第二十四話 VS黒幕5兄弟 前編
黒幕だ。
案の定、あのド変態“オーナー”もユシヤを殺すことはできなかった。
やはりここは私がもう一度行くしかない!
「“ブラックスター”、苦労してるみたいだな!」
「老害は引っ込んでいろ。ここは俺達に任せとけ」
「ボクたちがユシヤを殺してきてあげるヨ!」
「我等5兄弟が力を合わせればできぬことなどない」
「つーわけでぇ、ちょちょいと殺してくるわ」
なんかいっぱいきた。
え?なんだ?打ち切りか?
打ち切りなのか?
戸惑う私の前で、戦隊もののようなヒーローマスクをつけた五人組が戦隊もののようなポーズを決めている。
あー、そういえばいたな、こんな奴ら。
私とは毛色が違いすぎて記憶から消し去っていた。
こんな黒幕など認めてやるものか。
黒幕はもっと気高くクールかつミステリアス、そして残虐であるべきだ。
私が黙り込んでいると、5人はフォーメーションを変更して一人一人新たなポーズを取り始めた。
「炎の黒幕!レッドフレイム!」
「水の黒幕、ブルーアクア」
「風の黒幕!グリーンサイクロン!」
「土の黒幕、ブラックソイル」
「雷の黒幕、イエローサンダー」
「「「「「我等黒幕5兄弟!」」」」」
・・・・・。
駄目だ、ついていけん。
私は一体何を見せられているのだ…?
私たちは黒幕だろう…?
何故悪の化身である黒幕がヒーローのような恰好をするのだ…?
というかなぜマスクだけなのだ?
ヒーローになりきるなら首から下もなんとかしろと。
テレワークか?テレワークのサラリーマンなのか?
「そんなことよりユシヤを殺しに…」
「待てーい!俺たちを無視すんな!」
5人の存在などなかったかのように次の行動に移すが、回り込まれてしまった。
嫌だ。
こいつらとは関わりたくない。
「あ~?他の黒幕にもヤらせてたじゃねぇか」
「ボクたちにもユシヤを殺させてヨ!」
「なんだ、俺達に手柄を奪われるのが怖いのか」
「我等5兄弟が力を合わせればできぬことなどない」
あーあーあー、私を囲んで同時に話すのはやめろ。
うっとうしいことこの上ない。
「わかったわかった、もう好きにしろ」
「よっしゃあ!行くぜみんな!」
「フッ、せいぜいそこで指をくわえて見ていろ」
「じゃあ言ってくるネ~!」
「我等5兄弟が力を合わせればできぬことなどない」
「うぃ~っす」
嵐のように現れた5人は嵐のように去っていった。
もう二度と現れないでくれ。
しかし、黒いやつは同じセリフしか言えないのか。
***
俺は勇者ユシヤ。
気が付いたら荒れ地にいた。
どうやって連れてこられたのかわからないが、右を見ても左を見ても建物が一つもない。
またクロマクのせいかと思ったのだが、不思議なことに両手両足は自由だし、それどころか張りぼての剣も腰の布袋も没収されていない。
どういうことだ、一体…。
「気が付いたかユシヤ!」
声の方を振り返ると崖の上に人影が見えた。
逆光でよく見えないが、崖の上に5人の人間が立っているようだ。
「誰だ…?」
クロマクの声じゃない。
そもそも今までの流れからするとクロマクはこんな簡単に姿を現さないはずだ。
「炎の黒幕!レッドフレイム!」
「水の黒幕、ブルーアクア」
「風の黒幕!グリーンサイクロン!」
「土の黒幕、ブラックソイル」
「雷の黒幕、イエローサンダー」
「「「「「我等黒幕5兄弟!」」」」」
崖の上の5人が名乗った瞬間、5人の背後で爆発が起こった。
ま、待て待て!頭の処理が追い付かない!
なんか爆発してたけどあの5人は大丈夫なのか!?
クロマクとか言っていたけどあいつらがクロマクなのか!?
クロマクは5人もいるのか!?
あと首から下は普通の人間っぽいけど、あいつらが被っている色違いのマスクはなんだ!?
「とうっ!」
状況についていけずに戸惑っていると、影の上から5人が飛び降りた。
それと同時に5人のうちの一人…緑のマスクをした男が手から風魔法を放ち5人は俺の前にゆっくりと着地した。
あの緑色は魔導士か…。
どうやら赤いのがレッドフレイム、青いのがブルーアクア、緑がグリーンサイクロン、黒いのがブラックソイル、黄色いのがイエローサンダーと言うらしい。
「お前たちはクロマクなのか…?」
「「「「「そうだ!」」」」」
な、なんてことだ。
ずっと魔法の盾越しにしか会話をしたことがなかったが、ついにクロマクが俺の目の前に…?
こんなあっさりと…?
それも5人も…。
そうか!
クロマクは人間ではなくクロマクという種族だったんだな!
スライムもスライムAとかスライムBとか呼ぶもんな!
クロマクは前に自分を人間だとか言っていたが、きっと人間になりたがってるんだ!
そういえば人間になりたがってるスライムや人間を滅ぼすという魔王の考えに反対して人間の仲間になるモンスターにも会ったことがあるし、あれと同じようなものか!
クロマクも今はしぶしぶ魔王に従っているが、本当は人間の仲間になりたいんだな!
【お約束㊴ 魔王の世界征服に疑問を覚えるモンスターや、人間の仲間になるモンスターがいる】
あ、それに前にブラックスターとか呼ばれてたな。
あれがクロマクの個体名なんだ、きっと!
やー、長年の疑問が解決して晴れ晴れとした気分だ。
そうか、クロマクは沢山いるのか。
最近クロマクじゃないクロマクっぽい奴らがやたら俺に勝負を挑んできたのは、きっとクロマクたちの間で俺が話題になっていたからなんだな。
*あながち まちがっていないぞ!
「というわけでお前は俺たち黒幕5兄弟がたおーす!」
「悪は、勝つ」
正義は勝つ、の間違いじゃないのか?
いや、まあ、クロマクはモンスターだからクロマクたちの中では悪が正しいのか。
でも…
「いや!正義が勝つ!」
俺は勇者だ!
ロプーレの平和は俺が守る!
「キミさー、正義の味方のつもりかもしれないけど所詮ただのコスプレだよねー。こういうの、見たことないデショ!」
緑のマスクをかぶったクロマクが手から風を巻き起こし、その場に浮かんだかと思うと手から風魔法を放った。
こいつはさっき魔法を使っていた魔導士だ!
顔をかばって左手で防御態勢を取るが、かまいたちが俺の左腕をえぐる。
く…、ウィドンかと思ったが上位の魔法だったか…。
今のはウィドンマ…、いや、ウィドンガか!
【お約束㊵ 同系統の魔法は大体三段階の威力があり、基本となる魔法の語尾や頭にミやマやラやガなどの文字を増やすと威力や攻撃範囲が増す】
こいつら、わけのわからない恰好をしているが、強い!
■プレイヤー一覧■
ユシヤ(自称勇者)
第二十四話 完
■おまけ情報■
黒幕5兄弟はレッドフレイムが長男、ブルーアクアが次男、グリーンサイクロンが三男、ブラックソイルが四男、イエローサンダーが末っ子だぞ!
5人で出かけると大体ブラックソイルが長男でグリーンサイクロンが末っ子だと思われるぞ!
■おまけ情報2■
ブラックソイルは体のでかい寡黙な男だが、実はお笑いが大好きだぞ!「我等5兄弟が力を合わせればできぬことなどない」ばかり口にしているのは本人なりのお笑いフレーズのつもりで、ひそかに黒幕界の流行語大賞を狙っているらしいぞ!
■名前の由来■
ユシヤ(勇者)…勇者




