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オーク、伯爵令嬢に変身す。  作者: 塚田亮太郎
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第19話 オーク、再会する

 ダグラスの元から離れたグォッカたちは、次にどこに向かうかを相談していた。


「このままあてどもなく歩くわけにはいきますまい」

 とは、騎士団長ウォルトの言である。


「だけどよ、オデたちは手配されているんだぜ。下手に動けば狙われる」

 グォッカが言う。


 メアリーは腕組みをしたまま黙っている。


「南都に向かうのはいかがでしょう。東王様は南王様と交流を深めておられます」


 これに渋面したのはメアリーだった。


「……今の南王の父を殺したことがバレれば、いい方には転がらないと思うわ」

 ウォルトは驚いてメアリーを見る。


「アルバート殿を、殺した……?」


「今、そのことについて詳しく話している場合じゃねぇ。とにかく、どこに協力を仰ぐかだけ考えようぜ」


 グォッカがメアリーをフォローする。


「……ねえグォッカ。あなた、アリスターの息子と面識はない?」

 メアリーが静かに問う。


「まあ、一応顔は知っているけどな……」


 グォッカの脳内に舞踏会での一幕が甦る。


 一気に顔が赤くなるのを感じた。


「息子との関係、使えそうじゃない?」


「ちょっと待て。確かにオデと奴とは舞踏会で知り合ったが、それっきりだ。」


 するとメアリーがずいとグォッカに顔を近づける。

「父が自慢げに私に言ったことがあるの。アリスターの息子から手紙が来たって」


 またもグォッカの脳裏に、ベルベットが手紙を読んだ記憶が甦ってきた。


「向こうは、相当あなたを意識してるんじゃない?」


「馬鹿言え、そんな……」


「時間がないのよ。使える人脈があるならとことん使いましょう?」


 メアリーに気圧される形で、グォッカは首を縦に振った。


「行きましょう、ウォルトさん。向かうのは帝都ファンゲリンよ」


 さっそく歩みを進めようとするメアリーに、グォッカは腹をくくったように言う。


「わかった、わかった。だけどよ、たぶんオデたちの格好を見ても、『舞踏会にいたメアリー嬢』とは分からねぇと思うぞ」


 メアリーがはっとした顔をする。

「それは……そうね。どうしたものかしら」


 グォッカは荷物をあさり、あるものを見つけた。

「……よし、ここでオデは着替えて準備する。メアリー、ちょっと手助けしてくれ」


 彼は荷物を持って、メアリーと共に森の茂みの中に消えていった。


――


 数時間後。

 一行は帝都ファンゲリンにいた。


 アリスターの住むレッド・ファンゲル家は街の一番東にある。


 グォッカはローブを頭まですっぽり覆い、その周りを騎士団が囲んでいる構図だ。


 レッド・ファンゲル家に着いたとき、騎士団の1人が裏庭の護衛を峰打ちして気絶させた。


 裏庭の様子を見ていると、偶然にもアリスターの息子がそこにいた。


 何やらぼうっとして空を見上げながらため息をついている。


 グォッカは、まさか、と思った。


 ……もしかして、まだオデのことを想っているんじゃねぇだろうな。


 そう分析すると同時に、久しぶりの再会にどこか心躍っている自分がいるのに、グォッカは気づかなかった。


「……グォッカ、作戦通りいくわよ」

 メアリーの一言で、彼は我に返った。


 そう、アリスターの息子から懐柔していかなくてはならないのだ。


 騎士団は既に隠れおおせている。


 タイミングは、今だった。


 グォッカはローブを脱いだ。


 そこに現われたのは、紛れもなく伯爵令嬢、メアリー・エーブリーであった。


 その後ろを、本物のメアリーがついて行く。


「美しい夕焼けですわね」

 自然に、美しい声でグォッカは話し出す。


 アリスターの息子は、その声に驚き、そしてグォッカと目を合わせた。


 そして、呆然とした。


 舞踏会の時の衣装と全く同じ姿をしたグォッカがそこに立っていた。


 幾分の時が過ぎただろうか。それとも、一瞬であっただろうか。


「……メアリーさん……ですか?」


 先に口を開いたのは息子の方であった。


 グォッカは口元に笑みを浮かべながら答える。


「はい……手配書を、ご覧になりましたか」


 グォッカは息子の手元に注目していた。


 指摘され、息子はそれを隠すように後ろに持っていく。


「……書かれていることが本当だとは信じられません」


「北王に仇なし、手配されている……そこに書かれていることは、本当です」


「ではあの舞踏会の時、私と一緒に踊ったのは、どちらなのですか!」

 悲鳴にも似た声を上げる。


 グォッカは悲しい目をして、黙って息子を見つめた。


 答えとしては、それで十分だった。


「……私は、オークに恋をしていたのですか」

 息子がぽつりと言う。


「本物のメアリーはここにいます」


 グォッカは、ほぼ彼の後ろに隠れるようにしていたメアリーを紹介する。


「……あなたが、本物のメアリーさんですか?」

 恐る恐る、息子がメアリーに問いかける。


「ええ。私が本物のメアリー・エーブリーです。はじめまして」


 メアリーは頭を下げる。


「……ああ、違うな……」

 息子は今にも泣きそうな顔をして言う。


「私が恋をしたのは、あの舞踏会で見たメアリーさんです。本物の方には申し訳ないが、やはり違う」


 そして息子はグォッカの方を見て、真剣な顔つきでこう言った。


「たとえあなたがオークでも、私の心を動かしたのは事実です。あなたほど素晴らしい振舞をなさる女性は、今後出てこないでしょう」


 息子の目にだんだんと熱を帯びていくのが分かる。


「……ここに来られたのは、何が目的ですか?」


 話そうとしたグォッカは、逡巡した。


 それを見たメアリーは、助け舟を出した。

「我々は、父である北王を打倒したいと思っております。そのお力添えをいただけませんでしょうか」


「北王の娘が、自身の父を倒す……ですか」


 そこから、メアリーは自身の生い立ちや父を打倒したい理由を淡々と話し始めた。


「私からのお願いでもあります」


 グォッカがタイミングを見計らって言う。


「北王征伐には、必ずレッド・ファンゲル家の協力が必要なのです。どうかお力添えいただきたいのです」


 気品高く、それでいて熱のこもった言い方に、息子は強く頷いた。


「わかりました。元々北王が父を暗殺しようとしたという話もあります。私からも働きかけましょう」


「もう一つ、お願いがございます」

 メアリーが急に前に出た。打ち合わせにない動きだった。


「私は今、魔力を制限されております。アリスター様にこの制限魔法を解いていただけるよう、お口添えしていただけませんでしょうか」


 息子は驚いた顔をしたが、すぐに微笑んだ。


「願い、承りました。父に必ず報告いたします」


 グォッカとメアリーは頭を下げた。


 息子は、切なそうな目をグォッカに向けた後、そのまま屋敷へ引き上げていった。


 2人はすぐに屋敷を脱した。


「何とか説得できたな」

 グォッカが言うと、メアリーが頷いた。


「私の魔法も使えるようになるかもしれないわ」


「魔法が使えるようになれば、オデたちの行動の幅が広がるな」

 そしてグォッカたちは、次に行くべき貴族の場所についてまた話し始めた。

アリスターの息子の約束を取り付けたメアリーとグォッカ。

物語は急展開を迎えます。

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