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第十五話 地獄行きの新幹線

 俺は勇者ユシヤ。

 今回も気が付いたら知らない場所に…って…


「ここはどこだ!?」


 建物の中のようなのだが、窓の外がものすごいスピードで動いている。

 いや、窓の外が動いているんじゃない。

 この建物が動いているのか!


 仲間と旅をしていたときにドラゴンに乗ったこともあるが…ドラゴンより、ずっと速い!!

 なんなんだこの乗り物は!?


「お父さん、旅行楽しみだねー!」

「こらこらひかり、ちゃんと座ってなさい」

「フフフ」


 家族連れ。


「コーヒー、お弁当はいかがですか?」


 店員と思しき制服姿の女。


「おばあちゃん、アイス買ってー!」

「じゃあ買ってあげようかねぇ」

「桜、わがまま言わないの」

「まあまあ旅行中くらいいいだろ」


 こちらも家族連れ。


「早く着かないかなー」

「はは、今乗ったばっかだろ」


 若いカップル。


 他にも、この乗り物には沢山の人間が乗っているようだ。


 しかし今までと違って俺以外は“さらわれてきた”ようには見えないぞ…?

 これは一体どういうことなんだ…?


「お客様、どうなさいましたか?」


 キョロキョロと辺りを見渡していたら、制服姿の女に声をかけられた。

 これは…あきらかに不審人物だと思われている…。


「何あの人、コスプレ?」

「なんかイベントやってる?」


 周りもざわざわし始めた…。

 まずい、こういうときどうしたらいいんだ…。


「あれ?降りる駅通過したみたいだけど…」

「すみません、ここで私たち降りるはずだったんですが…」

「え?しょ、少々お待ちください」


 冷や汗を流しながらどう切り抜けるべきかと試行錯誤していたが、どうやら新たな問題が起きたらしく周りが一層ざわつき始めた。

 よくわからないが、多分“あいつ”のせいだろう。


 俺がクロマクの顔を思い浮かべると同時に、辺りに声が響き渡った。


『本日は新幹線をご利用くださいましてありがとうございます。この電車は地獄行きです。途中の停車駅はありません。それでは皆様、残り少ない人生をお楽しみください』


 クロマクの声だ!

 あいつ懲りずにまだこんなことをやっているのか!


「え?え?何今のアナウンス」

「嘘だよね?」


 周りのざわつく声が大きくなる。

 俺はこの乗り物について知らないが、どうやら制御が効かなくなっているようだ。

 つまり…


「この乗り物から一生降りられないということか!」

「いやそうじゃねえよ!このままだと衝突すんだよ!」


 俺が声を上げると、茶色の髪の若い男に即座に否定されてしまった。


「衝突!?」

「イヤアア!私たちみんな死ぬの!?」

「助けて誰か!」


 茶色の髪の若い男の言葉に辺りは阿鼻叫喚の地獄絵図と化してしまった。

 しまった!俺のせいでみんなが混乱している…!

 ここは俺がなんとかしなければ!


「君、御者はどこにいるんだ!?」

「ぎょしゃ…?う、運転席でしたら前方に…」

「わかった!」


 要はこの乗り物を止めればいいんだろう!

 俺がなんとかしてみせる!


 近づくだけで開く不思議な扉を抜けながら真っ直ぐ進んでいく。

 俺が近づいただけで扉が開くなんて、まるで誘われているようだ。

 罠かもしれない。


 しかし俺は勇者だ!

 立ち止まるわけにはいかない!


『クックック、無駄だよユシヤ。君はこの新幹線の乗客たちと一緒に地獄に落ちるのだ!ハーッハッハッハ!』


 クロマクの声が辺りに響くが、その声を無視してただひたすら前へ前へと走る。


 行き止まりになった。

 どうやらここがこの乗り物の先端らしい。


 ドアを開けると混乱した様子の御者たちが、何やらレバーをガチャガチャいじっていた。


「ダメだ!減速できない!」

「このままじゃぶつかる!」

「誰か!誰か新幹線を止めてくれ!」


「わかった!俺が止める!」


 民の救いの声を勇者が聞かないわけながい。

 ロプーレを守るのは、俺だ!


 ドアを開ける。

 すさまじい風が流れ込んでくる。

 改めてとんでもない速さなのだと実感する。

 こんなスピードが出せる乗り物があったなんて知らなかった。


 なんて感心している場合ではなかったな。


「待て!君!何してるんだ!」

「この乗り物を止めてくる!」


 乗り物の外観を伝い、先のとがっている部分に張り付く。


「君!やめろ!死ぬぞ!」


 大丈夫だ。

 勇者は、死なない!


 手を放し、乗り物の前に飛び降りる。


「ヒッ!」


 御者たちが惨劇を予想して両目を覆う。


 しかし


「な、止まっただろ?」


 乗り物はピタリと止まった。

 まあ、俺が動いたらまた動き出してしまうから、俺はここから動けなくなったわけだが。


【お約束㉓ 猛スピードで走っているトロッコなどがあっても、前に立つとピタリと止まる】


「え?え?何?何が起こったの?」

『えー…、慣性の法則どうなってんの…?』


 その後、駆け付けた自警団により全員が救助された。

 俺が動くとまた乗り物が動き出すと告げると、乗り物を強制停止させるために沢山の人間が乗り物を調べ始めた。

 その間一歩も動くことができなかったのが少し辛かった。



■今回の生還者一覧■

ユシヤ(自称勇者)

児玉こだま てる(教師)

児玉希美こだま のぞみ(主婦)

児玉こだまひかり(小学生)

那須野青葉なすの あおば(無職)

那須野なすの つばさ(会社員)

那須野朝日なすの あさひ(主婦)

那須野なすの さくら(幼稚園児)

白鷹はくたか つるぎ(大学生)

水保つばめ(みずほ)(大学生)

谷川たにがわ はやて(運転士)

鴨目かもめ しゅん(車掌)

土岐山彦とき やまひこ(車掌)

浅間小町あさま こまち(客室乗務員)

その他乗客たち



第十五話 完


■おまけ情報■

ちなみに前に立たなくても、絶妙なタイミングで横から話しかけたり調べたりしても止まるぞ!

こちらは少々難易度が高いぞ!


■おまけ情報2■

ユシヤが動けるようになったのは三日後だったぞ!


■名前の由来■

ユシヤ(勇者)…勇者

児玉こだま てる(教師)…こだま+かがやき

児玉希美こだま のぞみ(主婦)…こだま+のぞみ

児玉こだまひかり(小学生)…こだま+ひかり

那須野青葉なすの あおば(無職)…なすの+あおば

那須野なすの つばさ(会社員)…なすの+つばさ

那須野朝日なすの あさひ(主婦)…なすの+あさひ

那須野なすの さくら(幼稚園児)…なすの+さくら

白鷹はくたか つるぎ(大学生)…はくたか+つるぎ

水保つばめ(みずほ)(大学生)…みずほ+つばめ

谷川たにがわ はやて(運転士)…たにがわ+はやて

鴨目かもめ しゅん(車掌)…かもめ+はやぶさ

土岐山彦とき やまひこ(車掌)…とき+やまびこ

浅間小町あさま こまち(客室乗務員)…あさま+こまち


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