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第二十三話 デス・ギャンブル

 黒幕だ。

 ユシヤはタイムリープも使えるらしい。

 それもう何やっても殺せないんじゃないかと思うが、人は必ず死ぬ生き物だ。


 きっと人に頼ったのがそもそもの間違いだったのだ。

 ここはこの私がもう一度…。


「“ブラックスター”、次は私にやらせてくれないか?」


 そう決意を固めたときだった。

 いつの間に私の部屋に入ってきたのか、顔全体を覆う仮面を着け、黒いタキシードに身を包み、黒いシルクハットを被った男、“オーナー”が声をかけてきた。


 が


「嫌だ」


 即答した。


「何故だい?私は君の力になりたいと言っているのに」


 顔全体を覆う仮面、黒を基調とした衣装、そして何より物腰穏やかで紳士的ながらどこか上から目線なその口調。


「お前私とキャラかぶってるんだよ!これではどっちがしゃべっているのか読者がわからないだろう!」

「…君は何を言っているんだい、“ブラックスター”」


 びしっと指をさすと“オーナー”は呆れたようにやれやれと肩をすくめた。


 くっ、ついメタ発言をしてしまった…。

 あとどうでもいいけどいつの間にか私の呼び名が“ブラックスター”で定着してしまっている…。

 許さん、“ヒプノ死スト”…。


「別にユシヤは君のものでもあるまい。私の好きにさせてもらうよ」


 そう言い残すと“オーナー”は静かに部屋を後にした。


 …フッ、面白い。

 私の二番煎じごときがユシヤ相手にどこまでやるのか、お手並み拝見といこうじゃないか。


 …でも本当にユシヤ殺しちゃったらどうしよう…。




 ***




 俺は勇者ユシヤ。

 レイヤから面白い店が新しくオープンするので一緒に行かないかと誘われたので、列に並んでいるところだ。


 それにしてもすごい行列だ…。

 一体何の店なのだろうか…。

 も、もしかして恋人同士が行くような………ではなさそうだな。

 並んでいる面々を見るに、若い男女もいるがメインターゲットは中年男性のようだ。


 …ん?レイヤ、もしかして俺をそんな年だと思っている…?

 俺はまだ20代だぞ…!?

 そ、そんなに老けて見えるんだろうか…。


 と、もやもやしているうちにいつの間にか中に入っていた。


 床に敷かれた真っ赤な絨毯。

 まぶしいくらいにキラキラ輝く灯。

 どこからか聴こえる、胸が躍るような軽快な音楽。

 そしてセクシーなバニーガールの女性たち。


 これは…


「カジノ!」


【お約束㊲ テレビも車もエレベーターもそれどころか電気すらないはずの世界観でも、何故か存在するカジノ】


「うわー、すんごい本格的!ここ本当に日本!?」


 レイヤが興奮した様子で辺りを見渡している。


 どうやらこのカジノの名前はニホンというらしい。

 ニホン…どういう意味なんだろうか。


「そこのお兄さん、ポーカーはいかが?」

「ルーレットもあるわよ」


 キョロキョロしていると田舎者だと思われたのか、セクシーなバニーガールたちに囲まれてしまった。


 お、おお…。嫌でも谷間が目に飛び込んでくる…。

 これは目のやり場に困るな…。


「・・・」


 しまった!

 いつの間にか鼻の下が伸びていたらしい。

 レイヤは軽蔑したような目を俺に向けたと思うと、一人でどこかに行ってしまった。


 待ってくれ!誤解だ!


「さあお兄さん、私と遊びましょう」


 レイヤを追いかけようとするも、バニーガールたちは俺の腕に自分の腕を絡ませて胸を押し付けてきた。


 あ、当たる!当たってる!

 な、なんだ!このバニーガールたち、もしかして俺のことが好きなのか!?

 だが、俺にはレイヤという心に決めた人が…!


*説明しよう!

 ユシヤは恋愛経験がないぞ!


 バニーガールたちの行動に戸惑ったまま、俺は一人、奥の部屋へと連れていかれた。




 ***




 連れていかれた部屋は先ほどのひたすらに明るい大広間とは違い、ろうそくの明かりで照らされた少し薄暗い部屋だった。

 流れる音楽も胸が躍るような軽快な音楽ではなく、落ち着いた大人向けのムーディな曲といった感じで、中には30人ほどの血走った眼をした男とセクシーなバニーガールたちがいた。


 お、男ばかりが集められている…。

 ここで何をするというんだ…?

 ま、まさか!

 あの噂の“ぱふぱふ”か!?

 ついに俺は“ぱふぱふ”を体験してしまうのか!?


*ぱふぱふ

 なんだか すごく えっちな響き。


 いかん!俺にはレイヤが…!


 必死に首を振って抵抗していると、突然壁に立てかけてあった大きな魔法の盾が仮面の男を映し出した。


『表のカジノでは満足できない諸君、裏カジノへようこそ。私が当カジノの“オーナー”だ』


 ん?クロマクか?

 いや、雰囲気は似ているが、いつもと仮面が違うし声も違うな。


 というか、これはもしかして…


「罠だったのか!?」


 そんな!ついに噂の“ぱふぱふ”を経験できると思ったのに!


『罠?何を言うのかね?私は君たちにチャンスを与えたいだけだ。ここにいるのはいずれも喉から手が出るほど大金が欲しいものたちばかりだ』


 いや、俺は違うが。


『これから行われるゲームに勝てば、一生かかっても使いきれないだけの大金を手にすることができる。ただし…』


 そう言うと仮面の男は自分の胸をトントンと叩き、静かにこう言った。


『君たちに掛けてもらうのは金ではない。君たち自身の“魂”だ』


 その言葉と同時に、俺の胸の辺りから黄金色に光る数十枚のメダルが飛び出した。


 メダルには俺の横顔が彫ってある。

 お、俺の肖像がいつの間にかカジノのメダルに使われていたのか!

 勇者の人気はここまでだったのか…。

 しかしどうせならカジノのメダルよりも通貨のゴルドの方がよかったんだが。


『そのメダルは君たち自身の“魂”だ。そのメダルが尽きた時、君たちの命も尽きるだろう。君たちが手に入れるのは多額の富か、それとも死か!さあ、デス・ギャンブルの始まりだ!』


 仮面の男が言葉を終えると同時に部屋中に紙吹雪が舞い、ファンファーレが鳴り響いた。

 それと同時に部屋にいた者たちが我先にとポーカーやルーレットのテーブルに着く。


 よくわからないが、つまりここもカジノなんだろう?


「絶対に勝ってやる…ッ!勝って俺は人生の勝ち組になるんだ…ッ!」

「金さえあれば逃げた女房も帰ってくるし、俺をクビにした会社も見返せるんだ…ッ!」


 なんだかみんな殺気立っているな…。


 さて、俺はどれで遊ぶかな。

 辺りを見渡した後、俺はスロットの席に着いてメダルを投入した。




 ***




「クックック、さあ、私を楽しませてくれたまえ…」

「やはり君のデスゲームはギャンブルに関係するものだったか」


 部屋中に並んだモニターを眺めながら不敵に笑う“オーナー”に声をかける。

 “オーナー”は革張りの椅子をくるりと回転させ、俺に向き直った。


「君の話を聞くところ、ユシヤは金に興味がない真面目が服を着たような人間だ。当然賭け事などやったこともないだろう。私の出すギャンブルはそんな素人が勝てるようなものではない。すまないな、ユシヤを殺すのは私だったようだ」


 “オーナー”は勝ち誇ったように笑っている。


 たしかにユシヤがギャンブルに手を出すとも思えないし、カジノに入ってきたときもやたらキョロキョロしていて場慣れしていない感じはあった。

 バニーガールの色仕掛けにもすぐに引っかかっていたし、“オーナー”のいうことはたしかにもっともなようなのだが…。


 …何か引っかかるな…。


 あいつ、キョロキョロしていたわりにはルールも聞かずにスロットをプレイし始めたような…。




 ***




 デス・ギャブルが始まってどれだけかの時間が経った頃だった。

 モニターから雑魚共の悲鳴がちらほらと聞こえ始めた。


「お、俺の、俺の魂が…ッ!」

「嫌だ…ッ!まだ死にたくない…ッ!」

『ああッ!やはり生死をかけたギャンブルほど楽しいものはない!人が破滅して死に至る瞬間は何故こうも美しいのか…!』


 モニターを食い入るように見つめ、ゲームに負けた者たちの悲鳴を聞きながら“オーナー”が愉悦の声を上げている。

 冒頭でこいつとキャラが被っていると言ったが訂正する。

 俺にこんな性癖はない。

 こいつキモイ。


 しかし楽しそうで何よりだが、肝心のユシヤはどうなったのだ。


 …とても、嫌な予感がする。


 雑魚共の死に狂喜する“オーナー”を後目に、そっとユシヤを映したモニターに視線を向けた。




 ***




「お、おめでとうございます!ま、またスリーセブンが出ましたっ!」

「なんだあの兄ちゃん!さっきからツキまくってんぞ!」


 幾度目かのファンファーレが辺りに鳴り響く。


 ああ、懐かしい。

 旅の途中でパーティ全員がカジノにハマってしまって、魔王そっちのけになってしまった時期があったなぁ。

 景品交換所で交換できるものを全部交換できるだけのメダルが溜まった頃にはカジノに飽きて旅を再開したが。

 しかしあの時のことは勇者として恥ずかしい限りだ。


【お約束㊳ カジノにハマって魔王を倒す目的を忘れる勇者パーティ。そしてその間律儀に待ってくれている魔王】


「おっと、ついやりすぎてしまった。レイヤを待たせているし、ここまでにしよう」


 メダルが9999999枚溜まったところで手を止め、スロットから離れた。

 大量のメダルはそこらにいたみんなに配って俺は部屋を後にした。


 バニーガールに鼻の下を伸ばしたあげく、どこかに行ってしまった俺に対してのレイヤの怒りを鎮めるのにかなり苦労したのはまた別の話だ。


『そ、そんな!まさかあれがビギナーズ・ラック…!?』

『あー、やっぱりそういうオチになるのか』



■今回の生還者一覧■

ユシヤ(自称勇者)

風越麗夜かざこし れいや(コスプレイヤー)

佐井さい いさむ(フリーター)

近舎ちかやど 央大てるひろ(無職)

他28名



第二十三話 完




■おまけ情報■

ユシヤがみんなに分けた魂のメダルのおかげで奇跡的に死者は一人も出なかったぞ!それどころかユシヤのおかげでプラスになって、みんな大金を持ってほくほくで帰還したぞ!

ユシヤの魂なのにみんなに分けることができるのかという話だが、できたのだからこれでいいのだ!


■おまけ情報2■

レイヤの機嫌を取るために表のカジノで稼ぎ、景品交換所にあったアイテムを全部手に入れてレイヤにプレゼントしたぞ!

レイヤの機嫌は直ったが、ユシヤはカジノを出禁になったぞ!


■名前の由来■

ユシヤ(勇者)…勇者

風越麗夜かざこし れいや(コスプレイヤー)…コスプレイヤー

佐井さい いさむ(フリーター)…債務

近舎ちかやど 央大てるひろ(無職)…借金大王


文木屋ふみきや 羅一らいち(黒幕:オーナー)…ギャンブラー

黒宮くろみや まこと(黒幕:ブラックスター)…黒幕


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