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第十二話 無人島脱出サバイバル 前編

 黒幕だ。

 前回、ユシヤの弱点を知ったと思ったのに、まさかの特技が水中脱出でウォーター・デスルームから逃げられてしまった。

 人間じゃねぇよ、あいつ…。


 だが私は諦めない!

 人間だろうが化け物だろうが、食わないと死ぬ。

 そこで考えたのが兵糧攻めだ!

 それデスゲームなのかよとは自分でも思うが、こっちもなりふりかまってられん!

 それに少量の食料を与えておけば醜い殺し合いも見られるかもしれないからな。

 クックック、今度こそ貴様の最期だ!ユシヤ!




 ***




 俺は勇者ユシヤ。

 例のごとく気が付いたら知らない場所にいた。

 前にもあったが、今回は砂浜からのスタートだ。

 しかし前と違うのは、あまりにも狭いということだ。


 懐かしい…。そういえば船で旅していたときもあったなぁ。

 人も住めないような狭さの謎の無人島…。

 もしかしたらレアなアイテムがあるかとワクワクしながら上陸してみたが、何もなかったなぁ。


【お約束⑪ 何のためにあるのかわからない謎の小島がある】


 と、感傷に浸っている場合ではない。

 また今回もどうせあいつにやられたに違いない!

 今回は俺を含めて六人か…。

 みんな眠っているようだから目が覚めるまで辺りを調べてみるか。

 といっても見渡せるくらい狭いな…。

 大体50~60㎡といったところか。

 砂浜とわずかな草、それに数本の木と竹がいくらか生えているだけの島だ。

 ん?木の根本に何か…。


「宝箱がある」

「ん…」


 宝箱に近づこうとしたその時、花柄の派手な服を着た褐色の肌の男が目を覚ました。


「大丈夫か、君」

「あぎじゃびよ!」


 アギジャ…???

 呪文か!俺は今魔法で攻撃されたのか!?


「あ、す、すみません。びっくりして方言が…」

「何今の声…!?うわ!何だこのコスプレ男!」

「え?何?ここどこ?」

「は?何これ、遭難?」

「shit…」


 派手な服の男の呪文…ではなく方言でみんなが一斉に目を覚ます。


『お目覚めかね、諸君。ここは無人島だ。君たちにはこの無人島から脱出してもらう。何を使っても構わない。選別としてその箱にアイテムを入れておいた。好きに使ってくれたまえ。では、健闘を祈る』


 宝箱の上に立てかけられていた魔法の盾が仮面をつけた魔物を映し出し、そう俺たちに告げると再びただの盾に戻った。


「脱出しろ…?勝手にこんなところに連れてきておいて…?」


 黒い短髪の男がいぶかし気に眉をひそめる。


「なんかのイベントじゃないわよね…?貴方が進行役とかで…」


 フードを被った肩までの髪の女の言葉に俺は首を振る。


「んじゃアンタはコスプレ会場で誘拐されたってことか…。俺はホームセンターにいたんだよ」


 髭の生えた大男が顎に手を当てながらそう言う。


「俺は自分のキャンピングカーで寝てたんだけど…」


 花柄の派手な服を着た褐色の肌の男が辺りを見渡しながら言う。


「とりあえず、その箱…貴方が開けて」


 植物柄の緑色の服を着た金髪の女が俺に声をかける。

 この女だけは他の五人と顔立ちが違うな。

 俺に似た堀の深い顔をしている。


「わかった」


 俺が宝箱に近づくとみんなは俺から離れ、サッと身構えた。

 ゆっくりと宝箱を開けると中には一本のナイフとロープの束、それに食料が入っていた。


「…罠はかかっていなかったか」


 ん?俺は今盾にされたのか?

 ま、まあHPの高さには自信があるし、勇者なのだから当然の役目だが。


「食料が少ないな…。これを六人でわけろって言うのか?」


 に髭の生えた大男が缶詰を手に取り、眉をひそめる。


「このサバイバルナイフで竹を切ってイカダを作れってことなのかな?ロープもあるし」

「いや、竹の数が少なすぎる。これじゃ六人乗りのイカダなんて作れないわ」


 黒い短髪の男の言葉にフードを被った肩までの髪の女が首を振る。

 どうしたものかと首を傾げていると、植物柄の緑色の服を着た金髪の女がぼそりと呟いた。


「そのナイフで五人を殺して一人で脱出しろってことかもな」

「!」


 一瞬で空気が静まり返った。

 互いに“そんな、まさか”と目くばせするが、六人乗りのイカダを作るには明らかに足りない竹、六人で分けるには心もとない食料、そして一本しかないナイフに誰もが植物柄の緑色の服を着た金髪の女の言葉を心の中で肯定した。


「い、いやいやいや!そんな、人殺しなんて!」

「そ、そうだな。バカげたことを考えるのはやめよう」


 花柄の派手な服を着た褐色の肌の男が大きく首を振り、髭の生えた大男も腕を組んで頷く。

 しかし張り詰めた空気が元に戻ることはなかった。


「と、とりあえず自己紹介でもしようかー。俺は喜屋武葉一。趣味はキャンプです」


 花柄の派手な服を着た褐色の肌の男の名前はキャン・ヨウイチというらしい。


「俺は阿戸吾羽人。キャンプは俺も好きだ」


 髭の生えた大男がアド・アウト。


「…神島武です」


 黒い短髪の男がカミシマ・タケシ。


「あたしは往間望。冒険家をやってるわ」


 フードを被った肩までの髪の女がオウマ・ノゾミ。


「俺はユシヤ。勇者だ」

「ちょっと!あたしはなりきりじゃなくて本物の冒険家よ!」


 俺が自己紹介するとオウマ・ノゾミは何やら怒っていたが、どうやら俺が勇者の名を騙る偽者だと思われているようだ。

 俺も本物の勇者なんだが…。


「で、君は?」

「……」


 最後の一人、植物柄の緑色の服を着た金髪の女はしばらく何か考えているようだったが、にっこりとほほ笑むとこう言った。


「私はルヴァイ・ヴァーサ。少しサバイバルに関係のある職についていてな、サバイバルの知識ならあるからここからは私と望が中心となろう。いいかな?」


 植物柄の緑色の服を着た金髪の女の名前はルヴァイ・ヴァーサというらしい。

 お、ようやく聞きなじみのある名前の人を見つけたぞ。

 顔立ちも俺に少し似ているし、ルヴァイ・ヴァーサは俺の出身地と近いのかもしれないな。


「冒険家なんだろう?期待してる」

「そうね、あたしもサバイバルの知識なら自信あるわ。宜しくね、ルヴァイ」


 にこやかに微笑みながらルヴァイ・ヴァーサがオウマ・ノゾミに手を出すと、オウマ・ノゾミもそれをとって握手をした。

 うんうん、仲間って感じだな!


 なんだ、順調な滑り出しじゃないか。

 仮面の魔物は俺達に殺し合いをさせちょうとしていたようだが、俺達が仲間になる可能性を考えてなかったのか?

 なんの問題もなく全員で脱出できそうだな!


「じゃあ早速イカダを…」

「ダメだ。さっきノゾミが言っていたようにこれだけの竹では全員が乗れるイカダは作れない」

「そうね、この辺を船が通るかもしれないし、火を起こすといいわね。あと飲み水。その箱の飲み物だけじゃ心もとないし」


 ルヴァイ・ヴァーサとオウマ・ノゾミがテキパキと動き、周りに指示を出す。

 何を言っているのかわからないし、何をしようとしているのかもよくわからないが、俺も二人の指示に従う。


「これでいいか?」

「ありがとう。アンタは…鎧だからダメね。喜屋武さん、そのアロハシャツくれない?」


 指示された通り小石を集めてオウマ・ノゾミに渡す。

 オウマ・ノゾミは俺から石を受け取ると、キャン・ヨウイチに声をかけて派手な柄の服を受け取る。

 それをナイフで引き裂き竹の中に詰めていった。

 キャン・ヨウイチは“おろしたてのシャツ…”とショックを受けていたようだが、“非常事態でしょ”という言葉におとなしく引き下がった。


「あとは炭ね」

「ろ過装置の本体を作った残りの竹で竹炭を作ろう」


 そのよくわからない装置が完成するころには辺りは夕焼けになっていた。


「できた!」

「…うん、飲める。やるな、ノゾミ」

「アンタもね」


 よくわからない装置は泥水を飲料水に変える魔導具だったらしく、飲み水が増えたことにみんな喜んでいた。

 ルヴァイ・ヴァーサとオウマ・ノゾミの間には固い友情が芽生えたのか、二人はニッと笑みを浮かべ顔を合わせた。


 うんうん、これぞ仲間の絆!素晴らしい!

 ああ、仲間たちと旅をしていた頃を思い出すな…。

 みんな元気しているだろうか…。


 その日はわずかばかりの食料を口にするとそれぞれが横になった。


 近くを船が通った時に見つけてもらうようにと作ったたき火が優しく燃えている。

 そんなたき火を見ながら本当に救助が来るのかと、わずかな不安を覚えつつ、眠りに落ちていった。



■プレイヤー一覧■

ユシヤ(自称勇者)

神島かみしま たけし(写真家)

往間おうま のぞみ(冒険家)

阿戸あど 吾羽人あうと(会社役員)

喜屋武きゃん 葉一よういち(飲食店スタッフ)

ルヴァイ・ヴァーサ(サバイバルに関係のある職)



第十二話 完


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