表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/34

第十話 人質救出ゲーム

 黒幕だ。

 この小説も十話を迎えたが、一向にユシヤを殺すことができない。

 黒幕歴10年のプライドはもうずたずただ。

 最近は黒幕仲間から“もう年なんだから引退したらどうですかぁ?”とバカにされる始末だ。


 だが、私もやられっぱなしではない。

 数々の失敗を経た結果、私は気づいた。

 ユシヤはたしかに何をしても死なないが、毎回ダメージは受けている。

 どうやら寝ると傷が癒えるという謎の超回復力を持っているようだが、休む間もなくダメージを与え続ければいつかヤツは死ぬ。


「ユシヤ!今度こそお前の最期だ!ハーッハッハッハ!」




 ***



 俺は勇者ユシヤ。

 またしても気が付くと知らない場所にいた。


 窓のない部屋に男女が数人囚われている。

 今回は俺を含めて四人か。

 壁も床もやたら派手な色をしており、とても目に痛い。

 出口だと思わしきものは赤い大きな扉一つだけ。

 先に目が覚めた俺はドアに手をかけるが鍵がかかっているようで開かなかった。


 部屋にはうさぎのぬいぐるみにボール、ラッパのおもちゃなど…。

 ここは子供部屋か?

 いや、だとしたらアレはおかしい…。


 あの壁にある、子供部屋に似つかわしくない、拘束具…。


「う…ここは…?」

「あれ?俺たち遊園地で並んでたよな…?」

「気が付いたか。どうやら俺たちはさらわれてしまったようだ」


 遅れて気が付いた面々に状況を説明する。


「さらわ…え!?え!?」


 肩までの髪のした茶色い髪の女が混乱した様子で視線を泳がせている。


「おそらくその扉が出口だと思うのだが、鍵がかかっているのか開かないんだ」

「アンタやけに冷静だな…」


 黒い短髪の男が俺を睨む。

 …しまった、毎回同じことの繰り返しにどうやら俺は慣れてしまったようだ。

 そのせいで今、ものすごく怪しまれている…。


「まさか、こいつが俺達を…」


 耳にピアスをつけた金色の髪の男が小さく呟く。

 黒い短髪の男が茶髪の女を守るように背中に隠し、金髪の男が殺気立った様子でポキポキと指を鳴らす。


 …一気に不穏な空気になってしまった…。


『お目覚めかな、諸君』


 そのタイミングでいつもの仮面の魔物が盾に映る。

 前回あの場にあっただけ魔法の盾は壊したのだが、やはり盾は何枚もあるようだ。

 そしてこの仮面の魔物はどこか別の場所にいるらしい。

 クソ、あの魔物をここに引きずり出すことができれば…!


『今日君たちに挑戦してもらうゲームは“人質救出ゲーム”だ。君たちの中から一人人質役になってもらう。残りの三人は脱出を目指してこの部屋に隠された謎を解いてもらう』

「…脱出ゲーム…?」

「あ、もしかしてアトラクション…?」

「なーんだ、びっくりさせんなよ」


 三人が顔を見合わせて安堵したように息を吐く。

 アトラクションというのが何かわからないが、今までの流れを考えると簡単なもののはずがない。


「…人質は俺がなろう」

「ねえねえ仁君、もしかしてあの人スタッフじゃない?」

「そっか、だから冷静だったってわけか」

「おもしろそーだな。オイ音、見てろよ。俺がすぐに解いてやるからな」


 危機感のない三人を後目に一歩前に出る。


『人質役はその色の違う床に立ってくれたまえ』


 色の違う床…。

 その床に面した壁には例の拘束具があった。


 なるほど、これで俺を拘束するということか。


 と、そこに立った瞬間、拘束具が伸び俺の手足を拘束する。

 すごい仕掛けだ…。


「おー!すげー!」

「本格的だね!」

「どういう仕組みなんだろうな」


 三人は呑気に拍手をしているが、これは遊びではない…。

 ためしに腕を動かそうとしてみたが、拘束具はビクともしなかった。

 壊すのは不可能、か…。


『人質がとられているというのにどうも危機感がないようだな』

「サーセンww」

「えー、そんなことないですよー」

「はは、スタッフさん役者だな」


 三人が楽しそうに仮面の魔物と会話をしている。


『では、これが遊びではないということを見せてやろうか』

「グアアアア!」


 仮面の魔物が指を鳴らした瞬間、色の違う床から強い電撃が流れる。

 これはバリア床だったのか…!


『…案の定、この程度では死なないか』


 俺の意識があることを確認すると、仮面の魔物はそう呟いた。

 そして再び三人に対峙すると手を突き出してこう宣言する。


『人質に高圧電流を流した。この電流はそのドアと連動していてドアを開ければ電流も止まる仕組みになっている。クックック、一体何分持つかな?さあ、この部屋から脱出してみろ!制限時間は人質が死ぬまでだ!』


 プツリと音を立てて魔法の盾から仮面の魔物の姿が消える。

 あいにく俺は謎解きが不得意だ。

 ここはあの三人に任せるしかない…!


「あの仮面の人、演技うまかったね!」

「そうだな、あっちのRPGの村人みたいな恰好の人もすごい演技だったな」

「本当に電流が流れてるみてーだよな」


 三人はわいわいと雑談をしながら部屋に置かれたアイテムを物色し始める。

 も、もしかしてまだ遊びだと思っているのか…?


「あ、ここに数字あったよ」

「この数字を並び替えて…」

「お!鍵発見!…あ、でもドアの鍵じゃねーや」


 その後も、俺などいないかのように三人は楽しそうに謎解きをしている。

 もう少し真剣に挑んでもらいたいのだが…いや!もしかするとあの三人はとてつもない大物なのかもしれない!

 強者故のあの余裕!


「引き出しの鍵だったかー」

「ハサミが入ってたぞ」

「あ!引き出しが二重底になってる!」


 うん、きっとそうだ。

 あの三人は名のある冒険者に違いない!


「なんか紙切れがでてきたぞ」

「あ!これってしりとりじゃない!?」

「ここから続く言葉は…あ、ラッパじゃね?」


 頑張れ!俺は応援することしかできない!

 前回もそうだったが、魔法や頭を使う戦いになると俺は足手まといだな…。


「次はこれで…あれ?ここから続かないよ?」

「ぬいぐるみ、じゃなくてうさぎ、じゃないか?」

「このうさぎん中になんか入ってるみてーだけど、チャックがねぇんだよな」

「「「うーん」」」


 どうやら行き詰ってしまったらしい。

 あのぬいぐるみの中に何かあるということは…?


「それを切ってみたらどうだろうか?」

「え!?スタッフさんヒント出しちゃうの!?」

「つか壊していいんですか?」

「スタッフがいいって言ってんだし、いいだろ。だからハサミがあったのか」


 金髪の男がぬいぐるみを切り刻むと中から鍵が出てきたようだ。

 それを大きな赤い扉の鍵穴に入れると、カチャリと音を立てて扉が開いた。


「やったー!クリアー!なあ音!俺すげーだr」

「仁くんかっこよかったよ!」

「ちょ、カイが見てるだろ」


 金髪の男が振り返ると、茶髪の女は黒髪の男に抱き着いて喜びをあらわにする。

 …ふむ、俺は色恋沙汰には疎いんだが、つまり、これはそういうことだろうな…。


 金髪の男よ、その気持ちわかるぞ…!


 サキ・ツカサへの恋心を思い出してぐっと涙をこらえる。


 そして黒髪の男と茶髪の女は仲良く手をつなぎながら、金髪の男はとぼとぼと肩を落としながら部屋を出て行った。

 …俺の存在はすっかり忘れているようだな。


 と、少し悲しく思っていると手足の拘束具が外れた。

 赤い扉を開けると拘束が解けるというのは本当だったようだな。


『…なあ、かなり電流流したつもりなんだけど、なんでお前生きてんの?』


 ブンと音を立てて魔法の盾が仮面の魔物を映し出す。

 …ん?

 何を言っているんだ、こいつは。


「一歩も動いていないからダメージは最初の一回しかくらってないぞ?」

『は?』


【お約束⑨ ダメージ床の上で立ち止まっている間は何故かダメージを受けない】



■今回の生還者一覧■

ユシヤ(自称勇者)

江守えもり じん(男子高生)

陽口ひぐち おと(女子高生)

沼瀬カイ(ぬませ かい)(男子高生)



第十話 完

■おまけ情報■

バリア床も毒沼もマグマ地帯も、その場に立ち続けていた場合、ユシヤはダメージを受けないぞ!

動かなければノーダメージなので、その場で装備品を変えたり休憩したりすることも可能だ!


■おまけ情報2■

江守仁と陽口音はその後カップルになったぞ!

沼瀬カイはしばらく人間不信になったらしいぞ!


■名前の由来■

ユシヤ(勇者)…勇者

江守えもり じん(男子高生)…主人公

陽口ひぐち おと(女子高生)…ヒロイン

沼瀬ぬませカイ(男子高生)…噛ませ犬


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ