オリエンテーションの説明
二次創作書いて欲しくてこの作品を書いています。よろしくお願いいたします。
エンバンティア・日本共同学術研究所、通称魔法・科学図書館は俺の入学時点で生徒数三万人を擁する巨大研究機関であり教育機関である。
少なくとも立地の関係で離島にあるという条件でありながらこの数字であれば多いのだろう。
逆を言えば、それのためだけに普通に街一つ程度の人間が動き、生活圏を無人島に作り、そこで研究をしているというのだから気が遠くなりそうな話である。
そして、そんな学問の学問による学問のためのような施設に来た志ある他の人たちと一緒に研究所の門をくぐる。
日本の大学の様な外観の門をくぐれば、そこには日本と異世界の文化が混じったような空間が広がっている。建物は確かに鉄筋コンクリート製なのだが、細かな意匠が日本とは違うように感じる。
見た事がない様な不思議な文字が彫られた壁やタペストリーがそこかしこに掛けられており、独特な雰囲気を醸し出している。
そして、俺達はそのまま前を進む人達に続いて修練場と呼ばれる場所に集められる。
「結構な数がいるな」
まず驚くのはその数、本当に沢山の人が集まったのだなと感心させられるほど、広い修練場に人がいるのである。
そして次に驚くのが、その外見である。いわゆるファンタジーの世界からやって来たかのような動物と人間を混ぜたような外見の人もたくさんいるのである。少なくとも人間しかいない地球とは大違いである。
そして最後に、言葉が通じていない事である。聞こえる言葉全てが聞き覚えの無い言葉なのである。これ、本当に意思疎通どうしたら……。
「あ、そう言えば」
そう言って、俺は荷物の中からとある木製の指輪を取り出す。その名前は「翻訳の指輪」である。説明書には、魔法の力でどんな言語でも翻訳して聞くことが出来る指輪だと書いてある。
親たちに送られた、入学案内と一緒に入っていた道具である。
「まさか」
そう思いながら、嵌めてみると。
「やっと俺様の伝説が始まるんだ」
「科学かあ、どんなものなんだろう」
「指輪を無くした人や忘れていそうな人が周りにいたら、教えてくださいね」
本当に聞こえた、自分達に馴染みのある言葉で。純粋に凄いなと思う。何せ翻訳機械はまだ実用的に使えるほどのリアル翻訳が叶っていない。どうしてもラグが発生する為に、こんなに同時に聞こえるなんてすごい。
「皆さん前を向いてください」
そこで、一人の男性が前に立ち壇上から自分達に話しかける。
「クリフ・マゴメントだ」
知らない人だが、隣のその巨漢が驚いている様子からして相当凄い人なのだろう……? 俺を見ている? 気のせいか。
「皆さん、入学希望誠にありがとうございます。冒険者ギルド魔法・科学図書館支部のギルド長を務めるクリフ・マゴメントです。皆さんにまず言っておきたいことがいくつかありますが、まずはこれです」
「夢と無謀をはき違えないでください。特に地球から来た方々、特に冒険者にあこがれて此処に来た方々。あいにくここは研究機関、たとえ死んでも命は自己責任、周りに命を助けてもらえなくても自己責任、周りに命を落とすような死地に追い込まれても自己責任、日本で義務教育やエンバンティアなどの各国で一般教育課程を修了したからこそ全ては自己責任です」
「待って! どういう事!」
「魔法を学べる場所じゃなかったのかよ!」
「間違いありません、ですが未知の場所で命を落とす覚悟もないならあなたは絶対にこの場所にいない方が良い。後で後悔しても遅い。断言出来ます」
「!」
「……」
恐らく日本人と思われる人達が何か言っていたが、直ぐに黙らされた。確かに魔法は未知の分野だ、唯自分達の妄想の魔法を学べると思って実際に学んだら違くても「責任は自分にある」だろう。
二人もそれを察したからこそもう何も言わなかった。
それからもしばらく何か喋った後に、最後の締めの言葉が言われる。
「冒険者ギルドは強い人材を常に求めています。しかし、蛮勇を強さとはき違えた冒険者は求めていません。だからこそ皆さんには是非ともここで強さとは何か、まずそれを知ってもらうために冒険者ギルドに来てください。共同研究所に所属する間は、あなた方の事を何度もサポートして差し上げます」
重い言葉だ、確かにサポートすると言った。しかし同時に、突き放す言葉も言った。ここからは自己責任。自由を俺は得るためにここにいるが、だからと言ってそのためには確かに自己責任で行わなければいけないこともあるために大変だろう。
そう思いながら、様々な人たちの挨拶を聞いていた。
「では、最後に儂から話をしよう」
そう言って壇上に立つのは白髪に白いひげを蓄えたお爺さんだ。身長程はありそうな杖を借りて壇上にゆっくりと登って来る。
そして、おじいさんは咳ばらいを一つした後喋り始める。
「ガリウス・アスモダイ。一応これでもアークメイジじゃ。地球の皆さんには、最強の魔法使いの一人とでも言えば、少しぐらいは凄さが伝わるかのう?」
その時、周囲の空気が一変した。おじいさんを見る空気から、明らかにこの世の埒外の何かを見る空気に。畏怖と尊敬、羨望と恐怖、それらが混じったような空気が感じられる。
「さて、そんな儂から言えることはただ一つ。魔法は不完全じゃ。人間が使う間はきっとな、だがもしかしたら少しは科学という儂には知りえない存在のおかげで新しい風が吹くかもしれない。儂はそれを期待しておる。皆の者、勉学に励むのじゃぞ」
そう言って、おじいさんは壇上から降りるのだった。そして次に女性が壇上に上がる。名前は確か、エスティシャ・ベロル、商人ギルドからここに来た人だったか。
「さて、爺さんたちの挨拶は終わったし、早速”入学試験”の話をするぞ」
そう言って、一人の女性が壇上に上がると周囲の空気が今度は張り詰めたような感じに変わった。
「地球のみんなはもしかしたら毎回驚いているから知らないのかもしれないが、エンバンティアでは入学試験は今日行うんだ」
その言葉に、多分地球から来た人達がざわめきだす。
「課題はズバリ、入学証明書を見つけることだ。この島中に今人数分以上の入学証明書が散らばっている。外見はこれな。日没近くの鐘がなるまでに、これを持ってきて所定の手続きを済ませることだ。手続きはこの修練場の特設場所か宗教広場、もしくは学科学習棟の講堂でも行っている。ただし、これはズバリ一人で手に入れるのはかなり難しい内容のものが多いと思う、だからこそ、協力するのをお勧めするぞ。質問はあるか」
そう言うと、何名かから質問が上がりそれに答えていく。当然中には。
「魔法は必要ですか」
という物もあった。答えは……。
「必要ない、とは言い切れないな。見つけた物が運悪く魔法が必要だったら、魔法を使えない人は”開けられない”が、まあその時はその時だ」
と答えた。”見つけられない”ではなく”開けられない”と言ったという事は、魔法が無くても見つけられるが、開けられない物があるのか?
色々考えはあるが後回しだ。とりあえず質問の中でもう一つ気になったのは。
「もし入学証明書を見つけられなかったらどうなりますか」
「その時は当然入学は認められないよ。地球の言葉で言うなら、浪人って奴か?」
恐ろしいことだなと思う。
「さて、ごちゃごちゃ質問に答えていたら日没まで時間が経っちまう。早速始めようか」
入学証明書探しの課題を。