第二十五話 VS黒幕5兄弟 後編
直撃は免れたものの、相手はウィドンガを使う高位な魔導士だった。
こいつら、わけのわからない恰好をしているが、強い!
「グリーンサイクロンだけじゃないんだよねぇ~」
背後から声がする。
振り返ると黄色いマスクを被ったクロマクが右手を天に掲げていた。
まさか、こいつも魔導士か!
「うぐっ!」
そう思った瞬間、天からイナズマが落ち、俺の体に電流のようなものが走る。
やっぱり魔導士か!
そうか、クロマクは魔導士系モンスターなんだな!
マスクの色で使う魔法が決まってるんだ!
赤は炎、青は水、緑は風、黒は土、黄色は雷魔法を使うんだ!
「あらら~?イナズマ直撃して死なないんスけど」
「相手は不死身のユシヤだ。これも想定内…。だが連続で食らえばどうかな!?」
青いマスクのクロマクがアークアガの魔法を放つ。
思った通りこいつは水魔法を使ってきたな…!
しかし俺の今の装備ははりぼての鎧だ…。
ダメージが抑えられない!ゴリゴリHPを削られる!
「必殺!マーベラスファイヤーボルケーノバースト!」
「ぐっ!」
赤いマスクのクロマクが何かかっこいい言葉を叫びながら炎を放つ。
今度は炎魔法か!
聞いたこともない呪文だったが、あれはフレイガじゃないのか!?
「我等5兄弟が力を合わせればできぬことなどない」
「ぬわっ!」
黒いマスクのクロマクが足を高く上げ、大地を固めるように強く地に下した。
それと同時に大地が揺れ、俺の真下から砂利の混じった土が吹き上がる。
グラビティガか…!
しかしこれで5人全員が攻撃した。
次は俺のターンだ!
HPを削り切られる前に反撃してやる!
「まだまだイクヨ!風の…あれ!?風が出ない!」
「なァにやってんだよ、じゃあオレのイナヅマで…あ?オレも雷呼べねェんだけど」
「俺も炎を出せない!ユシヤめ!俺たちに何かしたな!?」
…?
何を言っているんだ、こいつらは。
そっちが5人全員攻撃したんだから次は俺の攻撃だろう?
【第十九話よりお約束㉗ 戦闘はターン制】
「次は俺の番だ!」
張りぼての剣を構え、近くにいた緑のマスクのクロマクに振り下ろす。
「ひっ!」
が、寸でのところで避けられてしまった。
張りぼての剣は緑のマスクのクロマクの背後にあった岩を砕き、その破片がわずかに緑のマスクに当たったくらいだった。
しまった、緑はスピード特化だったか…。
「え、ちょ、なにアレ。アレコスプレ用の剣だよネ?」
「何故剣が壊れずに岩の方が壊れるんだ…?」
【お約束㊶ 鋼のように固いモンスターを攻撃しても、けして壊れない木の棒などの弱い武器】
「ちょ…思った以上にユシヤって強くね?あんなんくらったら死ぬっしょ」
「よし!こうなったら必殺技を出そう!」
「え?もう?」
「遊んでいる場合ではないからな。よし、行くぞ」
「我等5兄弟が力を合わせればできぬことなどない」
クロマクたちが何やらひそひそ話している。
早くそっちのターンを終わらせてほしいんだが…。
「「「「「今こそ5人の力を一つに合わせ…必殺!インビジブルレインボーアターック!」」」」」
クロマクたちがそれぞれポーズを決め、そう声を上げた。
な、なんだって!?クロマクは合体する魔物だったのか!?
しまった!合体したら強くなってしまう!
インビジブルレインボーアタックとは一体どんな恐ろしい技なんだ!?
【お約束㊷ 何匹か集まると合体するモンスターがいる】
剣を盾代わりに構えて衝撃に備えるが、その衝撃は一向に来なかった。
一体どうしたことかとクロマクたちを見ると、マスク越しでもわかるポカンとした顔で固まっていた。
「え?不発?」
「なんで?」
なんだかざわざわしているようだ…。
なんだ?何かトラブルか?
「えーと、すまない。そのインビジブルレインボーアタックとは一体どんな技だったんだ?」
まったく攻撃してこないのでそう尋ねてみる。
「俺達5人のすべての力を合わせた技だ!炎水風土雷の全部が混じった超強い必殺技だ!」
炎水風土雷の全部が混じった…?
それっておかしくないか…?
「えーと、知っていると思うが、
火属性は風属性に強くて水属性に弱い
水属性は火属性に強くて雷属性に弱い
風属性は土属性に強くて火属性に弱い
土属性は雷属性に強くて風属性に弱い
雷属性は水属性に強くて土属性に弱い」
地面に張りぼての剣で文字を書きながら説明する。
クロマクたちは俺に近寄りそれを眺めている。
「つまりこの5属性を全部一緒に放つということは…相殺されて打ち消されるということだ」
俺はかしこさが高い方じゃないが、これは村の子供でも知っている基礎知識だぞ…?
【お約束㊸ 属性システムがある。基本の5属性の他にも光属性や闇属性もある】
「は?何それ、属性?」
「今まで俺たちはこの技を使ってきたんだぞ?」
「何ソレー!まるでゲームじゃん!ここは現実なんですケドー!?」
「我等5兄弟が力を合わせてもできぬことがあった…?」
「ユシヤオメーなんかインチキしたろ!?」
クロマクたちが何かわーわー言っている。
よくわからないが…
「お前たちのターンは終わったんだな!?じゃあ次は俺の番だ!」
張りぼての剣を構え、クロマクたちににじり寄る。
クロマクたちは互いに視線を合わせた後、バラバラの方向に逃げ出した。
「あ!待て!コラー!逃げるなー!」
そう叫んでもクロマクたちが戻ってくることはなかった。
【お約束㊹ 逃げたモンスターを追うことはできないし、逃げたモンスターは辺りを調べてももうどこにもいない】
***
「やはりあの5人では無理だったか」
モニターから目を離し、小さくため息を吐く
まあ、最初から期待はしていなかったが。
あれのどこがデスゲームなのだ。
ただの安っぽいヒーローショーではないか。
やはり一刻も早くあの5人は黒幕界から追放すべきだな。
しかし、あのときのグリーンサイクロンの言葉…
『何ソレー!まるでゲームじゃん!ここは現実なんですケドー!?』
ゲーム…。
そうか…!
ユシヤは自分をゲームの勇者だと思い込んでいるのだ!
つまり、ユシヤの認識改変能力はすべてゲームのルールに則っている…!
ゲームのルールに則っているのならば、もし“勇者が必ず負ける”という法則があればユシヤはそれに逆らうことができない…!
「ついにユシヤを殺すための糸口を掴んだ!」
■今回の生還者一覧■
ユシヤ(自称勇者)
第二十五話 完
■おまけ情報■
ロプーレ界の基本的な呪文は
炎魔法がフレイ→フレイル→フレイガ
水魔法がアークア→アークアル→アークアガ
風魔法がウィドン→ウィドンル→ウィドンガ
土魔法がグラビティ→グラビティル→グラビティガ
雷魔法がサダン→サダンル→サダンガ
だぞ!
■おまけ情報2■
レッドフレイムは熱血なヒーロータイプ、ブルーアクアは冷酷で毒舌、グリーンサイクロンは小柄で無邪気、ブラックソイルは寡黙な大男、イエローサンダーは線の細いヤンキーというポジションだぞ!
バラバラな性格をしているがとても仲が良く、週末はよく5人でスーパー銭湯に行っているぞ!
■名前の由来■
ユシヤ(勇者)…勇者
空野剛夏(黒幕:レッドフレイム)…悪の業火
空野紫吹(黒幕:ブルーアクア)…悪のしぶき
空野 颯(黒幕:グリーンサイクロン)…悪の疾風
空野大地(黒幕:ブラックソイル)…悪の大地
空野 雷(黒幕:イエローサンダー)…悪の雷
黒宮 真(黒幕:ブラックスター)…黒幕




