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オーク、伯爵令嬢に変身す。  作者: 塚田亮太郎
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第24話 オーク、参戦する

 北伐開始の5日前のことである。


 執務室にいるアリスターの元に、グォッカとメアリーがいた。


「お呼びいただき光栄です」

 2人が一度に頭を下げる。


「私がお前たちを呼んだのには訳がある。これから始まる北伐に、正式に我が魔法部隊の一員としてお前たちを組み込みたいのだ」


 思いもかけない打診に、2人はお互いの顔を見やった。


「……恐れながら、その理由をお聞かせ願いますか」


 メアリーが言うと、アリスターはふん、と鼻を鳴らした。


「メアリー・エーブリー。その実力を私はよく知っている。それを買ったにすぎぬ」


「じゃあ、オデは……」


 おずおずとした様子で話すグォッカを見たアリスターは、そばに仕えていた使用人にアイコンタクトをした。


 すると、使用人は入口の扉を開けた。


 グォッカとメアリーが同時に「あっ」と声を出した。


 そこにいたのは、ブラッディであった。


「そこのブラッディが、オークである貴様を魔法部隊に入れてはどうかと聞かんものでな。いささか不服ではあるが、お前も招聘した」


「閣下、なぜブラッディがここにいるのでしょうか?」


 メアリーが油断ならないといった目でブラッディを見ながら問う。


「私が声をかけたのだ。この女は魔法学校時代から目をつけていたが、どういう経緯か北王の元に仕えていた。それを引き抜いたのだ」


「……その魔法使いが、私やグォッカにとってどのような存在であるかご存知ではないので?」

 メアリーの声には明らかに怒気があった。


「私は使える人材なら使うだけだ。お前たちにどんな因果があるかなぞ知らぬ」


 アリスターはまるで他人事のように言い放った。


「……おいブラッディ、なんでオデを魔法部隊に引き入れようとしてんだ? オデは魔法なんて……」


 そう言いかけて、グォッカは思い出す。


 村長が言っていた、あの話を。


「気づいたようだな、グォッカ。お前には魔法を使う才能がある。それも高度な闇の魔法をな」


 ブラッディは懐から何かを取り出した。


 杖だ。


「お前用の杖だ。受け取れ」


 グォッカはなぜか惹かれるようにしてブラッディの元に向かった。


「待ってグォッカ、罠かもしれないわ!」


「余計な口をはさむな!」


 制止しようとするメアリーを、ブラッディが一喝した。


 グォッカは、遂にブラッディの前に来た。


 差し出された杖を、手に取る。


 じんわりと温もりが広がる。


「……私に向けて首絞め魔法をやってみろ」

 ブラッディが信じられないことを言う。


「ば、馬鹿言え。あれを人にかけるなんて……」


「いいからやるのだ!!」

 ブラッディの怒声が響き渡る。


 それに気圧されるように、グォッカは彼女に杖を向ける。


 彼は集中した。


 すると、今までの負の記憶が脳内を駆け巡ってきた。


 それは途切れることなく、杖の先から放出されるようだった。


「……ッカ……グォッカ……やめて! グォッカ!」


 メアリーの叫び声でグォッカは我に返る。


 目の前には、ぐったりと倒れているブラッディがいた。


「あ……!」

 グォッカはか細い悲鳴を上げる。

 

 しばらくぐったりとしていたブラッディだったが、何とか体を起こし、アリスターに向けて話し始める。


「……これだけの魔力を持った、元オークです。やはり、お使いになられた方が、よろしいかと……」


 アリスターは唸る。


「うむ……確かに、凄まじい魔力だ……分かった、オークよ、お前も魔法部隊に加えよう」


 グォッカは呆然としていた。


 メアリーがグォッカの手をつかむ。


「大丈夫……何かあれば、あなたの元にすぐ駆けつける。大丈夫……」


 メアリーは震えていた。グォッカはやさしく手を握り返した。


 それしかできなかった。


 かくしてメアリーとグォッカは、ブラッディと共に北伐に参加することとなった。


――


 そして、帝国暦248年8月1日明朝。


 レッド・ファンゲル家には、五百ほどの軍勢と魔法部隊が集っていた。


 もちろん、その中にグォッカとメアリー、ブラッディの姿もあった。


 彼らの目の前には、総指揮を執るアリスターが立っている。


「諸君らのほどんどが」

 アリスターが話し始める。


「戦など経験したことがない者であることを、私は知っている」

 静かな、しかし確かに通る声で話す。


「されど、ここに集う者たちが、北王が我がファンゲル一族にたてついたことは知っているはずだ。それは当然、帝国に仇なすことといえる」


 アリスターの言葉が、徐々に熱を帯びてきた。


「このまま北王をのさばらせておけば、必ず帝国にとって害が及ぶ。この戦いで、北王家を完膚なまでに叩き潰すことが必要である」


 彼は一呼吸置き、また口を開いた。


「この一戦、北王ベルベット・エーブリーの首だけを狙うべし。他の市民には、手出し無用である。そのことを留め起き、各人、奮起して戦え!」


 アリスターの言葉を聞き、一斉に鬨の声が響き渡る。


 かくして、アリスター率いる討伐軍は北都ノルディッシュに向けて出発した。


 穏やかに晴れた朝のことであった。


 誰しもが、討伐軍がスムーズに「仕事」に当たれると考えていた。

いよいよ北伐が開始されます。

グォッカに待ち受ける運命とは?

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