まんまと僕の催眠術にかかりましたね、ユシヤ。

 まさか貴方の愛しい女性が僕だということにも気づかずに!


【お約束㊾ 魅了を使ってくるモンスターがいる。魅了状態になると仲間を攻撃してしまう。仲間がいない場合は魅了状態が解除されるまで行動不能になる。主に美女の姿をしたモンスターが使うが、自分を美女だと思い込んでいるモンスターも使ってくる】


 やっぱり僕、“ヒプノ死スト”の催眠術は完璧です!

 前回は少しだけ失敗してしまいましたが、僕が本気を出せばこんなものです!

 そして僕が直接ユシヤを葬ることで、僕は貴方というトラウマを完全に克服します!


 今、ユシヤの目には僕が愛しい相手に見えています。

 もうどうしてここにいるのかもわかっていないはずです。

 貴方は永遠に覚めない幸せな夢の中で死ぬんですよ!


 おっと、しかし油断はしませんよ。

 ナイフで刺しても毒を飲ませてもユシヤが死なないことは知っています。

 だからここは確実に葬らせていただきます。


 そっと懐から拳銃を取り出す。

 これは以前僕を捕えようと、デスゲームに乗り込んできた馬鹿な刑事から頂戴したものです。

 その刑事ですか?もちろん死にましたよ。

 ああ、思い出すだけでゾクゾクするなぁ…。


 仲間と手と取り合い、時には信じた仲間に裏切られ、最後の部屋にたどり着いたのは刑事ただ一人。

 そしてついに黒幕である僕と対峙した刑事は僕を追い詰める…。

 「何のためにこんなことをしたのか」という刑事の問いに「どんな虫けらも死ぬ瞬間は輝くんですよ。僕は貴方たちを輝かせてあげたんですよ」と答える僕。

 「じゃあお前も輝かせてやるよ、虫けら」と吐き捨て、刑事は引き金を引く。

 でも途中から刑事は僕の催眠術にかかっていたのです!

 刑事が撃った相手は愛しい愛しい彼の妻…。

 我に返った後、絶望に打ちひしがれて妻を撃ち殺したその拳銃で刑事は自殺しました!

 ああ!なんて馬鹿で愛しいんでしょうか!


 おっと、いけないいけない。

 少し興奮しすぎたようです。


 弾はまだ残っています。

 さすがの不死身のユシヤも脳を破壊されたら死ぬしかないでしょう?


「死んでください、ユシヤ」


 ユシヤのこめかみに拳銃を当て、そう呟いて引き金に指をかけた。




 ***




「ユシヤ、子供は何人ほしい?あたしはユシヤに似た男の子が欲しいわ」

「俺はレイヤに似た女の子が欲しいな。あ、でも嫁に出したくないなぁ…」

「あはは!ユシヤってホント気が早いのね!」


 目の前には愛するレイヤが俺を見て笑っている。

 ああ、本当に幸せだ。

 何か大切なことを忘れている気がするが、きっと些細な事だろう。

 だって俺は今こんなに幸せなんだから…。


「あ、待ってユシヤ。蚊がとまってる」


 そう言ってレイヤは笑顔で手を振りかざし、俺の額を強く叩いた。




 ***




 パンッ!


 破裂音と同時にユシヤの額から真っ赤な血が噴き出した。


 勝った!

 誰も殺すことができなかったユシヤを僕が殺したんです!

 僕が、この、“ヒプノ死スト”がついにユシヤを殺したんです!


「いったああああ!れ、レイヤ!ちょっと今のは強すぎ…あれ?レイヤ?」

「え?」


 が、何故か生きてた。


 …なんで?


【お約束㊿ 勇者たちもモンスターも銃でもライフルでもマシンガンでも即死しないし、どこを撃たれてもHPが0になるまでは元気に動き回ることができる】


「は!?レイヤは!?お前、レイヤをどこに隠した!?」

「なんか催眠術もとけてるしー!」


【お約束51 魅了状態は自然回復や魔法、道具で解除できるが、攻撃を受けても解除される】




 ***




 気が付いたらレイヤがヒプノ死ストに変わっていた。

 まさか、さっきまでのレイヤはヒプノ死ストの変身魔法…いや、違う!

 魅了だ!俺は魅了状態になっていたんだ!

 きっとあのコインは相手を魅了状態にするヒプノ死ストの攻撃だったんだ!

 俺一人だったからずっと行動不能になっていたんだな…。


 …ここにレイヤは最初からいなかった…。

 つまり、レイヤが俺を好きだというのも俺が見た幻…!!


 そ、そんな…。

 こんなことなら魅了状態を解除しないでほし…いや、違う!

 何を言っているんだ俺!

 俺は勇者じゃないか!

 俺が魔王を倒さないで誰が魔王を倒すんだ!

 ロプーレを救うことが俺の使命だ!

 今は色恋なんかにかまけてる場合じゃない!


 …それはそれとして…


「ヒプノ死スト、俺の純情を弄んだ罪は重い!」

「あ…」


 私怨混じりに張りぼての剣を振り上げる。


「わー!貴方は今すぐ眠くなる!貴方は今すぐ眠くなる!」

「ぐう」


 が、ヒプノ死ストの謎の攻撃で俺は眠ってしまった。


 そして目が覚めたときにはヒプノ死ストはいなくなっていた。

 逃げられたか…。

 俺がこらしめなきゃいけない相手がまた増えてしまったな…。


 そんなことを考えながら次の部屋へと足を進めた。



■今回の生還者一覧■

ユシヤ(自称勇者)



第二十九話 完

■おまけ情報■

魅了状態はハリセーンの魔法で解除されるぞ!ハリセーンは混乱状態も魅了状態も治す便利な魔法だぞ!


■おまけ情報2■

ユシヤというトラウマが再発した“ヒプノ死スト”は次にユシヤにあったら殺されるという恐怖に囚われるようになり、ユシヤから逃れるために一番安全な場所はどこかと考えた結果警察に自首したぞ!

そして自分に催眠術をかけ、自分だけの世界に引きこもったぞ!

周囲からは可哀想な目で見られているが、本人はとても幸せそうだぞ!


■名前の由来■

ユシヤ(勇者)…勇者


才津明樹さいつ あき(黒幕:ヒプノ死スト)…催眠術


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