第二話 死の一本道(デス・ワン・ロード) 後編
俺の名前は田中ボタモチ。
自慢じゃないが登録者数500万人超えのチャンネルを持つ超人気ゲーム実況者だ。
得意ジャンルはホラーとFPS。
脱出ゲームも得意だ。
そんな俺だが、気が付いたらデスゲームに参加させられていた。
一体どうやって連れてこられたのかはわからないが、デスゲームなんてそういうもんだ。
「危ない!みんな下がれ!」
やたら張り切っている奴がいたが、あの手の脳筋タイプは最初に死ぬ。
可哀想だが、それがデスゲームのセオリーだ。
ほら見ろ、いつの間にかあの脳筋がいなくなっている。
どうせ考えなしに一人で突っ込んでいったんだろう。
俺はそんな無策なことはしない。
ゲームというからには攻略法があるはずだ。
「見ろ、壁に何か書いてある」
ひいちどり
ねがたなの
しかばねぐ
ちしんづち
思った通り、謎解きだ。
これは…ふむ、そうか。
「さっきの部屋に戻るぞ」
「え!?なんで…!?」
「いいから俺についてこい」
まったく、低脳どもめ。
俺の言うことを聞いていれば生き残れるんだ。
ほら、こんな謎解きくらい簡単だ。
言葉を一部変換すれば“日一取ネ刀の尸口辛土”…最初の壁、だ。
つまり最初の部屋の壁を調べればいいということだ。
最初の部屋の壁をくまなく調べたところ、くぼみを発見した。
ここに何か埋め込むということだな…。
しかし何を埋め込めば…。
「ボタモチさん、ポケットに何か入ってるんすけど…」
ポケットをさぐると宝石のような石が入っていた。
盲点だった。
まさか謎解きアイテムを身に着けていたとは…。
「これ、壁のくぼみにハマりそうっすよ」
「バカ!やめろ!よく見ろ、それぞれ色が違う。これは第二の謎解きだ」
黒幕め、登録者数500万人超えのチャンネルを持つ超人気ゲーム実況者の俺を試そうというのか。
これくらい俺にはたやすいものだ。
待ってろ、黒幕!
すぐに確キルしてやる!
***
カチッ。
あれからいくつもの謎を解いた。
パネルにあった順番にボタンを押すと隣の部屋から音が聞こえた。
「ボタモチさん!隣の部屋から光が!」
クソッ、ここまでやらせておいてこれはただの隣の部屋の電気のスイッチだったのか。
しかし俺たちは隣の部屋を見て絶句した。
細く長い通路にはいたるところに即死トラップがしかけられていた。
天井からつるされた巨大なブレード、床に散らばった大量の矢、槍の敷き詰められた落とし穴…。
すべてのトラップが発動済だった。
しかもあちこちに今流されたばかりといった真っ赤な血痕がある。
あいつだ。
先に行った脳筋がトラップに引っかかったんだろう。
だがおかしい。
どこにもヤツの死体がないぞ…?
すべてのトラップが発動済みなところを見ると、全部に引っかかったが死なずに先に進んだということか…?
見た目に反してそこまで殺傷力がない罠だったのか…?
「ボタモチさんすげーっす!謎解きでトラップを無効化したんすね!」
「さすが登録者数500万人超えのチャンネルを持つ超人気ゲーム実況者!かっこいー!!」
「もえぽ帰ったらカフェのみんなにボタモッチのチャンネル登録するように言うー!」
低脳どもが隣の部屋の光景を見て俺を誉めたてる。
・・・・・。
「フッ、この俺を誰だと思っている。登録者数500万人超えのチャンネルを持つ超人気ゲーム実況者、田中ボタモチだぞ!」
「ボタモチさんすげーっす!!」
「かっこいー!!!」
「結婚してー!」
よくわからないが、とりあえずヨシ!ということにした。
***
■一方その頃のユシヤ■
「外に出てしまった!デスゲームはどこにいるんだ!?出てこいデスゲーム!」
こうしてユシヤの活躍により、デス・ワン・ロードから全員生還したのであった。
しかしユシヤの功績を知らない生存者たちは、謎を解いた田中ボタモチに大層感謝したという。
■今回の生還者一覧■
ユシヤ(自称勇者)
田中ボタモチ(ゲーム実況者)
持田伊虎(フリーター)
阿波衣美(看護師)
盛部英子(女子大生)
寅木守恵(OL)
樫木仁也(電気工事士)
忠野萌歩(ホールスタッフ)
第二話 完
■おまけ情報■
ユシヤのHPは999999あるぞ!
999999本矢が刺さればさすがのユシヤも死ぬぞ!
■おまけ情報2■
その後、田中ボタモチのチャンネルは600万人を突破したぞ!
■名前の由来■
ユシヤ(勇者)…勇者
田中ボタモチ(ゲーム実況者)…棚からボタモチ
持田伊虎(フリーター)…太鼓持ち
阿波衣美(看護師)…ミーハー
盛部英子(女子大生)…モブA子
寅木守恵(OL)…エキストラ
樫木仁也(電気工事士)…にぎやかし
忠野萌歩(ホールスタッフ)…ただのモブ