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第二十六話 ボスラッシュ~VS魔女~ 前編

 黒幕だ。

 前回、ついにユシヤを殺すための糸口を掴んだ。


 どうやらユシヤの認識改変能力はテレビゲーム…RPGの法則に則っているようだ。

 しかし私はデスゲームには詳しいが、あいにくテレビゲームについては全くの素人だ。

 そのために私はあれから毎日、寝る間も惜しんで持てる時間のほぼ全てを費やしてRPGをプレイしている。


 勇者がドラゴンを倒してお姫様を救出するゲーム

 元傭兵の青年が悪に染まったかつての英雄を倒すゲーム

 10年後の地球を侵略する宇宙人に年端も行かない子供たちが挑むゲーム

 高校生がトーキョーを舞台に悪魔を仲魔にして戦うゲーム

 中世へタイムスリップした少年たちが世界の滅亡を防ぐために過去を変えていくゲーム


 有名どころと思われるRPGはあらかたプレイ済みだ。

 そればかりか最近はオンラインゲームにも手を出している。

 仮面で隠れて見えはしないが、目の下には大きな隈ができている。


 しかしそのおかげで確信した。

 やはりユシヤの認識改変能力はRPGの法則に則っている。

 いや、もしかしたらユシヤはRPGの世界から飛び出してきた本物の勇者なのかもしれない。

 だからこそRPGの法則に沿った行動しかできない、こう考えると納得がいく。


 だんだんRPGの法則がわかってきた。

 もうすぐユシヤを…


 その時だった。

 私の背後でバンっと大きな音を立ててドアが開いた。


 何かはおおよそ予想が付く。

 コントローラーを握ったままゆっくりと振り返ると、思った通りそこにいたのはユシヤに敗北したはずの黒幕たちだった。


「“ブラックスター”、アンタも落ちぶれたもんね。ユシヤを殺せないからってゲームに逃げるなんて。しかも何?勇者が主人公のRPG?アンタいつから正義に目覚めたの?」


 三角帽子を深くかぶった“魔女”がそう言う。


「なあ“ブラックスター”!よくよく考えればあんなヤツは今まで見たことがない!お前がユシヤを諦めたのならワタシにやらせてくれ!あいつをワタシの実験のサンプルにしたい!死体でもいい!ワタシはあいつがほしい!ヒーッヒッヒッヒ!」


 厚い眼鏡を光らせながら“ハカセ”が狂気じみた笑い声を響かせる。


「貴方の時代はもう終わったのですよ。さあ、世代交代の時間です。…この僕を散々コケにしたんだ。三回くらい死んでいただかないと割があいませんね」


 “ヒプノ死スト”の目は焦点が合っていない。

 どうやら自分に催眠をかけ、ユシヤというトラウマから脱したようだ。


「チッ、何が進化だ。あいつにはすっかり騙されたよ。このアタシを黙した報いは受けてもらわないといけないね。アンタは降りたんだ。アタシが何やろうが文句は言わせないよ!」


 “カメハメハ”…いや、“海神”は眉間に皺を寄せ、苛立った様子で舌打ちしている。

 いや、ユシヤとのデスゲームで自分の召喚する化け物が陸でも生活できるように進化したと思い込んだのは“海神”の勝手なのだが…。

 難癖をつけられたユシヤが少しだけ不憫になった。


「あ、あの、やっぱり僕黒幕王になりたいんで…。ふ、フヒッ、“ブラックスター”が遊んでる間に黒幕王になっちゃいますね…フヒヒ…」


 “ペスト医師”が俯き加減のまま肩を揺らして笑っている。


「感謝したまえ、“ブラックスター”。皆を扇動したのはこの私、“オーナー”だ。ユシヤのビギナーズ・ラックも二度は起きない。何せ今度は私達全員が一度に相手をするのだからな」


 頼んでもいないことを恩着せがましくそう言いながら、“オーナー”が一歩前に歩み出る。

 本当にいけ好かない奴だ。


「俺たちもいるぜ!」

「見下げたものだな。お前など一生ゲームの世界に逃げてろ」

「はいはーい!ボクたちがユシヤをぶっ殺すヨー!」

「我等黒幕が力を合わせればできぬことなどない」

「いいんスかァ~?“ブラックスター”パイセン、オレたちがユシヤヤっちゃっても」


 相変わらずそこだけ空気が違う5兄弟までいる。

 まだ黒幕界から追放されてなかったのか…。


「そうか、好きにしろ」


 そう一言だけ口にすると私は黒幕たちに背を向け、再びRPGを映す画面に目を向け、画面に映る勇者を動かし始めた。

 こいつらと会話している時間も惜しい。

 そんな時間があるのならば1分1秒でもRPGをしていたい。


「な…!どこまで地に落ちたのよ!見損なったわ!」

「“魔女”、もう“ブラックスター”の時代は終わったんですよ」

「そんな腰抜けのことはほっときな。ほら、アンタら行くよ!」

「はーい!“カメハメハ”!」

「今“カメハメハ”っつったヤツ出てきな!はったおすよ!」


 背後から聞こえていた耳障りな雑音はだんだんと小さくなり、やがて静寂が訪れた。


 ふう、これでゆっくりとゲームができる。


 もうすぐだ、もうすぐだユシヤ。

 RPGの法則はもうわかりかけているのだ。

 次こそ、必ずお前を―――




 ***




 俺は勇者ユシヤ。

 気が付くとどこかの部屋に閉じ込められていた。

 今回も他に誰もいない。

 俺一人のようだ。


 道具袋は没収されているようだが、手足は自由だし張りぼての剣も鞘に納められたままだ。

 俺の閉じ込められている部屋には窓はなく、蝋燭の明かりと重そうな鉄の扉が一枚あるだけだった。


 どこかで感じたことのある緊張感が肌を刺す。


 そうだ、ラストダンジョンだ。

 …“デスゲーム”だ。

 前にクロマクが言っていたデスゲームがここにいるに違いない。

 ついにデスゲームと対峙する日が来たのか。


 思えばここまで長かった。

 デスゲームに挑んでもらうとか言いながら、今までやってきたことはクロマクという仮面を被った雑魚モンスターたちと戦うだけ。

 ついにデスゲームが姿を現したかと思ったこともあったが、ただの幻覚だった。


 しかし今日、ついに本物と相対するんだ!

 おそらくその強さは中ボスクラス…いや、ここまで引っ張ったんだ。

 きっとデスゲームこそがラスボスなんだ!


 体が震える。

 久しぶりに感じた恐怖心か。

 それとも武者震いなのか。


 ガチャンという音がする。

 鉄の扉にかけられていた鍵が開いたらしい。


「来いということか…。行くぞ、デスゲーム。お前を倒して終わりにする!」


 腰に携えた剣を構え、重い扉を開いた。

 ギイイイイという耳障りな錆びた音が耳に入る。


 部屋から出るとそこは薄暗く長い廊下だった。

 右にも左にも道はなく、ただひたすらに真っ直ぐ真っ直ぐ廊下が伸びている。


 どうやら一本道のようだ。

 等間隔で設置された蝋燭の灯を頼りに先に進んでいくと、また鉄の扉が現れた。


 扉にかけた手に力を籠めると、ギィイという音を立てて扉は開いた。


 この先に、デスゲームが…!


『待ってたわよ、ユシヤ。私のデスゲームから二度目の生還ができるかしら?』


 しかしそこにデスゲームの姿はなかった。


 何もない広く薄暗い部屋だ。

 今入ってきた扉の直線上にはまた大きな鉄の扉があり、その上には魔法の盾があった。

 魔法の盾は目元のみを覆った仮面を付けた黒いとんがり帽子の女を映している。


 あれは…見たことがあるぞ。


「お前は人形遣いのクロマクだな!」

『人形遣い…?まあ、たしかに人形を操ることはできるわ。でもそれだけじゃないのよ!』


 とんがり帽子のクロマクがそう声を上げると同時に、天井からガスが放たれた。


 毒ガスか!?

 だが俺のHPは999999ある!今まで何度も毒は食らったが特に問題はない!


 が、何故かどんどんと天井が高くなっていく。


 これは毒じゃない…!


「ゲロゲーロ!(蛙化だ!)」

『いいざまねユシヤ。私の黒魔術の素材にしてあげようかしら』


【お約束㊺ 蛙や小人などに変化させる魔法や攻撃がある。蛙や小人になると大体敵にあたえるダメージが1になる。しかしたまに変化した状態じゃないと進めないイベントがあったりもする】



■プレイヤー一覧■

ユシヤ(自称勇者)



第二十六話 完

■おまけ情報■

ロプーレの世界ではケロンの魔法を唱えると相手を蛙に変えることができるぞ!

蛙に変える…これはダジャレじゃないぞ!


■おまけ情報2■

蛙化は戦闘終了しても解除されないぞ!

その上自然回復でも治らないという厄介な技だ!


■名前の由来■

ユシヤ(勇者)…勇者


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