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第十三話 無人島脱出サバイバル 後編

 あれから数日が経った。

 少ない食料を温存するために魚や貝、海藻などをとり、食糧問題は解決した。

 しかし船が通りがかることもなく、いつまで待っても助けは来なかった。


「このまま待ってるだけじゃダメだわ。誰かが助けを呼びに行くのはどうかしら?」


 いつまでも助けが来ないことに焦った俺たちは誰か一人が脱出を目指し、助けを呼びに行くという手段をとることにした。


「悔しいけどここはアンタが適任だと思う。ルヴァイ、助けを呼んできて」

「わかった、任せろ。お前たちは私が絶対に助ける」


 代表はルヴァイ・ヴァーサに決まった。

 それからオウマ・ノゾミとルヴァイ・ヴァーサが中心となってイカダを作り始め、その日の夜には一人用のイカダが完成した。


「夜の脱出は命に係わる。明日の朝脱出しよう。…大丈夫だ、必ず助けを呼んでくる」


 完成したイカダを前に不安そうな面々を安心させるため、ルヴァイ・ヴァーサが胸を叩いて微笑んだ。


 見ているか、仮面の魔物!

 俺たちは仲間だ!

 すぐに六人全員で脱出してみせる!

 お前の思い通りにならなくて残念だったな!




 ***




「ちょっと!ちょっと起きなさいよ!」

「んん…」


 オウマ・ノゾミのけたたましい声で目を覚ます。

 起き上がろうとするが身動きがとれない。

 何事かと視線を足元に落とすと、両足がロープで縛られていた。

 おそらく腕も後ろ手に縛られているのだろう。


「やられた!あいつずっとこのチャンスをうかがってたのよ!」


 ふと周りを見ると全員が両手と両足をロープで縛られていたのだが、その中にルヴァイ・ヴァーサの姿はなかった。

 完成したイカダも、水も、残り少ない食料も、とった魚も、保存食として作った干物も、ナイフも、すべてなくなっていた。


「あいつを信頼したあたしがバカだったのよ…!」

「畜生!ここで死ぬしかないのか…!」

「往間のせいだぞ!俺はルヴァイなんか最初から信じてなかったんだ!」

「何よ!全部私のせいだって言うの!?」

「あきさみよー!!」


 みんながお互いをののしったり泣き叫んだりしている。

 ああ…、みんなの心がバラバラになってしまった…。

 駄目だ、これでは仮面の魔物の思う壺だ。


「ま、待て。本当にルヴァイは助けを呼びに行ったのかも…!」

「はあ!?だったらみんなの分の食べ物まで持ってく必要ある!?」

「俺たちの手足まで縛って!?」

「このままじゃ餓死するだけだってわかってんのか!?」

「あびらんけー!!」


 みんなに希望を、と思ってそう言ったが一瞬で論破されてしまった。

 と、とにかくみんなを落ち着かせなければ…。


 腕に力を籠め、ロープを引きちぎる。


「みんな落ち着くんだ。そんなに仲間を疑うもんじゃない」

「…え?」

「え?ロープ…」

「引きちぎった…?」

「でーじちゅーばーさ…」


 何だか知らないが、みんながおとなしくなったぞ。

 そうか、俺の心が通じたのか!

 ルヴァイ・ヴァーサは俺達の仲間だ。

 きっと何か考えがあったに違いない!


 四人の手足のロープをほどき、落ち着かせるためにパンと水を差し出した。


「…ありがとう…。って、え?これどこにあったの?食料はルヴァイが全部持ってったと思うんだけど…」

「どこって普通に道具袋から出したぞ?」


 俺の腰に下げられた道具袋を指差す。


「小さな袋だったからルヴァイも見落としたのかしらね…」

「そんな小さい袋によくこれだけ詰め込めたな」

「はは、ユシヤさん収納上手ですね」

「ああ、でもこれが最後の晩餐かぁ…」


 パンを大事そうに少しずつ口に運ぶみんなを見て、道具袋に手を突っ込んだ。


「なんだ、まだ欲しいのか?もっとあるぞ」


 そして中からパンを取り出し、みんなの前に突き出す。


「!?」


 みんなが驚いた顔をして、俺が取り出したパンと道具袋を交互に見ている。


 …俺は、何か驚かせるようなことをしただろうか…?

 あ、もしかしてさっさとパンと水を出さなかったから怒っているのか…?

 すまない!みんなが一生懸命魚をとったり水を作ったりしていたから、食料を持っていることを言いだせなかったんだ…!


【お約束⑫ 無限に近い収納力を誇る謎の道具袋】




 ***




■それを見ていた黒幕


『そ、そういえばユシヤは水中脱出が得意だったな…。やはりこいつはマジシャンなのか…!』


 無人島の様子を映し出したモニターを見ながら忌々しそうに机を叩く。

 しかしすぐに仮面の下で口角を上げ、楽しそうに腕組みをしながらユシヤを見下すようにモニターに向かってこう言った。


『まあいい、手品にも限度はある。その内水も食料もなくなるだろ。そうなったらお前も終わりだ、ユシヤ!』




 ***




 そして、一週間が経った。


「すまない、パンも水もなくなってしまった」

「ついに…!」

「いつかそんな日が来ることはわかっていたけど…!」

「なんかもう無限に出てくるもんかと思ってた…」

「あとは死を待つだけか…!」


 ああ、みんなを失望させてしまった…!

 99個までしか入らない道具袋が憎らしい…!


【お約束⑬ 道具袋には同じアイテムならば99個まで入れることができる】


『ついに手品のタネもつきたか!この日を待っていたぞ!ハーッハッハッハ!』


「本当にすまない…。干し肉とミルクならまだ99個ずつあるんだが…」


【繰り返しになるがお約束⑬ 道具袋には同じアイテムならば99個まで入れることができる】


 申し訳なさそうに道具袋から干し肉とミルクを取り出すと、四人(といつの間にか起動していた魔法の盾に映った仮面の魔物)が目を丸くして俺を見ていた。


 ああ!やっぱりパンと水がよかったんだな!

 本当にすまない!


「ちょっと、その袋どうなってるの…?」

「ちなみに聞くけど、他にも食い物が入ってるとか…?」

「後はキャベツが99個、じゃがいもが99個、トマトが99個、チーズが99個…」

「いや、もういい…」


 道具袋の中を確認しながら中に入っているものを言うと、みんなはため息をついて額を押さえた。

 パンと水が欲しかったのか…。

 すまない、どれだけ見てもパンと水はないんだ…。


「その袋のどこにそんだけ入ってんのよとか、アンタがすんごいマジシャンだってことはわかったわよとか、なんかもう色々言いたいことあるけど…色々持ってんなら毎回違うものも食べさせなさいよ!なんの味付けもないただのパンと水だけで一週間は飽きるわよ!」

「ええー、往間さんの一番言いたいことそれー?」


 どうやらパンと水じゃなくてもよかったようだ。

 なんだ、それなら言ってくれればよかったのに。


「でも干し肉はともかく牛乳は腐ってるだろう?」

「だよなぁ、こんなとこで腹壊したら終わりだぞ」

「ってユシヤさん飲んでる!」


 カミシマ・タケシとアド・アウトが受け取った牛乳をためらっている横で腰に手を当ててミルクを一気に飲み干す。

 うん、うまい!


「アンタここがどこだかわかってんの!?」

「すぐに吐き出せ!」

「ど、どうした、うまいぞ?」


 俺がピンピンしているのを見て4人が恐る恐るミルクに手を伸ばす。

 しばらく匂いを嗅いだり指を入れて舐めてみたりしていたが、意を決してミルクを一口飲みこむ。


「ぬるいけど美味しい」

「うん、腐ってないな」

「え?これもマジック?」

「でーじまーさん!」


 さっきからみんな何を言っているんだろうか…。

 これは“腐ったミルク”じゃないんだぞ?


【お約束⑭ 何百回宿屋に泊まっても毒沼を移動しても何故か腐らない食材。しかし何故か“腐った〇〇”というアイテムはある】


「なあ、ユシヤ。その袋から船は出せないのか?」

「もうこうなったらなんでもアリよね。船出してよ船!」

『船まで出せるのか!?』


 アド・アウトとオウマ・ノゾミが俺にそう言うが、船が道具袋に入るわけないだろう…!

 あと何故仮面の魔物まで会話に参加してるんだ。


【お約束⑮ 鉄の鎧99個も炎の剣99本も収納できる道具袋だが、なんでも入るわけではない】


「すまないが船は道具袋には入らない」

「さすがに無理かー。ユシヤのマジックでなんとかなるかと思ったのになー」


 落胆させてしまったようだ。

 しかしみんな俺を魔導士と勘違いしているようだが、俺は魔導士ではなく勇者だぞ。

 魔導士…ああ、こんなときに魔導士がいてくれればワプの魔法でひとっ飛びなんだがな。

 つくづく魔法の使えない己が情けなくなる。


 …ん?

 そういえば…。


『ふう…驚かせやがって…。さすがに船は出せないか…。まあ食料はいつか尽きるだろう。これが兵糧攻めだ!』


「そういえばある!“トンボのつばさ”!」


 トンボのつばさとは、一つ前に行った街に戻ることができるアイテムだ。

 どこでも自由に飛べるワプの魔法と違って行き先を選べないから、いまいち使い勝手が悪くて存在を忘れていた!


「みんな!俺につかまれ!」

「え?」


 全員を俺にしがみつかせると思いきりトンボのつばさを空に放り投げた。

 その瞬間、俺の体が浮き上がり、ここに来るまでに立ち寄った街へ向かって飛んでいく。


「何これえええええ!」

「マジック!?こんなマジックあるのか!?」

「もう夢でしょこれ!」

「あぎじゃびよー!」


 こうして、俺達は無事に帰還することができた。

 帰還の祝いに酒場に行ったら先に脱出していたルヴァイ・ヴァーサと出会ってしまい、ルヴァイ・ヴァーサとオウマ・ノゾミたちがかなり揉めたのはまた別の話だ。


『…ええー…。マジシャンってか…もうアイツ魔法使いじゃん…。とりあえず次からはあの袋没収しよ…』



■今回の生還者一覧■

ユシヤ(自称勇者)

神島かみしま たけし(写真家)

往間おうま のぞみ(冒険家)

阿戸あど 吾羽人あうと(会社役員)

喜屋武きゃん 葉一よういち(飲食店スタッフ)

ルヴァイ・ヴァーサ(傭兵)



第十三話 完

■おまけ情報■

ロプーレの世界では食材は基本的に調合用のアイテムだ!

そのまま食べても少量の回復効果があるが、調合すると効果の高い回復薬や毒消し薬などになるぞ!


■おまけ情報2■

ルヴァイと往間望の大喧嘩で居酒屋はめちゃくちゃになり、二人仲良く次の日のニュースに名前が載ってしまったぞ!


■名前の由来■

ユシヤ(勇者)…勇者

神島かみしま たけし(写真家)…無人島

往間おうま のぞみ(冒険家)…冒険王

阿戸あど 吾羽人あうと(会社役員)…アウトドア

喜屋武きゃん 葉一よういち(飲食店スタッフ)…キャンパー

ルヴァイ・ヴァーサ(傭兵)…サバイバル


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